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2008-07-21

国会に出てきた『奴隷条約』 その4 国会に出てきた『奴隷条約』 その4 - Stiffmuscle@ianhu を含むブックマーク はてなブックマーク - 国会に出てきた『奴隷条約』 その4 - Stiffmuscle@ianhu 国会に出てきた『奴隷条約』 その4 - Stiffmuscle@ianhu のブックマークコメント


参議員外務委員会-6号 平成07年03月17日

132-参-外務委員会-6号 平成07年03月17日


○清水澄子君 具体的日程なり決まったときには、ぜひ御連絡いただきたいと思います。

 次に、国連の女性に対する暴力問題委員会のクマラスフミ特別報告官は、昨年の十一月二十二日に、この人権委員会で討議する予備報告書*1を人権委員会に提出をしております。この予備報告書における慰安婦問題についての骨子は、一つは、国際人道法のもとでの犯罪としての認定とあるわけですね。そしてもう一つは、武力紛争時に犯された暴力の被害女性のための補償による救済。この二点が骨子になっています。

 そこで、私は、一般論としてでいいです、別に慰安婦とかかわらなくていいですが、一般論として政府は、この報告書で言う性的奴隷行為の国際人道法のもとでの犯罪としての認定という部分についてはどのような御見解をお持ちでしょうか。



○政府委員(折田正樹君) クマラスワミ女史の予備報告書は、私どもも勉強させていただいていますし、女性に対する暴力全般について幅広く論じたものでございます。その中に、いわゆる従軍慰安婦に対する部分があるのはそのとおりでございます。そして、今、委員御指摘のように、国際人道法上の犯罪というところにも記述がございます。

 ただ、私どもといたしましては、この国際人道法上の犯罪なるものがどのような根拠、規定に基づく主張であるのか必ずしもつまびらかにしないのでコメントするのはなかなか難しいわけでございますが、いずれにしましても、こういう問題から生じます請求権の問題は、これまでも累次申し上げておりますように、サンフランシスコ平和条約、あるいは韓国の場合でしたら……


○清水澄子君 一般論を聞いております、この問題に対する。日本の経過は今聞いておりません。今のこういう見解に対して、一般論としてどういうふうに受けとめられますかと聞いています。


○政府委員(折田正樹君) 一般論として、先ほど申し上げましたように、国際人道法上どのような根拠でどのような規定で御主張なされているのかというのを我々つまびらかにいたしませんものですから、ちょっとコメントをするのは差し控えさせていただきたいということでございます。


○清水澄子君 ではもう一つの、武力紛争時に犯された暴力の被害女性のための補償による救済という、この報告書の全般的なものをお読みだと思いますけれども、その中には二つある、私は今その二番目の方を申し上げた。これも一般論で結構です。政府はどのような見解をお持ちですか。


○政府委員(折田正樹君) 一般論として申し上げますと、国際法上得る権利が果たして個人も有しているのかという問題だろうと思いますけれども、国家が国際違法行為を行った場合、被害国に対する加害国の賠償義務については国際法上確立しておりますけれども、それでは個人に国際法の主体性が認められるのかということになります

と、そこまでは国際法上確立しているとは言えないのではないかというのが私どもの一般論としての考え方でございます。


○清水澄子君 この報告書のパラグラフ二九〇*2には、「一九九二年七月、日本の首相は、日本軍が広範な政府運営の売春所網において、何万もの女性に性的奴隷としての労働を強いたことを認めて謝罪した。」とあります。

 政府は、パラグラフ二九〇のこの記述をお認めになりますか。もし認められないとすればどの部分かということをちょっと簡潔に言ってください


○政府委員(高野幸二郎君) このパラグラフ二九○の話は、今、委員おっしゃいましたとおり、九二年七月という時点を限定しております。その時点との関連で私ども、日本国総理が云々ということは承知しておりません。

 ただ、九二年の七月に当時の官房長官から、従軍慰安婦問題につきまして政府の関与があったと認められることを云々の調査結果を当時発表いたしました。その際あわせて、いわゆる従軍慰安婦として筆舌に尽くしがたい辛苦をなめられたすべての方々に衷心よりおわびと反省の気持ちを表明したという経緯はございます。


○清水澄子君 これは当時官房長官だった外務大臣が報告をされたわけですけれども、外務大臣、日本政府が従軍慰安婦問題について認めだというのは、このパラグラフ二九〇による一九九二年七月ということになりますね。それで、そのことが改めて確認ができるかどうか。そして、一九九二年七月以前には、日本政府にとって慰安婦問題というものは余り意識していなかった、いわゆる存在していなかったということになりますけれども、これは私はもうこれ以上追及しませんから、どうぞ率直に御意見をお聞かせください。


○国務大臣(河野洋平君) ちょっと私、原文を申しわけありませんが見ておりませんので、その原文と合わせて確認をしろと言われるとちょっと今直ちにできませんが、間違いなくその当時官房長官でございました私は、従軍慰安婦問題についてのそれ以前、大分前からこの問題についての調査をずっといたしておりまして、その調査の結果をもとにして発表いたしました。その調査の結果を発表すると同時に、先ほど政府委員が御答弁申し上げましたように、私の気持ちを述べたものでございます。

 発表の時点はその時点でございますが、清水議員も長く関心をお持ちでありましたように、かなり以前からこの問題については政府としても関心を持ち、調査をずっと続けてきた経緯がございます。


○清水澄子君 さっき私がお尋ねしたときに、二九〇のパラグラフについてはこの記述を認めるかというときに、首相という表現だけは別として、あとはお認めになりますか。


○国務大臣(河野洋平君) ちょっと申しわけありません。ただいまの答弁を若干修正させていただきます。

 九二年の発表ということであると、実は私ではなくて加藤官房長官であったと思います。したがいまして、私の今の答弁は、九三年の発言ということに訂正をさせていただきます。九二年の部分については、申しわけありませんが、ちょっと手元にございません。


○清水澄子君 九三年の場合はそういう形でお認めになりますね。

 それで、先ほどの二九〇というパラグラフの部分はお認めになりますか。


○政府委員(高野幸二郎君) このパラグラフ二九○に書いてあることの趣旨におきましては、現実に東京での九二年七月の官房長官の発言とほぼ同趣旨がというふうに私どもとしては考えております。


○政府委員(折田正樹君) ちょっと一点だけ補足させていただきますと、パラグラフ一九〇に性的奴隷という言葉が使っでございます。政府の発言の方にはそういう言葉はございません。

 国際法上、奴隷とは何かということでございますが、日本はいわゆる奴隷条約というのには加わっていないわけでございますけれども、その奴隷条約で定義されているのは、その者に対して所有権を伴う一部または全部の機能が行使される個人の地位または状態を言うということで、まさしく所有権を伴うような感じの定義になっているわけでございます。

 今度の従軍慰安婦問題が果たしてこういう表現にぴったりと当てはまるかどうかというところも問題があろうかというふうに思います


○清水澄子君 きょう、ちょっと余り論争する気はしませんが、慰安婦なんという言葉は英語にもありませんので、その点どうぞ御理解ください。こういう性的奴隷という表現に国際的にはなっております。

 そういう御認識であるということだけはきょうここで明らかにされましたから、これはまたいろいろ議論をしなければならないことがあるかとも思います。

 そこで、今度は二九一のパラグラフなんですけれども、これもぜひ大臣に私はお聞きいただきたいと思います。この報告書のパラグラフ二九一には、

 第二次大戦後約五〇年が経過した。しかし、この問題は、過去の問題ではなく、今日の問題とみなされるべきである。それは、武力紛争時の組織的強姦及び性的奴隷制を犯した者の訴追のために、国際的レベルで法的先例を確立するであろう決定的な問題である。象徴的行為としての補償は、武力紛争時に犯された暴力の被害女性のために「補償」による救済への道を開くであろう。ということがここで明確に報告書として提起をされて、そしてこの報告書は国連人権委員会に正武に報告をされている文書でございます。

 そして、この文書は、国連の文書として広く一般に公布されておりますし、現在ニューヨークで開かれております第三十九回国連女性の地位委員会においても報告され議論されている問題でありますので、そういう意味でやはり政府も改めてこの従軍慰安婦問題というのは女性の重大な人権問題として国際的に非常に新たな問題になっているという認識をされないと、私は今後非常に大きな政策的なずれというんですか、問題が起きてくるのではないかと思って今までこういう問題について質問してまいりました。ですから今後は、私は、政府は十分にその点を自覚をしていただきたいと思います。大臣、よろしゅうございますか。


○国務大臣(河野洋平君) それぞれのパラについてお尋ねでございますけれども、実は大変恐縮ですが、私が今見ておりますものと訳文が大分違うのでございまして、これはいずれが正確かということはよくわかりませんので、ちょっとその……


○清水澄子君 原文、あります。


○国務大臣(河野洋平君) いや、原文はもちろん持っておりますけれども、その内容について一字一句を議論することはこの際、申しわけありませんが留保させていただくことといたしまして、今の議員の御認識について申し上げれば、私ども政府としてはかねてから、この従軍慰安婦問題についていえば、二国間関係は、繰り返しで恐縮でございますが、国と国との関係は決着がついておるということを一貫して申し述べてきております。

 しかしながら、国と国との関係は決着がついているけれども、一人一人の心の痛みといいますか、そういうものは残っている人もいるし、いない人もいるということだろうと思います。ひどく痛みを感じている人もいれば、余り痛まない人もいるということはございます。傷つけられた方、傷つけた方、あるいはそれが非常に身近な事象としてある人、ない人、それによってさまざまなのだと思います。したがって、個人がいろいろとそれについて議論をなさる、あるいは議論だけでなくて具体的な行動をなさるということはあるだろうと思います。

 したがって、平和友好交流計画を村山総理の指示で私どもは実施しようといたしておりますし、それについても議員にはいろいろ御意見がおありだと伺っておりますが、私は広く国民の皆さんの理解と協力が得られることを期待しているわけでございます。


○清水澄子君 これはその本人の心の痛みの問題だけじゃないですね。やはり日本の姿勢とか日本の人権に対する認識が問われていることだと思いますが、きょうはもう、でも議事録に残るでしょうから。それが今後どういう論議を呼ぶか、私はむしろそういう認識の方に心配をいたします。

 次の質問に入りますけれども、既に私は外務省に韓国の外務部が出された文書をお渡ししておりますけれども、まずこの文書によりますと、韓国政府は日本政府に対して、郵便貯金それから保険金、未払い賃金などの日本政府が保管している文書について返還を要求しているということになっているわけですけれども、そのような韓国政府からの返還要求が出ているのでしょうか。簡潔に言ってください。

*1

■英語原文
290. In July 1992, an apology was delivered by the Japanese Prime Minister, admitting that the Japanese military had forced tens of thousands of women to work as sex slaves in a vast network of Government-run brothels. However, the question of compensation has still to be determined and the act has still to be recognized as a crime under international humanitarian law.

"Preliminary report submitted by the Special Rapporteur on violence against women, its causes and consequences, Ms. Radhika Coomaraswamy, in accordance with Commission on Human Rights resolution 1994/45"

■日本語訳
290. 1992年7月、日本の首相は日本軍が国営の売春宿という広大なネットワークの下で数万の女性を性奴隷にしたことを謝罪した。しかし、補償問題は依然として決着がつかない上に、国際的人道法の下で犯罪として認められてもいない。

『女性に対する暴力-その原因と結果-予備報告書 』、(財)女性のためのアジア平和国民基金、53ページ(pdf、55/104ページ)

*2:上記、注1参照

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