2003年05月22日

「スタイリー・スタイリー」

「スタイリー・スタイリー」と女声コーラスが歌うコマーシャルを知ってるか? そう、折り畳みベンチに寝て、身を「く」の字に屈伸する健康器具で、最後に男が出て来、ベンチを畳んで「ワタシニデンワシテクダサイ」と外国訛りで喋る奴だ。

彼の名前はアジャコシ・フェレンツ。ハンガリー人だ。ハンガリー動乱を逃れて日本に流れ着き、大学で勉強している頃に俺がアシスタントをしてた番組、「(高橋)圭三ビッグ・プレゼント」のゲスト「ブダベスト・ジプシーオーケストラ」の通訳として出演した。当時、共産主義国家の芸能人はそれぞれの大使館が来日の世話をしていたので、亡命者のアジャコシは、ひょっとすると逮捕されるのでは無いかと怯えながらの出演だったが、何事も無く収録が終った。まだ若く、ハンサムな東欧の若者だった。

数年後、テレビを観ていた俺は驚いた。アジャコシが上に書いたCMに登場したからだ。しかも、世間の噂では大成功を収めていると言う。健康器具のはしりで、上手くチャンスを掴んだに違いない。だが俺は連絡を取ることもせず年月が経った。

局を辞めてからは仕事を作らねばならず、昔の知人を探して情報交換を始めたが、10年ぐらい経ったある日、アジャコシを思いだした。電話帳でスタイリーを調べると「スタイリー本舗」という会社が見つかった。図星で、そこがアジャコシの会社だった。さっそく会う相談がまとまった。彼は「赤坂のインド料理屋で毎朝食事してるので来てください」と外国訛りで言う。

当日、店に着くと、まん丸に太った外国人がホットケーキを食っていた。記憶に有るアジャコシとは似ても似つかぬ中年親父だ。でも、俺に気付くと笑顔を見せ、大声で呼びかけた。「ホットケーキ食べない? おいしいよ!」。どうしてインド料理屋でホットケーだ? 甘い物をあんなに食えば、あのぐらい太るよな・・・と思いつつ、俺もホットケーキを注文した。アジャコシはすこぶる元気だった。

俺は在日外国人と会ってしばしば感じるのだが、日本は日本人よりも外国人の方が住み易く、仕事もし易いのではあるまいか。日本人は外国人に閉鎖的と言うが、日本人同士がしきたりに縛られて動きがとれない間隙を縫って外国人が成功してるに違いない。

その日、アジャコシとどんな話をしたか覚えて無いが、収穫も無く、別れた。ところが、きのう中橋君と仕事の打ち合わせ中に俺がスタイリーの話を始めたら、加賀谷君が
「知ってます? 今あの人ビール会社のオーナーですよ」と言う。
俺 「どこで?」
加 「国へ帰って」
俺 「そう、俺あいつ知ってるんだよ」
加 「えーっ、ほんとですか!」
俺 「ほんとほんと、大昔ね・・・」
という訳で、俺が彼とどういう知り合いかを説明した。加賀谷君は、スタイリー・ファンの友達に知らせると言って、携帯のメールを打った。俺は、どうでもいい話が受けてくすぐったかった。

投稿者 gacha : 2003年05月22日 01:22
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