現場の医師が研修医制度で議論―亀田総合病院
「トップが変わればいくらでもシステムは変わる」「専門医を極めることのメリットを示してほしい」―。厚生労働省の研究班が検討している医師の後期臨床研修の在り方について、現場の研修医らの意見を発信しようと、「明日の臨床研修制度を考えるシンポジウム」が2月4日、千葉県鴨川市の亀田総合病院で開かれた。医師たちが仕事の合間を縫って参加し、積極的に発言。パネリストからは、臨床研修制度を充実させるための方策や、患者が求める医師像が提言されるなど、活気あふれるイベントとなった。
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後期臨床研修をめぐっては、厚労省の「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会が、初期研修と後期研修の在り方について改善するよう求める報告書を昨年まとめたことを受け、現在は「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」(班長=土屋了介・国立がんセンター中央病院長)が検討を進めている。こうした中、亀田総合病院の腎臓高血圧内科の小原まみ子部長らが、臨床に忙しい現場の研修医も巻き込んで研修制度に対する意見を出していこうと、同院での開催を企画。会場には、約60人の医師が集まった。
シンポジウムではまず、「医学生の会」の森田知宏さん(東大医学部3年)らが、医学生の立場から医学教育などについて提言していこうとする活動内容を紹介。森田さんは、「大学で得られるものは知識と経験に分けられる。知識は教科書やウェブで得られる。経験は先生方との個人的な関係など、現場で身に付けるしかない」と述べ、海外の大学や学会との交流活動を紹介。昨年11月に東京都内で発足した同会の活動が、北は北海道から南は長崎県まで全国的に広がり、会員も約200人に上っているとした。現在は医師養成の在り方についての提言を作成するため、医学生を対象にアンケートを実施しており、提言は舛添要一厚労相に提出する考えだ。 続いて慶大総合政策学部の秋山美紀専任講師が、「本当に優秀な医師を育てる教育と、最低限ここを満たしてほしいというミニマムスタンダードを確保する教育。これは違うのではないか」と投げ掛けた。優秀な医師を育てるには、本人の資質と努力、指導者と教育プログラム、周囲の理解や社会の支えが必要として、その資源を国民がどう負担していくかのコンセンサスについて考える必要があるとした。また、「ちょっと資質の足りない人でも、ある程度の医師に育つことが必要」と述べ、医師として最低限身に付けるべき知識を確保するプログラムを用意しておくべきとした。
このほか、研究班の班長の土屋氏が今後の班研究の方向性について、同院長の亀田信介氏が臨床研修制度の質を向上させる方策についてそれぞれ講演した。
この後行われたディスカッションでは、会場から次々と手が挙がった。
■米国の研修は高コスト
米国で研修を受けたという総合診療科の医師は、米国の研修には相当な費用が掛かっていると指摘。一人の医師を育てるために、米国の高齢者、障害者を対象にした公的保険「メディケア」から年間で約1200万円の費用が拠出されており、研修医の給料、プログラム提供の費用に半分ずつ掛かっているとした。「自分のいた病院は内科研修医だけで120人。指導医もそれに対応するだけいた。それだけのマンパワーは難しい」。また、米国のメディカルスクールでは3年生から患者を受け持っており、4年生では戦力になっているとして、「日本でもある程度責任を持たせ、現場で医師を育てるべき」と主張した。
■大学病院にスーパーローテ不適
同院の加納宣康主任外科部長が「医師の教育で一番重要なのは臨床力を身に付けること」と主張したのに続き、外科で後期研修を受けているという医師は、大学病院でスーパーローテートを受けることは臨床力を付けるのに適していないと主張。大学病院では雑用が多く、患者の疾病に偏りがあるとして、「自分がいた大学のように、小児科に白血病が多く、2年間白血病を診ているのではスーパーローテートにはならない。小児科なら風邪や肺炎、ぜんそくなどを数多く見るのがスーパーローテートの価値だと思う」と訴えた。
ある麻酔科の医師は、自らが研修を受けていた大学で組織のトップが代わった時に、それまで「見学」にとどまっていた研修で、実際に患者を担当できるようになったという変化を紹介。「トップで引っ張る人が代われば、システムはいくらでも変わるのでは」と述べた。
■へき地行く医師にインセンティブを
家庭医の後期研修を受けているという医師は、医師である兄からも理解を得られていないことを引き合いに、「家庭医を増やしたいなら、医師の中で家庭医の理解を深めてほしい」と主張。その上で、「へき地や離島に行く医師を増やしたいなら、金銭や自由、特権などの特別な報酬が必要」と述べ、指導医にも同様の報酬が必要とした。また、研修医制度の中で指摘される大学病院と一般病院の対立構図について、「小さい日本の中の、医師という小さいコミュニティーで、そんなことを言っていては、医療はいい方向に行かない」と訴えた。
このほか、卒後11年目になるという医師は、同級生で指導医クラスの立場にいる医師は「1人しかいない」と述べた上で、「後期研修に進む若い医師、専門に進もうとする医師が、プロとして進むことに生きがいを見いだせるビジョンを示していくべき」と主張した。
更新:2009/02/05 22:25 キャリアブレイン
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