「研修病院に競争原理を」―亀田信介・亀田総合病院長
亀田総合病院(千葉県鴨川市)の亀田信介院長は2月4日、院内で開いた「明日の臨床研修制度を考えるシンポジウム」で講演し、臨床研修制度の問題点として、「臨床研修病院の研修プログラムの質の保証がされているかがあいまい」と指摘。研修病院の指定基準や評価システムを適正化し、募集人数を制限しないなど、病院間に競争原理を働かせて研修の質を向上させることが、地域医療の向上にもつながると主張した。
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厚生労働省によると、国内にある臨床研修病院は2435か所。研修病院の指定基準には、「十分な指導力を有する指導医が配置されている」「年間の剖検例が20体以上で、剖検率が30%以上」など、施設や人員、研修プログラムにかかわる要件がある。
亀田氏は、「臨床研修の目的は優秀な医師を育てることと再確認すべき」と主張。そのために、研修病院と研修プログラムの質の向上が必須で、優秀な指導医がおり、充実した教育システム、豊富な症例があることが欠かせないとした。しかし、現行制度では病院や研修プログラムの質が適正に評価されにくいとした。
加えて、研修医の募集人数が決まっていることが病院間の競争原理を妨げていると主張。「カリキュラムが成熟するプロセスを邪魔している。2年間応募がなければ指定を取り消すとか、マッチ率が50%以下なら定員削減するとか、創意工夫をすれば競争原理が働き、クオリティーが向上すると思う」と述べた。その上で、現状では研修プログラムの質の向上に力を入れる病院とそうでない病院の差が開くとして、「日本にとっても貴重な研修資源を十分に活用できないため、総合的に研修の質を下げる」と訴えた。
また、マンパワーの確保を目的に、へき地など指導医が足りない地域に研修医を派遣しても、教える側は十分に教育できず、研修医も不満が募ると指摘。「研修医をマンパワーとしてとらえ、姑息(こそく)な制度で地域配分をしても、医師不足の改善にはならず、かえって地域医療が悪循環に陥る」と述べた。
こうした状況を改善するための方策として亀田氏は、診療科ごとに後期研修の定員を決めておき、初期研修の成果を選抜評価の指標にできるようにしたり、初期研修で一定の基準をクリアすれば内科認定医の資格が取得できるようにし、できなければ再度初期研修を受けるようにしたりすることなどを提案した。また、症例の種類や数、診療実績を評価し、専門医試験の合格率を公表するなどして評価システムを適正化すべきとした。
亀田氏は、同院の医師が来年度に400人を超えると紹介した上で、「研修医にとっての利益と地域医療にとっての利益は矛盾しない。地域にいい臨床研修病院をつくれば、長期的にその地域医療は改善する」と述べ、積極的に臨床研修制度を改善していくよう求めた。
■入院基本料の地域加算に落とし穴
また、亀田氏は、「指導医がへき地に行くには、待遇を良くする必要がある」と述べたが、現在の診療報酬体系では地方の病院に対する評価が低く、病院側が指導医に十分な給与を払えない要因の一つになっていると指摘した。
現在の入院基本料には1−6級地の地域加算が付けられているが、東京都特別区の1級地は1日につき18点、千葉県東金市など6級地は3点と差がある。地域加算は地域の物価の差などに基づいて決められているが、亀田氏は「都市部とのバランスを図っていく必要がある」として、今後の検討課題にすべきと主張した。
更新:2009/02/05 22:27 キャリアブレイン
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