鳥取大医学部付属病院(米子市)の救命救急センター長である八木啓一教授(54)らセンター専属医4人が3月末で全員退職することが4日分かった。院内で会見した八木教授は、スタッフや設備の不足と若手流出などの問題点を挙げ、「救急医療に夢が持てなくなり、燃え尽きた」と述べた。同席した豊島良太院長は「大変な打撃。後任確保を進めており、広域医療の最後の砦(とりで)は死守する」と話した。【小松原弘人】
病院の説明では、救命救急センターは04年10月、自治体と地域の要望を受け設置された3次救急医療機関で、学会の専門医資格がある八木教授を含めた専属医4人と応援医師3人の7人体制。交通事故などに巻き込まれた重篤な患者を山陰両県や岡山県から年間約900人受け入れている。他科の医師や学生の研修も受け持つため負担が大きく、限界状態という。
設置場所である外来棟のスペースが不十分なことなど当初から課題が指摘されていたという。八木教授は設置以来のセンター長で、青梅市立病院(東京)から着任した。センターの3医師が退職する意向のため八木教授も昨年末に辞表を提出した。診療科トップを含めた数人の医師が退職するのは初めての事態という。
豊島院長は、後任として学外から2人確保するめどは立っており、他は公募中と説明。4月以降もセンターの機能は維持できるという。
八木教授は「医師は20人は必要。処置室や機器も不足している。都会志向の若手が腕を磨く機会はなく、辞めていくのを引き留められない。現状の満足度は20~30点。まるで“時間外の番人”という認識があり、救急医のプライドは傷つき、燃え尽きた」と不満を爆発させた。
一方、豊島院長は「八木教授の心情はよくわかるので慰留していない。センターは3~4年後に最新機器を含めて拡充する計画があり、着実に進めたい」と述べた。
毎日新聞 2009年2月5日 地方版