社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

社説:早期補正浮上 予算組み替えや修正が先だ

 09年度政府予算審議が始まったばかりというのに、与党内で早期の補正予算必要論が浮上している。山口俊一首相補佐官は、後になり取り消したが、「麻生太郎首相が編成を検討している」とまで発言した。これは、どういうことなのか。

 内外の経済情勢が予算編成時に比べて厳しくなっていることは事実だが、政府・与党は「ベストの予算」といまでも言い続けている。麻生首相自ら、08年度予算の1次補正、2次補正、09年度当初予算と切れ目なく、施策を講ずることで、先進国で最初に景気回復を実現すると強調している。そのためにも、早期に成立を図りたいと再三述べている。

 その裏で、当初予算成立を待って補正予算編成の腹積もりというのでは、当初予算が景気回復に無力であることを認めているに等しい。国会軽視のみならず、経済政策としても稚拙である。そうしたことが、政権維持目当てや選挙対策として考えられているとすれば、国民を愚弄(ぐろう)していると言わざるを得ない。

 予算審議では、まず、この予算でどれだけの景気回復効果が期待できるのか明らかにする必要がある。客観的にみて09年度予算案は歳出の重点化がまだ中途半端なうえ、今や、最大の課題である国民の安心や安全確保面からも不十分な内容だ。野党はこうした点を突くだろう。政府・与党は提案内容が十分な景気下支え効果や持ち上げ効果を発揮できるというのであれば、裏付けを示すべきだ。

 現実には、与党内もこのところの景気悪化に対処するためには、追加措置が必要という動きになっているということだ。そうであるのならば、どのような施策を強化しなければならないのか、新規施策は必要なのかなどを、国民に示さなければならない。

 そこで何をやるのか。

 予算案が国会審議中であることを考慮に入れれば、一般会計規模88兆5000億円、一般歳出規模51兆7000億円を、より効果的にする歳出配分の検討である。予算の組み替えや予算修正である。100年に1度の経済危機とまで言うのであれば、メンツにこだわるべきではない。

 要は、経済効果、財政効果の高いお金の使い方である。しかも、必要な措置は当初予算での対応が本来の財政のあり方だ。補正予算は概算要求基準に縛られないため、政治にとって使いやすい。その分、財政規律が緩みやすく、慎重に扱っていかなければならない。

 与党内では、早期補正予算編成のみならず、景気対策のための政府紙幣発行構想も論議を呼んでいる。財政、金融両面での節度をかなぐり捨てた議論だ。異説や奇策では済まない。経済を危うくする策だ。

 経済の立て直しや活性化は愚直に考え、行動するしかない。

毎日新聞 2009年2月5日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報