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【コラム】「バカ」が最もひどい悪口である社会(下)

 在日韓国人や中国人、貧しい人や障害者などのマイノリティーを蔑む「差別語」もまた死語となりつつある。最近の日本の若者の前で「乞食」という言葉を口にすると「えっ!」と驚き、笑みを浮かべる。公的な場面で長い間タブーとされてきたため、「耳慣れない古い言葉」という印象を与えるようになったのだ。異民族を蔑視(べっし)する言葉も、一部の偏狭な人たちが酒を飲みながら口にする程度にすぎない。

 悪口に対する公的な規制もあったようだ。大昔の話ではあるが、鎌倉時代(1185年‐1333年)に施行されていた武家法には「悪口罪」があった。悪口を言った者には鞭打ちの刑を科したのだ。さらに第2次大戦後には「人権」の観点から、悪口に対する社会的な規制が強まった。2002年には「バカ」という単語が入っていたという理由で、高校の教科書に掲載されていた有名な小説が削除されるという騒ぎも起こった。

 だが、何よりも重要なのはやはり、悪口に対する国民一般の感情ではないだろうか。日本では人を評価する際に「品が良い」「品が悪い」という言葉を頻繁に使う。品格の有無を表わす言葉で、自分が誰かに「品が悪い」と言われることほど恥辱的な瞬間はない。こうした評価が最も多くなされるのは、まさに悪口や差別語、卑猥(ひわい)な俗語などを使った瞬間だ。こうした言葉を使った途端、品格がないことを意味する「下品」という評価を下されることになるのだ。

 国民が話す言語の水準は、社会の品格を反映している。すべての国民が視聴できる地上波テレビで悪口を並べ立てれば、「この国の社会はここまで堕落したのか」と評価されることだろう。

東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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