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社説:公務員制度改革 「天下り根絶」の裏付けを示せ

 混乱の中の決定である。政府は国家公務員制度改革のスケジュールである工程表と、懸案だった内閣人事・行政管理局の組織の概要を決めた。

 人事管理の一元化を支える人事局への権限配分に人事院が反発し、合意を得ないままの見切り発車となった。人事院の対応は硬直的に過ぎ、理解できない。政府は早期に収拾を図らねばならない。

 一方で、工程表が掲げた「天下りの根絶」が十分に裏付けられたとは言いがたい。新たな人事体系の具体化を急ぐべきである。

 制度改革は、縦割り行政の打破に向け昨年成立した国家公務員制度改革基本法に基づく。焦点となったのは、内閣官房に新設される人事局への権限配分だ。人事院は各省の給与等級に応じた定数を決める権限や、職員の任用、試験、研修に関する企画立案を移管することに反発、谷公士総裁を筆頭に強く抵抗した。

 人事院は、定数を決める権限は国家公務員が労働基本権を制約される代償措置として与えられていると主張する。ならば、検討中である国家公務員への労働協約締結権の付与などと合わせ、権限を移管することも一法ではないか。

 また、試験などの企画立案は必ずしも人事院のみが担い得るわけではあるまい。人事の一元管理を進めるうえで、一定の機能を移すことは避けられない。一般職公務員の中立・公正の維持を損なわない方策は別途、講じるべきだ。

 今回、人事局に権限と機能の集中を図ったことは賛成だ。だが、各省庁から出向した職員が実務を仕切るようでは、官僚主導を逆に強化しかねない。局長、スタッフへの民間人起用は真剣な検討に値しよう。

 一方で、さらに踏み込むべきは、天下りへの対処だ。定年延長に加え、定年を待たずにキャリア官僚が退職する慣行の是正、再任用制度の創設など人事体系を見直す方向性は理解できる。しかし「根絶」を掲げるのであれば、あっせんを一元化するために発足させた「官民人材交流センター」の将来的廃止に踏み込むことがやはり筋だろう。

 公務員改革へ熱意が見えなかった麻生太郎首相の姿勢にも変化が見えつつある。官僚OBが天下りを繰り返す「渡り」を認めない方針を表明、天下りや「渡り」の各省によるあっせんの廃止を年内に前倒しする政令制定にも踏み込んだ。与野党から「官僚寄り」との批判が出たことを意識しての転身だとしても、消極姿勢を改めるのであれば前進だ。

 民主党も、与党とともに基本法を成立させた責任がある。単純に工程表に反対するだけでは国民の理解は得られまい。政府案に同調しないのであれば、同党が掲げる制度改革像を早急に具体化してほしい。そして、来る衆院選で構想を競うべきである。

毎日新聞 2009年2月4日 東京朝刊

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