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【社説】

バイ・アメリカン 保護主義を助長するな

2009年2月6日

 米議会で審議中の景気対策法案にあるバイ・アメリカン(米製品購入)条項に対し、日本政府が懸念を表明する書簡を送付した。米国が自ら保護主義の引き金を引くようなことがあってはならない。

 大型の米景気対策案は下院ですでに可決され、現在上院で審議中だ。下院案では適用を鉄鋼に限定しているバイ・アメリカン条項だが、上院案では対象を他製品にも広げる内容となっている。

 米国のような大国がいったん保護主義の引き金を引けば、貿易相手国からの報復を招き、世界が報復の連鎖に陥りかねない。これは先の世界大恐慌から保護主義に走り、世界大戦につながった「歴史の教訓」だ。

 日本政府はじめ欧州連合(EU)、世界貿易機関(WTO)などが一斉に懸念を表明したのは当然だ。しかし、現実には、保護主義的傾向はじわじわ世界に広がっている。

 欧州を歴訪した中国の温家宝首相は訪問先の英国で保護貿易主義に反対する立場を表明したが、国内では四兆元(約五十二兆円)の景気対策をめぐり、電力インフラ整備に国内企業を優先して選定する方針が示されている。改革・開放政策で外資企業を優遇して招き入れ、自国産業の成長が阻害されてきた経緯が背景にある。インド、ロシアも一定の製品に対する関税引き上げ措置に踏み切った。

 保護主義の「毒」は貿易相手国に及ぶだけではなく、実は守ろうとする自国産業も中期的に衰退させてしまう点にある。競争を排除する結果、保護された産業の生産性が劣化していくからだ。目先の産業保護と雇用確保にとらわれて保護主義の誘惑に負ければ、世界はやがて一層、苦しい状況に追い込まれるに違いない。

 オバマ大統領は矢継ぎ早にテレビ出演し「保護主義的なメッセージを送るようなことがあってはならない」との柔軟姿勢を示した。上院はこれを受け「既存の国際合意を順守する」との修正を加え表現を緩和したが、条項撤廃には至っていない。オバマ大統領の支持基盤である全米鉄鋼労働組合(USW)など、民主党勢力内に根強い抵抗がある点に難しさがある。

 グローバルな金融危機が、G8のような従来の枠組みで対処できない点では、先のワシントンG20金融サミットで一致を見た。四月には第二回サミットがロンドンで開かれる。オバマ大統領に与えられた時間は少ない。

 

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