◎プレミアム商品券 地元消費拡大の「呼び水」に
政府が年度内実施を目指す定額給付金に触発され、自治体や地元商工会が独自の「プレ
ミアム付き商品券」を発行する計画が相次いでいる。一万一千円分の商品券を一万円で販売し、上乗せ分や発行経費は自治体や経済団体などが負担するタイプのものが多く、石川県では津幡町商工会と志賀町、富山県では南砺市福光商工会が導入を決めた。
多くの中小零細企業が資金繰りに苦しむ一方で、家計部門は千五百兆円もの金融資産を
抱えている。給付金は、この潤沢な金融資産を消費に向かわせる「呼び水」として使われてこそ意味がある。地元限定のプレミアム付き商品券の発行は、地域全体の懐を潤し、給付金が貯蓄に回るのを防ぐ効果も期待できる。他の自治体や商工会でも検討してはどうか。二兆円を投じる景気対策の効果を最大限に引き出す知恵が求められる。
地元消費の拡大を狙ったプレミアム付き商品券は、▽一万円につき一万一千円分の買い
物ができる金券発行(津幡町商工会、南砺市福光商工会)▽給付金に千円分を上乗せし、一万三千円分の買い物ができる金券発行(福井県越前市)などがあり、総務省によると、既に百二十九市区町村が導入を決めている。一足早くプレミアム商品券を売り出した岡山県新見市は一月末までに十億円を超える売り上げがあったという。
世界経済の深刻な落ち込みは、短期間では回復しないだろう。日本経済は外需という命
綱を絶ち切られた状態であり、輸出産業の立ち直りにはしばらく時間がかかる。当面は潤沢な個人の金融資産をテコにして内需拡大に専念し、不況を克服していくほかあるまい。
定額給付金は、与野党の激しい攻防で、すっかり手あかが付いてしまった印象だが、凍
り付いた消費者心理を温める一定の効果はある。支給が決まった以上、今後はいかに使ってもらうかに知恵を絞らねばならない。財布の紐を締めれば締めるほど不況は続くのであり、余裕のある個人や企業は、こんなときこそ消費や投資をしてほしい。悲観論ばかりを口にして、首をすぼめていても経済状況は何も変わらない。
◎米国務長官来日へ 対北朝鮮で呼吸合わせを
クリントン米国務長官の日本訪問日程が固まり、オバマ政権下での日米の外交が具体的
に動き出すことになった。中国最重視の考えを示していたクリントン長官がアジア歴訪を日本から始めることにしたのは、日米同盟重視の姿勢を示すものといえ、日本として歓迎すべきことである。当面の最大の課題である金融・経済危機の克服やアフガニスタンでの対テロ戦争で両国が協力し合うことはむろん、北朝鮮の核開発問題でいま一度足並みをそろえてもらいたい。
外務省は、オバマ政権の対北朝鮮政策が「核廃棄」よりも「核拡散防止」に力点が置か
れるのではないかと警戒しているという。そうした懸念はブッシュ前政権時代からのものである。米国が北朝鮮の核武装そのものより、イランなどのほか国際テロ組織にまで核が広がって米国の安全が脅かされる事態をもっと恐れていることは、ブッシュ氏やライス前国務長官らの言動に明らかであった。
核拡散防止を最優先し、北朝鮮の核廃棄を二の次とする姿勢は、北朝鮮を喜ばせるだけ
であり、危険である。クリントン長官の訪日を機に、北朝鮮の核全面廃棄の実現を日米両国の共通意思として再確認してもらいたい。「どう喝外交」を常とする北朝鮮は、長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備を進めているという。それだけになお日米両国、さらには韓国を加えた三カ国の結束の強さを示すことが重要である。
また日本としては、米国の対北朝鮮政策に注文するだけでなく、自らの課題解決に取り
組む決意も明確にしなければなるまい。特に在日米軍再編に伴う沖縄普天間飛行場の移設は十年以上も前からの宿題であり、国家間の約束をいつまでも果たせない日本政府への不満が米側にたまっている。
米国内には、現在の日米同盟を「会話のなくなった熟年夫婦」にたとえる向きもあるが
、それは決して日米関係の安定を意味せず、むしろ危うさの指摘である。同盟強化を行動と結果で示さないと、同盟国としての信頼を失う恐れが大きいことを認識したい。