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【社説】韓国よ、幹細胞研究で世界に遅れを取るな

 国家生命倫理審議委員会は5日、車病院が提出した「ヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究承認申請」に対する承認を見送った。審議委は「修正された研究計画の提出を受けた上で再び検討したい」との立場だ。車病院が行おうとしているのは、人間の体細胞から取り出した核を卵子に埋め込み、その人間と同じ遺伝子を持つクローンES細胞を作り上げようというものだ。これを臓器細胞へと作り替えることさえできれば、病に侵されて損傷した臓器を機械の部品のように取り換えることができるはずだ。

 黄禹錫(ファン・ウソク)元ソウル大学教授の研究チームによるES細胞研究は、2006年に検察の取り調べで論文がでっち上げられたものであると結論付けられた。黄教授チームのメンバーだった研究員が別の病院で不妊治療用の受精卵として作られたES細胞を、体細胞から複製されたES細胞であるかのように偽ったのだ。黄教授は07年12月にES細胞研究を再開する計画を政府に提出していたが、審議委はこのときも承認を保留している。

 幹細胞には授精した胚(受精卵)から取り出した「胚性幹細胞(ES細胞)」、成人の体(骨髄など)から採れる成人性幹細胞(成体幹細胞)、人工多能性幹(iPS)細胞の3種類がある。これらの中ではiPS細胞が最も活用しやすいとされている。ES細胞は免疫反応の危険性があり、成体幹細胞はES細胞ほどの変身可能性はない。ES細胞を複製する研究には非常に数多くの卵子が必要となり、後から生命として成長できる胚を破壊する必要がある。黄教授チームは金を払って卵子を購入し、また研究員の卵子を採取したことが問題となった。車病院の研究チームも卵子1000個を使用する計画だったが、審議委はこれを多すぎるとして問題視した。

 現在米国、スペイン、英国などの研究チームがiPS細胞の研究に取り組んでいる。米国でブッシュ政権の8年間に見送られていた連邦政府による幹細胞研究への支援が、今後本格的に行われるようになれば、「幹細胞研究戦争」がさらに加熱する可能性がある。iPS細胞は2年前に日本の研究チームが、卵子を使わずに幹細胞を作り出す研究に初めて成功したもので、当時は世界中から非常に注目を集めた。

 生命工学分野における世界的な競争では、一度遅れを取って特許が奪われると、それまで行われた研究はすべて水の泡になってしまう。車病院の研究チームも、今回の審査で不十分と指摘された部分について早急に修正すべきだ。生命倫理審議委員会も大韓民国の生命工学を再び活性化させるという積極的な姿勢を持って、車病院をはじめとする研究チームによる幹細胞研究計画の審査に臨まなければならない。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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