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午前3時半の女(2)

記者メモ・ここだけの話

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2009年01月21日 16:30

午前3時半の女(2)

 25歳の神田雄亮君の「人」欄の記事がなかなか書けずに、なぜ午前3時半までかかってしまったのか。

 結局、取材不足につきます。

 神田君は母子家庭で育ち、少年鑑別所行きも経験した元暴走族のリーダー。貧乏、生活保護。中学卒業後すぐ働きだし、職を転々とする生活。でも、母親を亡くしてからは、8歳年下の弟の親代わりになって、家事一切を自分でやる健気な青年です。親孝行できなかった母親、両親の愛情を知らずさびしい思いをしている弟、周りの不幸な人を目の当たりにして、「政治を変えたい。総理大臣になる」と昨秋、共産党に入党。友人ら70人を集めて、昨年末、街頭演説会を行い、地域の話題に。
 この事実を追って再現すれば、「人間ドラマ」になると思ったのがまちがいでした。
デスクからは、きっぱり一言。「生死にかかわることでもないと、やってきたことを書いただけでは人間ドラマにはならないよ」。

 街頭演説会に70人も集まった友人らは、元暴走族の神田君の変貌ぶりをどう見ているのか。共産党で活動する青年らは、型破りの青年、神田君をどう受けとめているのか。本人取材だけでは見えてこない、神田君の人間像、入党への思い、総理大臣になるという突拍子もない思いにいたる動機などが見えてきたはずです。

 「人間を描く」。描く人間をどれだけ広い視野でとらえられているのか、試されていると実感しました。(辻井祐美子)