【 蛸 グ ラ フ 】
八方手詰まり。
 



ぬーん。
コブリアワセ後編シナリオ難航中。
もともと一本の話を前後編に分けたのですんなり行くだろうと思ったのですが
甘うございました。
見直すとあれやこれやと煮詰めるべきところが増えてきて…。

作画作業と違ってお話作りの途中経過は眼に見える形になりにくいので
傍から見れば無気力にダベってるのとまったく区別がつかないのが悲しいところ。



ドラゴンエイジPure誌掲載の読みきり作品「シンデレラシューズ」の全頁解説第6回です。


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これ以上ないほどに、果てしなくネタばれなので
必ず本編を読んだあとで読みすすめてください。
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■p16,17(p162,163)

19世紀に飛び級制度があったのか分かりませんが
大学生に混じってディベート大会にでて弁舌を戦わせているアマリのシーンです。
スポーツとしてのディベートは全く馴染みがないのでどう描写したらいいか弱りました。
学生ディベートは映画では「サムサッカー」くらいしか覚えがなかったので。
「サムサッカー」のディベート大会は講堂みたいなところに登壇して青年の主張みたいに地味にやってましたが、
アマリやロレンゾの置かれている状況を視覚化したかったので、あんなかんじになりました。
状況の視覚化というのは具体的には

・アマリは聴衆で埋め尽くされた舞台の中心に立ち、周囲の賞賛と期待を背負わされ逃げ場が許されぬこと
・ロレンゾはアマリの最もよき理解者ですが、住む世界は異なっており、
 晴れの舞台ではアマリを囲む聴衆の輪の外に追いやられ、出口の扉へアマリがやってくるのを待つことしかできないでいること

といった点です。


16ページ最下段のアマリは4ページ目のパーティ時のアマリと相似構図で男女の差異を強調させる狙いだったんですが
16ページのアマリには装飾も何も背負わせてないのでいまいち効果があがってないですね。
4ページの様式的なモザイクタイルは16pにもってきて、4pは花か蝶(開花とか変身をあらわすもの)をあしらった装飾にすれば良かったかもなあ、と今思いました。


前に少し触れたとおり、演説の内容はアメリカをそのまま火星で読み替えたような形ですが
英国はアメリカ独立を経験してからすぐに国のアイデンティティや植民地経営のありかたについて考え方をかえているようなので
”19世紀末の進歩的言説”としてはこれはどうなんでしょうかねー・・・。
語られるモチーフをストーリー上でいかに機能させるかに腐心して
歴史考証的にどうかとか考えてなかったです。毎度いい加減ですみません。

独立云々の台詞はストーリーとは関係ないようにも見えますが、
英国から独立した米国の成り立ちの説明は
”かつて一つの心と体を分かち合った人間が、今は二つの心身に引き裂かれている”の比喩表現で
なぜ人間はパートナーを求めるのか?という愛の起源を説明するモチーフが織り込まれています。


後で触れるプラトンの「饗宴」の中の一説でもっと直接的に説明されますが
冒頭の”ひとそろいの靴ほど恵まれているものはない”から始まって
繰り返しこの作品の中で立ち現れる重要なモチーフとなっています。


■p18(p164)

聴衆の拍手にオーバーラップする形で父親が登場するシーン。
もともとは夕食のテーブルで父子が相対する別シーン扱いだったのですが
感情移入のテンションを途切れさせないよう、シーンの切り替えを削りましょうということで繋げることにしました。

個人的には”父親の食卓の前にはローストされた獣肉と血の色をした酒、男根を思わせる大会優勝トロフィーが供えられている”
というイメージに未練があったのですが、シーン切り替えで感情移入がぶつ切れになっては意味がないので、やむなしの判断です。

人物描写としての食事シーンには思うところがたくさんあるのですが、また後で触れることにします。

ローマを引き合いに出しているのは、エドワードギボンの「ローマ帝国衰亡史」が二十世紀初頭まで広く愛読された教養書であったことを踏まえています。
アメリカ独立にともなう最初の衰退をローマ帝国の歴史に重ね合わすことは当時ごく自然なことでした。


■p19(p165)

独立の理想を唱えて食い下がるアマリと
海千山千のリアリストな大人として社会常識をぶってみせる父。
ネクタイを誇らしげに締める父親の姿は、17ページで喝采の中苦しげに喉元を緩めるアマリとの対比。

実際の経済支配には軍事力の後ろ盾とか比較優位の戦略とかがいるんでしょうけど、そういうマンガではないのでサラリと流してください・・・。
政治経済にかこつけているだけで、何てことはない反抗期の息子と父親の会話です。

終盤で親子の絆(一つの心と体)が壊れ、自立して別の道を歩むことになる予兆がここで現れています。

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