「放課後プレイ」 アキバ店員の予想を超える売れ行き
最近、「もう政府紙幣の発行しかない」なんていうニュースをきくけど、あやういなあと思う。打ち出の小槌なんてものはない、「親方、空から女の子が」みたいに、どこからともなくカネが降ってくるわけないでしょうに、つまりそのカネどこから持ってきたんだよと。第二の地域振興券で終わるならまだしも、額によっては日本銀行券(おさつ)を道連れにして、国そのものを殺しかねない劇薬になりうる。
「おいスネオ、いまから俺サマ専用のカネ刷るから、貸方の政府預金残高アップさせとけ。借方の資産には、とりあえずこの紙切れの名前でも載せとけよ。俺の債務残高は増えないし、頭いいだろ」
「えー? 困るよジャイアン、それって実質的に国債の引き受けじゃん、法律で禁止されてるでしょ? でもって、ジャイアンそのおカネどうせ返してくれないくせに」
「バーカ、余裕できたら返してやるよ。じゃ、いまからバラ撒くから、戻ってきたら全部お前が処理しとけよ」
「それってみんなが要らないっていうから回収されてきたんでしょ? だったら返品できないし、一生ボクが持ってなきゃいけないじゃん」
「ああん? 何いってんの、お前」
「戻ってくる国債を受け取るのと違って、利子ももらえないし、ウチの信用がなくなって円も下がる。貨幣の流通量も増えるし、インフレにもなるよ」
「何だと? 俺のカネをバカにすんのか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……。売りオペが必要なときに、そのおカネ以外の資産を売らなきゃいけない場合とか、そのおカネの引取りを迫られたときに、要らない買いオペをしなきゃいけない場合とか、そのせいで為替とか国債に影響出たり、いろいろまずいよ」
「知るかバカ、なんとかしろ。つーか、カネなくなったらまたガンガン刷るから、そんときゃ頼むぜガハハ」
「えー? 困るよー」
で、まあ、政府がやりたいのは、供給した通貨をブタ積みにする金融機関(投資機会がないから仕方ないんだけど)を通してでなく、減税の形をとって、国民一人ひとりに直接ゲンナマを叩き込みたい(清き一票のためのヘリコプターマネー)、それでデフレ脱却のきっかけにしたいってことなんだろうけど、そもそも貨幣の需要がない、あるいは収入が不安定だから将来に備えて蓄えましょうとなるから、結局は銀行に預金されて戻ってきてしまう。というか、自販機で使えないからユキチに換えてくれ、もう要らねえよバカっていわれそう。
日銀のバランスシート(http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/ac07/ac090131.htm)をみてると、やっぱり実質は国債の発行なんだなとわかる。政府紙幣の通貨発行益はインフレ税と表裏一体で、実際の動きは、日本銀行券を発行した場合に日銀が市中から対価として受け取るべき金融資産に係る将来のキャッシュインフロー総額の割引現在価値相当額が一時に政府に移転する、換言して、「政府債務に載らない、日銀全額引き受けの、無利子の、返済期限なしの、発行額無制限の、強いていえばインフレ税を原資とする、既存国債の価値下落を招くような」国債の発行、という理解(合ってる?)。
政府のバラ撒きのために日銀が国債を引き受けるだけなら、あるいはデフレ対策のために通貨供給を増やすだけなら、普通に日銀の買いオペでいいじゃん。政府は日銀に文句いう暇があったら、まず行政改革(歳出削減)をしろよ、というのが自分の結論。
発行時であれ、還流時であれ、日銀の資産勘定に(返品は不能で、利子も生まない)ゴミクズが残るわけで、その額が大きくなれば、通貨への信頼に直結してくる。「輸出立国の日本にとっては円安いいじゃん、経済成長にとってはインフレいいじゃん」とか、そういう入り口の話は置いといてですね、不換通貨(もうキンと交換しないよ)の安定というやつが、「あいつらなら、この一万円が明日も変わらず一万円として通用するように、うまくインフレをコントロールしてくれそうだ」という、中央銀行への信頼によってしか達成されないことを忘れてやしないかと。
別にインフレ自体は悪くないのよ、ただそのインフレを当局がコントロールできてないっぽい、なんかヤバくね? とみんなが思った時点で、もうその通貨の価値はゼロになる。だから日銀のバランスシートは可能な限り健全でなくてはいけない、なおかつ金融政策(売りオペ買いオペ、金利改定)の自由度も高くなくてはいけない、なのにその両方をぶっ潰しかねない巨額の政府紙幣の発行は、マジで危ないということです。
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