福岡市西区のマンションで今月19日、飛び降り自殺した市立内浜中1年の男子生徒が、担任の男性教諭から体罰を受けていたことが明らかになった。
校長は「(体罰は)何らかの影響があったと考えている」と述べた。
一体、何があったのか。福岡市教委は認めていないが、学校は一部にしろ体罰と自殺との関連を感じ取っているのだろう。体罰自体、程度はどうあれ本来、あってはならないことである。
生徒が自殺した当初、学校側は原因に「心当たりがない」と話していた。体罰を隠そうとしたのであれば、許されることではない。生徒は、なぜ死ななければならなかったのか。学校は担任や生徒から体罰の実態など聞き取り調査を始めた。しっかり調べてもらいたい。
体罰は昨年6月と自殺3日前の2回、受けていたことが分かっている。
昨年6月は、同じ学級の男子をいじめた可能性があるとして、担任は放課後2日間にわたって生徒を問い詰め、その際に額をげんこつで突いたり、ひざをけるなどしたという。3日前は生徒が2日続けて忘れ物をしたため、同様に忘れ物をした同級生とともに、罰としてクラス全員の前で頭をたたいている。
最初のとき、生徒は「死にたい」と母親に訴え、学校側も体罰を認めて謝罪している。校長は担任に注意もしていたという。自殺当日は朝、仕事中で気付かなかった母親に10回以上携帯電話をかけ、留守番電話にはすすり泣くような声が入っていた。生徒の携帯電話には「先生がまたなぐった」などと記した友人あての未送信メールも残っていた。
いずれも事実は断片的だ。体罰が自殺と直接結び付くのか、それは分からない。ただ、生徒と担任との関係がうまくいっていなかったことがうかがえる。
気になるのは、生徒が中学1年だったことである。小学校から中学校に上がると、学習内容や学校生活など環境が激変する。そうした変化についていけない子どもたちが増えているといわれる。
今回、判明している最初の体罰は、生徒が中学に進学して2カ月後に起きている。また、担任は忘れ物を2回するとげんこつでたたくルールを決めていたという。「げんこつルール」が体罰に当たるかどうかは別にして、たたく行為は信頼関係があってこそ意味がある。
自殺した生徒は中学校生活になじんでいたのだろうか。もはや、生徒の心の内をのぞくことはできないが、入学後、学校と担任が生徒にどう向き合っていたのかも知りたいところだ。
何事にも敏感な思春期である。親が留守がちであり、母親は「家庭に息子の居場所があったのかどうか」と自責の念を吐露している。学校に生徒の居場所はあったのかも問われよう。悲劇を再び起こさないためにも調査は丁寧に行い、そこから教訓を得なければならない。
=2009/01/31付 西日本新聞朝刊=