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諸注意 この物語はとらいあんぐるハートと言うPCソフトと、フルメタルパニックと言う小説の合作です。 双方を知っている方のみお楽しみいただける作品です。 それを踏まえた上でご一読ください。 それは、一組の男女が海鳴にやってきたことから始まる物語。 とらいあんぐるパニック第一話 『噂の二人は最強コンビ』 9月5日(金) 私立風芽丘学園 PM4:32 普段と変わらぬ日々。 「フリーズ!!」 それは突如として打ち破られた。 「?」 俺、高町恭也は放課後の学校で、見知らぬ学生に銃を突きつけられたのだ。 見覚えのない、むっつりとした顔の男だった。 「俺が何かしたのか?」 「まだ、何もしていない。だが、袖のところにナイフを隠しているだろう」 「っ!?」 男の言うとおりだった。 俺は袖のところにナイフを隠し持っている。 だが、それは見ただけでは絶対に分からないように仕込んであるのだ。 それに気づくとは……この男、何者だ!? 「さあ、なんのことだ?」 そんな動揺をよそに、俺は表面上、はぐらかしておく。 場所は学校の校庭。 こんなところで堂々とナイフを出すほど、俺は馬鹿ではない。 「とぼけても無駄だ。隠しているのは分かっている。さあ、大人しく投降するといい。そうすれば命までは取らな……」 「転校早々あんたはなにやってるんじゃ〜〜〜〜〜〜!!!」 バシィッ!!!!! 心地いい音が響き渡った。 銃を持っていた男子学生を、女学生がハリセンで殴りつけたのだ。 「ぐ……、千鳥、なにをする!? 俺は今、テロリスト候補に対して尋問を行ってい……」 バシィッ!!!! 「うだうだと言い訳しない! 少しぐらいはおとなしくする! ほら、ちゃんとこの人に謝って」 千鳥と呼ばれた女学生に注意を促され、男子学生はしぶしぶと俺に頭を下げた。 「今日のところはこれで勘弁してやろう。だが、次に会った時には命はないと……」 バシィッ!!!! 「何処で覚えたその台詞! 素直に謝らんかい!!」 「す、すまなかった」 三発ハリセンで叩かれ、ようやく男子学生は普通に謝ってきた。 「ちなみに今の台詞は、千鳥が読んでいた漫画……とやらに乗っていた台詞だ」 「ああ、そうそう。良かったわね〜」 女学生は投げやりに応える。 「むぅ」 男子学生はうめき声を上げていた。 一体何者だろうか? やたらとハイテンションなこの二人は……。 新手の漫才コンビかなにかだろうか? 俺は二人のやり取りに呆気を取られていた。 「あの〜、もしもし、大丈夫ですか?」 女学生がこっちにやって来て、俺の前で手をパタパタと振る。 そこで俺の意識は元に戻った。 「あ、ああ。別に問題ない」 「こいつが変なことして、ほんっっっとうにすみませんでした。別に悪気があった訳じゃないんです。ただ、少し変わってるだけで……」 「失敬な。俺は至ってふつ――」 普通だ、と言いたかったのだろう。 だが、その言葉は途中で打ち切られていた。 「だあああああああぁぁぁぁぁ!! あんたは少しだまっとれ! 話がややこしくなる!!」 バキッ!!! 「ぐおっ! ナイスパンチだ……千鳥」 女学生の裏拳が、男子学生の顔に見事にクリーンヒットする。 男子学生はその一撃によってグランドに倒れた。 「そのまま大人しくしてなさい」 「イエッサー」 倒れたまま、男子学生は大人しくなった。 「えっと、何処まで話しましたっけ?」 「こいつは少し変わってる……だったかな」 「ああ、そうそう。とにかく、こいつはちょっと変ですけど、良い奴なんです。だから見逃してやってください。お願いします」 女学生は深々と頭を下げてくる。 俺は冷静に突っ込んだ。 「見逃すもなにも、襲われていたのは俺の方なのだが……」 「ううっ、後生です。転校してきたばっかりで、右も左も上も下も、BやAも分からないんです。よよよよよ……。許してください」 なんだかゲームの裏技っぽい台詞を言いながら、わざとらしく泣き崩れてくる。 俺は苦笑を浮かべるしかなかった。 「許すも何も、別に気にしてない」 その俺の言葉に、女学生は顔を輝かせる。 「うしっ! 許してくれたわ! これで問題なし!」 拳を握りしめて……。 どうやら、話は終わったみたいである。 「さてと、俺はそろそろ行ってもいいのかな?」 「あ、どうぞどうぞ〜」 女学生に促され、俺は今度こそ帰ろうとする。 そこに声が掛かった。 「待て、所属と階級を述べていけ。俺は2年B組に転校してきた相良宗助軍曹だ」 「軍曹言うなぁぁ!」 ゲシッ!!!! 「ぐわあああぁ! 千鳥、今のはかなり効いたぞ」 女学生の見事な蹴りが、横になっている男子学生の腹部を襲う。 今のは本当に痛そうである。 「だ、大丈夫なのか?」 思わず、俺まで心配してしまう程だ。 男子学生は顔を歪ませながら、遠い目をして語り始める。 「これぐらいどうってことはない。敵地でたった三人、食料無しの状況で生き抜いた、あの激動のイラクでの五日間に比べれば……」 「そ、そうか」 なんだか分かりにくい例えを持ち出してくるが、どうやら元気みたいなので安心した。 「あ、ちなみにあたしもソースケと同じ2年B組に転校してきた千鳥かなめって言うの。よろしくね♪」 俺はここに至って、ようやく男子学生が自己紹介を求めてきていたことに気づく。 「3年G組の高町恭也だ」 別に隠すことはないので、俺は堂々と宣言する。 「その名前、覚えておこう」 「ああ、じゃあ、今度こそ帰るからな」 俺はそう言って二人の前から立ち去る。 今度は声を掛けてこなかった。 高町家に向かって住宅街を歩いていた。 「それにしても、変わってはいるが面白い二人組みだったな」 「師匠、なんかあったんですか?」 俺の呟きに、帰り道でたまたま合流した晶が反応する。 「んっ、ちょっとな」 ただし、この時の俺は知る由もなかった。 この二人と一緒に、色々な事件に巻き込まれていくことなど。 ズルズルズルズル 「全く、あたしが目を離した隙に、すぐに変なことするんだから!」 あたし、千鳥かなめは宗助の首根っこを掴んで引っ張ってりながら帰り道を歩いていた。 勝手に一人で歩き回って、転校早々変な噂を立てられたくはない。 まあ、時既に遅いような気がしないでもないのだが……。 あたしは、高町恭也と名乗った先輩に対して、心の中で謝罪と共に「今日のことは忘れてくれないかな〜」なんてまず不可能なことを思ったりする。 「だが、もしかするとあの男が俺たちに罪を擦り付けたテロリストの可能せ……」 「ソースケ」 あたしはニッコリと微笑んでやる。これでもか! ってぐらい。 「なんだ、突然不気味な笑顔を浮かべて。変な物でも食ったのか?」 「少しはお・と・な・し・く・してくれないかな〜。こうなったのも、普段のソースケの行いのせいだと思うんだけど?」 「そうだったのか!?」 今更気付いたという顔を宗助はする。 「あんたは自覚がなかったんかい!!」 バシイッ!!!! 殴りやすいせいか、思わずハりセンで殴ってしまう。 「気づかなかった。すまん」 「ま、分かればいいのよ」 確かに、逆に自覚があってやってたなら救いようがないか。 「でも、まさかこんなことになるとはね……」 「ああ、そうだな。まさか陣代高校から追い出されることになるとは……」 「ふ〜」 あたしと宗助は、二人して私立風芽丘学園にやってくることになった経緯を思い浮かべていた。 9月1日(月)。 その日、陣代高校で爆破事件が起こった。 死者こそ出さなかったものの、多数の怪我人を生み出した大事件。 「あんた、これはシャレじゃ済まないわよ!」 「いや、俺はこんなことはしていない。そもそもなんで俺がせねばならんのだ? 明らかに人の集まる体育館、それも始業式を狙った爆破テロなど」 「あ……ごめん」 あたしは素直に宗助に頭を下げる。 確かに、コイツはどうしようもないぐらい馬鹿だけど、嘘は付かない。それに、爆破する時だって屁理屈っぽいがいつもそれなりの理由があるのだ。 でも、あたしだって一瞬宗助を疑ってしまったのだ。 信じてあげなくちゃいけないあたしが。 だから、あんまり知らない人からすれば……。 ピンポンパンポーン♪ 「生徒会副会長の千鳥かなめさんと安全補償問題担当生徒会長補佐官の相良宗助くんは、至急生徒会室まで来てください」 疑われる訳である。 それも、これでもかっ! ってぐらい思いっきり。 否、疑われるではなく、犯人扱いである。 「いくわよ、ソースケ」 「ああ」 生徒会室であたしたちを待っていたのは、生徒会長の林水敦信先輩だった。 「ご苦労。それにしても厄介な事件が起きたものだな」 と――あたしはその言葉に、林水先輩に尋ねてしまう。 「えっと、林水先輩は、ソースケの仕業だと思ってないんですか?」 頷く林水先輩。 「当たり前だ。彼はこんな明らかに人を狙った爆破などしない。そうだろ? かなめ君」 「はいっ!!」 どうやらここに呼び出された理由は、今後の対策を練る為っぽかった。 あたしは安堵する。 林水先輩が仲間に居れば、これほど心強いことはない。 「くっ、自分は上官に恵まれて、感激でありますっ!」 宗助は隣りで感涙していた。 「さて、今後の方針だが……わたしに従ってもらえないか? 名案があるのだが」 あたしと宗助は顔を見合わせる。 正直、あたしは名案という言葉が不安だった。 「えっと、従うかどうかは、聞いてみないと分かりません」 「ふむ、確かにな。ならば、今からその名案を言おう」 そして、あたしの目の前に居る男はトンデモナイことを言い放った。 「他の学校へ一時期転校してくれたまえ。既に手配は済ませた」 なんてのたうちまわったのである。 「えっ!?」「むっ!?」 ちょ、ちょっと待て! 「それって、逃げろってことですか!」 「いや、一時的に安全な場所に避難してもらおうと思ってな」 「だあああああぁぁぁ! どう考えても事件を起こした犯人が、居たたまれなくなって逃げるようにしか見えないじゃないですか〜!!」 「落ち着きたまえ。かなめ君」 冷静に林水先輩は返してくる。 うが〜!! これが落ち着いてられるかと言うのだ。 「千鳥、理由を聞こう。全てはそれからだ」 うっ、加害者扱いされかけている宗助にまで心配され、あたしは赤面する。 どうやら、よっぽど頭に来ていたみたいである。 「そ、そうね。それなりに理由がある、ってことですよね? 林水先輩」 「ああ」 林水先輩は頷き、問題の理由を語り始めた。 「犯人はわからない。これは分かるな? 二人とも」 頷くあたしと宗助。 犯人が分かってるなら、既にあたしと宗助で捕まえていることだろう。 「次は質問だ。相良君。君が学校にこのまま残ってる場合、君はどうする?」 「自分に罪をなすりつけた輩が誰であれ、見つけ出して八裂きにするでありますっ!」 敬礼しながら威勢よく返事する宗助。 当然の返答だろう。 だが、 「犯人を見つけるまでに、もしも同じ爆破事件が連続で起きたら、我々生徒会でも相良君を保護しきれない。最悪、退学と言うケースもありえるだろう」 いや、退学が最悪のケースですかいっ!? 警察は? なんて突っ込みたかったが、話を折りそうなのであえてやめておく。 「君たちはすぐに犯人を見つけれるか? それこそ一日以内で」 「無理」 「さすがにそれは俺でも不可能だ」 あたしと宗助の意見は一致する。 当たり前だ。 容疑者は不特定多数。誰だか全く分からない状況。この状況で即犯人を捕まえるなんて真似は、スーパーマンだって無理だろう。 「えっと、でも、どうして転校になるんですか?」 どう考えても奥の手というか、最後の手段にしか思えない。 「ふむ、その理由についても説明しよう。ここで君たちを内密に転校させる。内密、と言うところがポイントだ。犯人はそのことを知ることは出来ないだろう。その後に爆破事件が起きれば……わたしの権限を持って君たちが無罪だと証明できるのだ」 「だけど、転校ってのはやりすぎじゃ……」 「ならば問おう。かなめ君、君は今後数日間、彼に爆破を一度もさせないと約束できるか? 今、陣代高校はこの事件に頭を悩まされている。相良君は注目されているのだ。犯人が事件を起こすまでもなく、下手をすれば相良君自身の手で自爆しかけない状況なのだよ」 「ううっ」 ちょいと屁理屈っぽい気がしないわけでもないが、あたしは納得するしかなかった。 確かに、下手すれば……いや、下手しなくても宗助は自爆するだろう。 それこそ今日中に。 断言できるところが悲しかった。 「安心したまえ。事件を解決した暁には、きちんと君たちを呼び戻そう。ちょっとしたレクリエーションみたいなものだと気楽に思ってくれたまえ」 そんなふうに気楽に思えはしなかったが、了解するしかなかった。 「一時的に転校します。あたし達」 だって……、 「あんたは話をきちんと聞いていたんか〜!!!!!」 横で宗助が銃の手入れなど始めていたのだから。 こうして、あたし達は先輩に爆破事件の処理を頼み、陣代高校を後にしたのであった。 「まあ、やり手の林水先輩なら、すぐに事件を解決してくれるよね」 恭子や神楽坂先生、元気でやってるかな。 「ああ、解決してくれるだろう。だが、別件としてさっきの先輩、調べてみないか? あの男がナイフを隠して持っていたのは確かだ」 あたしは嘆息する。 「あのね、別に今時の高校生がナイフぐらい持ってたっておかしくないのよ? 今の日本は結構危なくなって来てるんだから」 高校生や中学生が刃物を振り回す事件など、テレビでしょっちゅうやっている。 「だが、袖のところに隠してあってナイフの数は、全部で十本を越えていた」 「むむう」 確かに、そこまで来るとちょっと調べてみたくなってくる。 「しかも、血の匂いまでさせていたのだぞ?」 宗助はあたしを不安がらせて楽しむような男ではない。 ならば本当に血の匂いを感じさせたのだろう。 「じゃあ、明日ちょっと先輩の教室に行ってみる? 3年G組だったけ?」 「いや、今から彼の家に行こう」 「えっ? でも、どうやって?」 「任せておけ」 宗助は小型の機械を取り出す。 レーダーみたい、ではなく、まんまレーダーだった。 「こんなこともあろうかと、先輩の鞄に発信機を付けておいたのだ。俺の用意周到なお陰で、時間を無駄にせずに済んだな」 「う〜ん、なんか違うけど、今回だけは良しとしますか」 そしてあたしたちは、発信機を頼りに先輩の家に向かうのであった。 どどぉぉぉ〜ん!! そんな効果音が似合いそうな、大きな門構えをした家だった。 「ほえ〜」 あたしは感嘆とした声を漏らす。 あの先輩、いいところのお坊ちゃんだったんだ。 かなり大きな家だった。 「って、ソースケ、やめんかいっ!」 あたしは、塀の上から敷地内に侵入しようとしている宗助を呼び止める。 「どうした? 潜入するなら塀越えは常識だろう。俺達は招かざる客なのだ」 「あんたね……。今日は話し合いに来たのよっ! 話し合う前から全てをぶち壊しにするつもり?」 「ふむ、確かに千鳥の言うことも一理あるな」 「一理しかないんかい!! 納得せんか! 己はぁぁぁ!」 バシッ!!!! 「ぬわあああぁぁ! 痛いぞ、千鳥」 あたしは塀の上に乗っていた宗助の尻を、ハリセンで叩いていた。 「はっ!? また突っ込んでしまった」 なんだか最近、突っ込んでばかりの数日間のようなきがしてならない。 ハリセンがもう右腕と同化してきた気がしてきた。 よく手に馴染む。 「なんだ!? 今の声(突っ込み)は!」 と――、問題の家の中から、例の先輩が顔を出してきた。 そして、あたし達を見て、なんとも言えない表情で顔を背ける。 「ううっ」 あたしも顔を背けてしまった。 この状況で何を言えば言いのだろうか? 塀の上で尻を押さえる宗助と、ハリセンを見つめているあたし……どう考えたっておかしな連中である。 だが、言わなくてはならなかった。 「こんにちは高町先輩、偶然ですね〜」 ……間違っても発信機を付けておいて、それを頼りにやってきた、なんて口が裂けても言えない。 「あ、ああ」 「あはははははははは」 あたしはぎこちなく笑う。 なんかもう、どうでもよくなってきた。 「ところで、相良君だったか? なんで彼は塀の上に居るんだ?」 「さあ? 馬鹿と煙は高いところが好き、って言いますし、大した理由はないと思いますよ」 即興でむちゃくちゃ理論を述べる。 「……ふむ、まあ、人の家の前で騒がないでくれよ? 変な噂をたてられては困るからな。それでは」 「ちょっとまってください!」 門を閉めて戻ろうとする先輩を呼び止める。 「? 何かあるのか?」 ガチャッ!! ヒュッ!! 「先輩から血の匂いがした。それとナイフの件、やはり聞いておこうと思ってな」 「そうか。奇遇だな。そう言えば俺も相良君に銃の件を聞かなくてはならないと思ったところだよ」 何時の間にか塀から降りた宗助が、先輩の頭に銃を向けていた。 だが、先輩も同じように宗助の首元にナイフを突きつけていたのだ。 ホントに一瞬の間の出来事である。 二人とも並の人間の出来る技ではなかった。 「さて、話をするにしても、ここでする話ではないだろう。家に上がるといい」 「はい」 二人ともそれぞれの得物をしまう。 「狭くて散らかってるところだが、勘弁してくれよ?」 「おししょ〜、お友達ですか?」 「いや、ただの後輩だ」 「えっと、ただの後輩が家まで来ないと思うんだけど? 恭ちゃん」 「ちょっと話があるだけだ」 「ん? 例の漫才コンビですか?」 「ああ、どつき漫才のコンビだ」 俺が家に人を招くことなど滅多にない。 だから家に居たレン、美由希、晶が興味深々な様子でたずねてくる。 俺はそれらを軽く受け流しながら、自分の部屋へとたどり着いた。 「うう、漫才コンビじゃないのに……わぁ〜、凄い。完全な和室だ〜。あ、日本刀まである♪」 ここに来た途端、千鳥さんが目を輝かせる。 「千鳥さん。玩具とは違うんだ。危ないから触れないでくれよ?」 「ちぇ……」 「おとなしく座ってくれ」 俺は座布団を三枚押入れから取り出し、畳の上に置いた。 三人とも座布団の上へ、正座して座る。 「さて、まずは俺がナイフを持っているわけから話そうか。あまり人に言うことではないのだが、俺は永全不動八門一派、御神真刀流小太刀二刀術、通称『御神流』という古流剣術をやっている」 「はいっ? 古流剣術ぅ?」 千鳥さんが目を丸くしながら、聞きなおしてくる。 俺は頷いた。 「ああ、その関係で『龍』と呼ばれる組織と戦ったこともある。故に、武器は常に携帯しているのだ。ただ、それだけのことだ」 と――相良君が深々と頭を下げてくる。 「先輩、失礼しました。まさかあの高名な御神流の使い手でしたとは」 「ふむ、御神流の名を聞いたことがあるみたいだな?」 意外だった。 御神流は裏の世界でこそ有名だが、間違っても表の住人、普通の高校生が知ってるはずがない。 ならば彼も、俺と同類ということなのだろう。 「ソースケ、知ってるの?」 「こっち側の世界の住人なら、知らぬ者はいないだろう。二本の刀さえあれば、並の兵100人分の活躍はすると言う地上最強の戦士。単身で50人のゲリラ組織、機関銃などで武装している相手だぞ? それを御神流の戦士は、一人で倒したという伝説も残ってるほどの存在だ」 「ふへ〜、もう、人間じゃないみたいね」 「ああ、既に人間じゃない」 「おいおい、勝手に人を化け物にするな。御神流の剣士だって、ただの人間だ」 俺はいつから化け物になってしまったのだろうか? まあ、人間離れしているのは確かなのだろうが。 「う、すみません先輩」 「む……、でも先輩、御神流は十数年前、爆弾テロで壊滅したと聞いた記憶があるのですが?」 そんなことまで知っているとは……。 「俺と父さんはその時、あの結婚式の日、武者修業の旅の最中でな。電車賃がなくて帰って来れず、運良く残った生き残りだ。そんな父さんも数年後、爆破テロで……」 「なんか、失礼なことを聞いちゃったみたいですね」 「いや、もう昔の話だ。気にしていないから大丈夫だ」 さてと、俺の素性はこれで明かした。 「それでは相良君、なんで君は銃を持ってるんだ?」 「自分は『ミスリル』のSRTと言う部隊に所属しています。コールサインは『ウルズ7』。極秘任務中の真っ最中なので、詳しいことは言えませんが」 「なっ! あの世界的組織に居るとは」 「知っておられるのですか?」 「ああ、夏休みの時、『香港特殊警防隊』で訓練してな。その時に小耳にはさんだ程度だが」 「『香港特殊警防隊』!? あの、非合法ギリギリの最後の守護者」 「ああ、と――どうやら、お互い凄い立場に居るみたいだな?」 「そうみたいですね」 「互いに頑張ろう」 「はいっ!」 俺と相良君で握手をする。 ガチャッ! 「きょ、恭ちゃん! 赤星先輩が大変だよ!」 「なにがあったんだ? 美由希」 懸命な顔をして部屋に駆けこんできた美由希。 これはただごとではないだろう。 「えっと、後輩の剣道部員が廃工場に呼び出されたって聞いて、単身で助けに行ったの。相手は……なんかこの辺では有名な暴走族の集団みたいで、1000人を超えるとか超えないとか」 1000人!? その人数が相手では、例え赤星でも一人では勝ち目なんてないだろう。 「くっ! 場所は聞いているのか? 美由希」 「うん、場所は……」 俺は美由希から場所を聞き出す。 時間は一秒でも欲しい。 「美由希、行くぞ! 二人では少々きついかもしれないが」 「待った。微力ながら俺も協力しよう」 相良君が立ち上がる。 ありがたい申し出だった。 一人でも戦力は多いほうが良い。 「その申し出、感謝する」 じ〜 「えっと、先輩、なんで期待の目で、あたしのことを見るんですか?」 「いや、千鳥さんも十分戦力になると思ってな。あのハリセン捌き、どう見ても只者ではなかった」 「いえ、あたしは普通の人ですよ」 「いや、千鳥は普通じゃない。あのハリセン捌きは、俺が小さい時に戦争のノウハウを教えてくれた、伊集院隼人教官の鞭捌きに匹敵する」 「伊集院隼人だと!? まさかあの……『シティーハンター』と互角に戦ったと言われる『ファルコン』か!?」 俺は驚愕していた。 生きた伝説の人物である。 「ああ、同時に海坊主の異名を持つその人だ」 「恭ちゃん! そんな漫才をしてるばあいじゃないでしょうが! 赤星先輩の一大事ってこと、ちゃんと覚えてる?」 「ぐはっ! そうだったな。すまん、美由希」 美由希に痛いところをつつかれる。 この話はまた今度するとしよう。 「行くぞ! みんな」 「くっ! 赤星主将、申し訳ありません」 「謝るな! お前は間違ったことなどしていない」 後輩の渉に向かって、俺は怒る。 こいつは、不良グループに入ってる一人の少女を脱退させるために頑張ったのだ。 そのお陰で彼女は更正した。 だが、 「貴様等のせいで、俺達のアイドルがいなくなっちまったんだ! 死をもって償え!」 そのせいでこいつらに目を付けられてしまった訳である。 「俺達は死ぬわけにはいかない。例え1000人居ようとも!」 「ですね!」 多勢に無勢なのは明らかだった。 既に二人はかなりの傷を負っている。 勝ち目などない戦い。 でも、漢として退くわけにはいかない戦い。 「おりゃ〜!」 振り下ろされた鉄パイプを紙一重でかわし、俺は相手の胴を木刀で薙ぎ払う。 「ぐわ〜!」 「ちっ! しぶとい奴等だ」 既に地べたには、100人以上の不良が倒れていた。 しかしながら残っている敵は800以上だ。 じりじりと包囲網が詰められてくる。 後何人道連れに出来るか? 「ふふふふふ、肩で息をしているな。そろそろ限界みたいだな?」 敵のリーダー、指村巧の言うとおりだった。 そろそろ限界だ。 ならば、最後の力を振り絞って、せめてこいつだけでも……。 (渉、あそこの包囲網が薄い。俺が突破口を切り開く。お前だけでも逃げてくれ) (そ、そんなっ! 主将を置いて逃げるなんて出来ません) (馬鹿な男だ。俺と運命を共にする気か?) (主将のほうこそ逃げてください。主将一人なら何とかなるはずです。俺の為に命を無駄にしないでください) (俺は可愛い後輩を見捨てる真似などできん) 「ふんっ、なにこそこそ呟いているか知らんが、お前達は二人ともおしまいだ。やれっ!」 指村巧が指示を飛ばす。 「ふっ、お互いつくづく馬鹿のようだな」 「どうやら、そうみたいです」 俺と歩、二人とも覚悟を決めたその時だった。 「そこまでだっ!!!! これ以上、貴様等の好きにさせない!」 「高町か! 助かった」 廃工場の入り口に、俺の親友でもっとも頼りになる漢、高町恭也とその妹、高町美由希が立っていた。 ついでに――、 ズダダダダダダダダダダダダ! 突如響きわたる銃声。 「うぎゃ〜!」 次々と不良達が地面に倒れていく。 「強化プラスチック弾だ。痛いだけだから全く問題ない」 高町兄弟の横に、機関銃を構えた男が立っていた。 「そ、その男は?」 「心強い仲間だ」 どうやら、実力者みたいである。 高町と同じ世界の匂いを感じさせる男だった。 「くっ、たった三人増えただけだ。者共、やっちまえ!」 「たった三人?」 高町が一迅の風になる。 荒れ狂う暴風。 触れた瞬間、倒れていく不良達。 「俺達は一騎当千。嘗めないで欲しいな」 ズダダダダダダダダダダダ! 「えっと、大丈夫ですか? 赤星先輩」 「美由希ちゃん、迷惑を掛けるな」 「な、なんだこの出鱈目な奴等は……」 指村巧は呆然としていた。 これは後に伝説となる、最強コンビの初陣だったのである。 あたし、千鳥かなめは待っていた。 廃工場の入り口で。 三人が二人を助けてくることを信じて。 響きわたる銃声、爆発音、悲鳴……いつも通りである。 廃工場から煙が吹き出している。 「あっ」 彼らが中に入ってから30分後。 燃えさかる廃工場を背に、三人の戦士は無事に二人を救出して帰ってきた。 まるで、映画のワンシーンみたいだった。 「無事に救出できた。感謝するよ」 「皆無事で良かったね、恭ちゃん」 「ああ」 あたしは精一杯の笑顔で迎えてやる。 「おかえり、みんな」 「「「ただいま」」」 あたしはなんとなく、これからはこれからで、楽しい日々が始まる、そんな予感を感じていたのだった。 エピローグ 「会長、見事なお手並みでした」 「ありがとう、蓮君」 林水敦信は、美樹原蓮がいれてくれたお茶を飲む。 「それにしても本当に凄いです。まるで最初から何もかも掌握している……そう思えるほどの早期解決でした」 「ああ、『爆発は芸術だ』……か。確かに彼らからしてみれば、自分達のお株を取られていたようなものだからな。問題を起こすのも仕方ない」 「それでは会長、相良さんとかなめさんを早速呼び戻すんですよね?」 「いや、せっかくわざわざ科学部の部長と一芝居……っと、今の発言は忘れてくれ。とにかく、少しの間、彼らには世間を知ってもらおうと思う」 林水敦信は少しだけ怒っていた。 それもそのはず、事件が起こる前の夏休み、その生徒が居ない期間に相良宗助は幾度となく問題を起こしたのだ。 爆破事件49回、窓ガラスの割れた枚数、234枚、へこんだ壁の修理、割れた蛍光灯……etcetc。 「可愛い孫には旅させろ、って心境ですね」 「まあ、そんなところだ」 たまには静かな学校生活と言うものも悪くはないだろう。 教師陣の心も休まると言うものだ。 「お茶のおかわり、もらえるかな?」 「はい♪」 果たして、彼らが陣代高校に戻れるのは何時の日になるだろうか? 全ては、林水敦信次第なのである。
後書き とらいあんぐるパニック、略して『とらパニ』シリーズ開始です。 とうとうシリーズモノスタート! 読みやすい読みきりがモットーの私、御神の剣士が送るなのたんマンセー初の連載物、お楽しみいただけたでしょうか? 面白かった、つまんなかった、一言でもいいので、掲示板などに感想を書いてくれると、頑張るぞ〜、とSSを書く活力になりますので何卒よろしくお願いしますm(_ _)m それでは、次の作品でお会いしましょう〜 |
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