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米の3D映画正念場 制作費は割高/「観客引き戻す力」

2009年2月4日

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 米国では今年、3D(3次元)映画が正念場を迎える。アニメや実写の長編映画など、大作が続々と公開を控えているのだ。見るには専用のメガネが必要で、これまでは観客が違和感を覚えることがあったし、何より専用の映写設備を備えた映画館が足らず、普及の足かせとなってきた。果たして本当の「3D元年」は来るのか。

 ポップコーンの甘いにおいが劇場内を漂う。昨年12月のクリスマスシーズンを間近に控えた週末、米国・ハリウッドの映画館は、上映前から多くの家族連れでにぎわった。ディズニーの3Dアニメ映画「ボルト」(日本は8月公開)の上映が始まると、子どもたちは3D専用の黒いメガネをかけて、主役の白い犬の活躍に見入った。

 米国ではディズニーのほか、ドリームワークス・アニメーションが、今後のアニメ作品をすべて3Dにする方針を打ち出している。後者が製作し、全米で3月27日に公開する「モンスターVSエイリアン」(日本は7月公開)は、モスラやゴジラなど、かつての特撮映画で登場したキャラクターに想を得たというモンスターが多数登場する。

 そのドリームワークスを率いるジェフリー・カッツェンバーグ氏は「3Dの技術は、この10年で格段に進歩した。通常の2D(2次元)映画より製作費は1割高いが、観客は映像の世界に入り込んだような経験をすることができるようになった。3Dこそ、テレビやパソコンから映画館に観客を引き戻す最有力の技術だ」と主張する。

 カッツェンバーグ氏によると、米国で劇場に3Dの専用設備を導入するには1館あたり7万5千ドルかかる。3月の公開までに、全米の2500スクリーンで上映可能になると見込むが、世界的な金融危機が最大の向かい風だ。「今の経済情勢では、米国外での普及のペースは、ゆっくりしたものにならざるを得ないだろう」と話す。

 3Dの上映設備で米国最大のシェアを持つ「リアルD」社のジョシュア・グリーア社長によると、世界30カ国で約1500スクリーンが、すでに同社の設備を持つ。「近い将来、5500スクリーンを目ざす」といい、普及のために日本をたびたび訪れているそうだが、「日本の上映館はまだ少なく、米国よりもさらに割高になる」と言う。

 「モンスターVSエイリアン」を3D上映できる日本の映画館は約50スクリーンの見込み。できない上映館は、同時製作する2D版を、3Dより安い料金で上映することになる。

 今年話題の3D作品には、他に「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督の新作「アバター」がある。12月公開予定のこちらは、アニメと実写とを併用したSFアクション。

 ロサンゼルス在住の映画監督、細谷佳史さんは「3D作品は映像の立体感を強調する。だから、最近の映画のようにカットを細かく割ると、特に実写部分では観客の目がついていけない。2Dとはまったく別の映像表現を用意しているはずだ」と予測する。(ロサンゼルス=秋山亮太)

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