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「お家芸」の今:バンクーバー五輪に向けて/1 フィギュアスケート

 ◇派閥対立を乗り越え 「女帝」復権へ始動

 12月26日深夜、長野市内のホテルの一室。フィギュアスケート関係者数人が集まり、ワインを傾けていた。中心は、かつてフィギュア界の「女帝」と呼ばれた城田憲子・元日本スケート連盟フィギュア強化部長。数時間前に同市で行われた全日本選手権男子で初優勝した織田信成の母・憲子コーチも同席し、城田氏に「息子は城田さんが考えた通りになった」と礼を言った。

 織田は07年夏に飲酒運転で検挙され、昨季を棒に振った。しかし今季はNHK杯優勝など復活。荒川静香や安藤美姫を世界一に導いたニコライ・モロゾフコーチに師事したことが大きい。未成熟な部分があった織田の演技が、モロゾフ氏の指導で正統派の堂々たるものに変わった。そのモロゾフ氏と織田との橋渡しをしたのが城田氏だ。城田氏は「以前からニコライに『織田を教えたい』と頼まれていたし、織田も環境を変えた方がいいと思った」と明かす。

 全日本選手権女子で2位と復調した村主章枝も、今季からモロゾフ門下生となった一人。不振に悩む村主から相談を受けた城田氏が「ニコライは少ないエレメンツ(演技要素)で点数を上げるのが得意。(跳べるジャンプが少ない)村主に合うかも」と紹介した。

 城田氏は97年に強化部長に就任すると、全国有望新人発掘合宿や、小学生からの海外遠征など、才能ある選手に英才教育を実施。また豊富な人脈を生かし、選手個々に合った海外の名コーチを選んだ。98年長野五輪で入賞ゼロだった日本が、世界屈指の強豪国へと変わる原動力だった。

 だが、06年3月に発覚した日本スケート連盟の不正経理事件に連座して失脚。連盟は理事復職の永久禁止を決め、連盟活動自粛も勧告した。「城田派」のスタッフの多くは強化の中枢を離れた。

 だが、やはり城田氏の持つ強化ノウハウ、人脈は捨てがたかった。連盟は昨年2月の理事会で、城田氏らの連盟活動の一部容認を確認。同7月に就任した伊東秀仁・フィギュア部長は、城田氏の側近だった吉岡伸彦氏を強化部長に充てた。伊東部長は「昔の派閥や確執を引きずらず、日本を強くするために必要な人には活動してもらうべきだ」と話す。

 一連の事件に関連した城田氏のイメージは良くない。しかし、バンクーバーに向けて強さを盤石にするため、連盟は城田氏の手腕も生かすことにした。復権しつつある城田氏は「次は高橋大輔よ」と、右ひざ手術で今季欠場中の「男子のエース」復活に意欲を燃やす。【来住哲司】

    ◇

 来年2月12日のバンクーバー冬季五輪開幕まで、あと1年余り。日本は98年長野五輪で金5個を含むメダル10個を量産したが、その後のメダル数は02年ソルトレークシティー五輪が2(銀、銅)、06年トリノ五輪が1(金)と不振が続く。果たして、バンクーバーで復活できるのか。日本が得意とする、あるいは長い伝統を持つ競技・種目における、強化の取り組みを追う。=つづく

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 ◇過去の五輪でのメダル獲得◇

    開催地        成績 氏名

92年 アルベールビル 女子 銀  伊藤みどり

06年 トリノ     女子 金  荒川静香

毎日新聞 2009年1月20日 東京朝刊

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