
「無防備都市」を喧伝する 朝日・毎日と国立市長の愚(1)
ジャーナリスト 時沢和男
朝日・毎日が入れ込む新たな「平和運動」
今年に入り、関西地方を中心に「無防備地域宣言」なる運動についての報道が増えている。特に朝日新聞、毎日新聞は三月から七月にかけ、地域版も含めてそれぞれ二十本近い記事を掲載し、入れ込みぶりが目立つ。その報道ぶりを時系列で見てみよう。
「国際人道法に基づく非戦の『無防備地域』であることを大阪市が宣言する条例制定を直接請求するため、市民団体が四月二十四日から直接請求の署名運動を始める」「直接請求するためには、市の有権者(約二百八万人)の五十分の一である約四万二千人分の署名を、三十日以内に集めなければならない」(三月五日付毎日新聞)。記事には、直接請求を計画した「無防備都市地域宣言をめざす大阪市民の会」の電話番号が示され、運動への賛同を促している。
「長く国民の支持を集めてきた『護憲派』だが、ここ数年、かつての輝きを弱めつつある。…二十四日、大阪市で憲法九条を支えとする運動がスタートした。地域として戦争協力を拒否する『非核・無防備平和都市条例』の制定を求める署名運動だ」(四月二十五日付神戸新聞)
五月十二日付朝日新聞は、「『無防備地域』条例化」「戦争非協力広がる志」という見出しの大きな記事で「運動」を詳しく紹介している。「戦争にもルールがある。例えば、武器を捨て、白旗を掲げた都市を攻撃してはいけない。そんな国際条約に着目し、日頃から戦争に手を貸さない街をつくろうと大阪市民が取り組んでいる」
「無防備地域」運動は、五月十七日に放送されたTBS系列の毎日放送(MBS)の「VOICE」というニュース番組でも、「戦争が起きても敵国から攻撃されないという『無防備地域の宣言』をめざす新たな運動が大阪から始まっています。市民グループは条例制定に向けて、今、署名活動に必死です」と紹介されている。
番組の中で「無防備地域宣言運動 全国ネットワーク」事務局長は、「武器がある、軍隊がいるということ自身が、一層住民を危険にさらしている。これは諸外国の例でも、日本の過去の例でも多々あった事実なんです」と語っている。
五月二十日付毎日新聞は、「大阪市無防備地域宣言」「実現へあと四千人」「二十三日が期限」という記事で、やはり「大阪市民の会」の電話番号を示している。
六月十八日付朝日新聞は、「『無防備宣言』署名請求必要数超える」と伝えた。
六月三十日付毎日新聞は、「『無防備地域宣言』条例の制定を求め、署名運動を展開した市民団体が三十日、直接請求した」「来月に開会する市議会で可決されると、全国初」と報じた。
朝日新聞六月三十日夕刊は、「無防備地域『有事体制』歯止めを」「草の根、大阪から各地へ」という記事で、この運動に関連する全国各地の動きを詳しく紹介している(一面と十四面に掲載)。「東京都国立市でも『非戦のまち・くにたちの会』が七月十四日に初めての集会を開く」「大津、奈良、兵庫県西宮の各市でも市民が準備や検討を始めている」といった具合だ。ここでも「問い合わせ」の電話番号を書いている。
七月二十四日付毎日新聞は、「『無防備地域宣言』条例案 大阪市議会が否決」と、ごく短く伝えた。しかも、この記事はインターネット版には掲載されていない。よほど否決されたことが悔しかったのであろう。しかし、「運動」が全国各地に広がっているという報道は続く。
「西宮市の主婦らを中心とした市民グループが、戦争への非協力を宣言する『無防備地域条例』の制定を求める直接請求に取り組むことを決め、24日までに準備会を設立した。来春、請求のための署名活動に取り組む。同様の動きは全国に広がっている」。「『無防備地域宣言運動全国ネットワーク』(事務局・大阪)によると、有事関連法の成立や自衛隊のイラク派遣を背景に、全国約二十の自治体で、直接請求に向けた動きがあるという」(七月二十五日付神戸新聞)
「市民団体『枚方市非核平和・戦争非協力(無防備)都市条例を実現する会』は25日、同市が外国から軍事攻撃を受けない非戦の地であることを宣言する条例制定を直接請求するための署名運動に向け、決起集会を開いた」(七月二十六日付毎日新聞)→つづく
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