水揚げされたツチクジラ=08年6月、千葉県南房総市の和田漁港
【ロンドン=土佐茂生】国際捕鯨委員会(IWC、事務局・英ケンブリッジ)の作業部会は2日、日本が南極海で実施している調査捕鯨の規模を縮小する代わりに、日本での「沿岸捕鯨」を容認する内容を含む議長提案を発表した。今後5年間を暫定期間とし、この間に長期的な解決策の合意を目指すという。
日本など捕鯨推進国とオーストラリアなど反捕鯨国の対立で進まなくなった議論を打開するため、IWCは作業部会を設置し、昨年は2回会合を開いた。今回の議長提案はその議論を受けてまとめられ、沿岸捕鯨と調査捕鯨を「交換条件」としつつ妥協を求めたものだ。
日本では太地(和歌山県)、網走(北海道)、鮎川(宮城県)、和田(千葉県)の4地域で、IWCが規制対象としていないツチクジラやマゴンドウなどの捕獲が昔から行われており、「小型捕鯨」と呼ばれる。今回の議長提案は、この4地域で、IWCが規制対象としているミンククジラなどの本格的な鯨類の捕獲を認めようというもので、「沿岸捕鯨」と呼ばれる。
議長提案では、規模は5隻以下の日帰りに限り、捕った肉は地元で消費する。具体的な頭数は示されていないが、科学的な根拠に基づく持続可能な頭数を設定し、毎年IWCに実績を報告させる。6年目以降については、完全に禁止するか一定数に限って継続を認めるかの両案が併記された。調査捕鯨の一環ではないため、水産庁は「商業捕鯨再開への一歩になる」と受け止めている。
一方、世界の反捕鯨国や環境団体から批判されている南極海での日本の調査捕鯨については2案が提示された。一つは、5年間でミンククジラの捕鯨頭数を徐々に減らして段階的に廃止する案。ザトウクジラとナガスクジラについては全面的に禁止する。二つ目の案は今後5年間、IWC作業部会などの助言を受けて年間の捕鯨頭数枠を定め、それを継続するとの内容だ。
IWCは「あくまで議論のたたき台」と位置づけているが、3月にローマで開かれる会合を経て、遅くとも6月のポルトガルでのIWC総会で結論を出したい構えだ。