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エコナビ2009:そごう本店、売却交渉 「聖域なきリストラ」示す

 <ECONOMIC NAVIGATOR>

 ◇セブン&アイ、グループ連携強化狙う

 セブン&アイ・ホールディングスが、傘下のそごうの発祥の地、心斎橋本店(大阪市)をJ・フロントリテイリングに売却する見通しとなった。創業店舗を含む「聖域なきリストラ」を内外に示し、グループ内の連携を強めて業績回復を急ぐのが狙いだ。消費低迷に歯止めがかからない中、リストラの動きは地方店舗にとどまらず、都市部にも波及してきた。

 セブン&アイは06年、そごうと西武百貨店が03年に経営統合したミレニアムリテイリングを約2000億円で買収。主力のコンビニやスーパーとの連携が狙いだったが、運営を百貨店側の自主性に任せたこともあり、思惑通り進まなかった。両百貨店の08年2月期連結決算の営業利益の合算は7・8%減の315億円で2期連続の減益と、不振が続いていた。

 このためセブン&アイは従来方針を転換し、昨年9月には連携に消極的だったミレニアムの佐野和義前社長を事実上解任。今回、西武の北海道からの撤退検討にも乗りだし、百貨店再建の主導権を完全に握った。今後は食料品を中心に割安な自主企画商品の百貨店への導入も検討し、テコ入れを図る考えだ。

 一方、Jフロント傘下の大丸は地盤の大阪地区のテコ入れを狙う。00年にそごうが破綻(はたん)した際にも旧そごう大阪店(現心斎橋本店)の買収について「かなり突っ込んだ検討をした」(Jフロント首脳)が、価格が折り合わず、断念。昨年10月、阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングと高島屋が経営統合を決めたことで危機感が高まり、計画が再燃した。大阪市内に巨艦店を持つ両社が統合すれば、同市内の百貨店売上高のほぼ半分を押さえる規模になる。「地盤の大阪でのじり貧を恐れた大丸側が動き、この1~2カ月で計画が急浮上した」(関係者)との見方は根強い。

 ただ、そごう心斎橋本店は経営破綻からの「復活のシンボル」として05年に営業再開したが、06年以降売り上げの前年割れが続く。「投資に見合った効果を出せるか疑問」(国内証券アナリスト)との声もある。

 ◇地方店以外も再編か

 百貨店業界では、ショッピングセンターや専門店との競合激化に消費低迷が重なり、地方百貨店を中心に店舗閉鎖などのリストラが加速している。Jフロントは昨年10月に横浜松坂屋、12月には今治大丸を相次いで閉鎖。今年1月には浜松市への出店を撤回した。三越も鹿児島店や名取店など4店舗を3~5月に閉鎖する。北海道の老舗百貨店「丸井今井」(札幌市)も1月末に民事再生法の適用を申請する事態となった。

 地方店の閉鎖は「都市部の巨艦店舗の収益で販売不振の地方店を支える」というビジネスモデルが通用しなくなったことが大きい。昨年9月の金融危機以後、東京、大阪、名古屋など10大都市圏の百貨店売上高は、それ以外の地域よりも落ち込み幅が大きいのが実情だ。急激な景気の悪化による「逆資産効果」で、都市部の百貨店が得意とするブランド衣料など高額品の販売が急速に悪化しているためだ。

 全国百貨店の売上高は、08年12月に前年同月比9・4%減と過去最悪の水準。08年通年でも4・3%減となり、コンビニ業界に抜かれた。各社はセール前倒しや最低価格の引き下げなどを行っているが、1月も大手各社は軒並み1割前後売り上げを減らし、有効な打開策を見いだせていない。今回セブン&アイが大都市店の売却方針を固めた事実は重く、今後地方店以外にも再編・淘汰(とうた)が広がる可能性が高まっている。【田畑悦郎、小倉祥徳】

毎日新聞 2009年2月4日 東京朝刊

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