警視庁の捜査員に任意同行を求められるエルアンドジーの波和ニ会長(中央奥)=東京都新宿区で2009年2月5日午前8時37分、小林努撮影
健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー(L&G)」による被害を拡大させたのは、使っても減らないお金、「円天」だった。10万円を一度払えば、同額面の10万円天が、毎年振り込まれる。2年で倍、3年で3倍……。そんな夢のような話で、高額な配当やブランド品をほしがる女性やお年寄りらがだまされた。
「円天は、おもちゃの金と一緒。だけど、これで物を買えたらこんないいことはない。(円と同価値で)10割引きだから。まあマネーゲームだった」。元幹部は苦笑して振り返る。時代の最先端を行く電子マネーが出資者の心を躍らせた。
04年ごろ考え出されたという「円天受取保証金制度」は、1口10万円以上を「保証金」としてL&Gに預けると、毎年1度同額面の円天が会員の携帯電話に振り込まれる。インターネット上のサイト「円天市場」や全国のホテルなどを巡回するバザー会場で貴金属や食料品などと交換できたため、出資者は口コミで増え、巨額の資金が集まった。
会場に出店した加盟店は、会員から受け取った円天をL&Gに渡し、現金と「換金」していた。しかし、ここでは、円天の額面通りの現金がもらえるわけではなく、額面の25%しか受け取れなかった。このため、多くの加盟店は円天での販売価格を現金時と比べて4倍以上高く設定していたという。一見夢のような円天システムが循環していくためには、円天以上の額面の現金が不可欠。被害対策弁護団長の千葉肇弁護士は「電子マネーによる配当という新しい手法が市民らに魅力的に映った」と話す。【武内亮、町田徳丈】