麻生太郎首相の施政方針演説など政府四演説に対する各党の代表質問が終了した。強まる与野党の対決姿勢の一方で課題解決への論議は深まらず、消化不良との印象がぬぐえない。
今回の代表質問は、深刻化する経済危機への対策を中心にした実りある審議とともに、迫る次期衆院選の争点と日本の将来像を国民の前に示す機会だったが、期待は裏切られた。
衆院で、民主党は鳩山由紀夫幹事長が登壇、消費税増税問題など与党内で意見が分かれる問題を中心に麻生首相と与党の考えをただした。さらには、統一会派を組む無所属の田中真紀子元外相も起用して首相に退陣勧告や早期の衆院解散・総選挙を迫る集中砲火を浴びせる戦術に出た。鳩山氏が、民主党の掲げる政策なども示しながら質問したのは評価できよう。
参院では、自民党内からも厳しい質問が出された。尾辻秀久参院議員会長が、小泉構造改革を真っ向から否定し、「経済財政諮問会議と規制改革会議の廃止を」などと迫った。
しかし、質問戦は全般的に与野党の対立を示すことに終始した感じがする。麻生首相も、与党内調整の微妙な問題や自らの発言のぶれを抱え、官僚の用意した答弁メモを棒読みする安全運転に徹し、盛り上がりを欠いた。目を引いたのは官僚OBが再就職を繰り返す「渡り」の全面禁止を表明したくらいだが、これもあっせんを容認する政令は残すという。抜け道が懸念される。撤回すべきだろう。
「百年に一度」といわれる経済危機をはじめ緊急を要する課題が山積する中で、何より大切なのは有効な手だての迅速な実施である。与野党が論議を通して共通する施策があれば、互いに歩み寄り早急に施策にまとめ取り組んでいくことだ。だが、与野党の非難合戦や、かたくなな答弁が目立った質問戦からは、その姿勢はうかがえない。
一方で大きく食い違う問題は、争点を明確にして国民の審判を受けることだ。この点で民主党の小沢一郎代表が代表質問に立たなかったのは残念だった。厳しい状況の中で国民は、日々の生活や日本の将来をどの政権に託すかの判断材料を求めている。次期衆院選で政権を得るには、具体的な政策と財源の裏付けを先頭に立って明確に示していくべきであろう。
国会審議は舞台を衆院予算委員会に移し、論議が本格化していく。党首討論を積極的に行い、丁々発止の聞き応えある論戦を求めたい。
大麻を所持していたとして、大麻取締法違反の現行犯で逮捕された大相撲の十両力士、若麒麟真一容疑者に対し、日本相撲協会は理事会を開き解雇処分とすることを決めた。師匠の尾車親方は委員から平年寄へ二階級の降格処分になった。
今年の初場所は朝青龍の劇的な復活優勝で盛り上がった。その余韻に冷や水を浴びせかけるような事件といえる。
さらに昨年夏のロシア出身力士による大麻汚染問題に揺れる角界にとって、信頼回復を目指していた中で起きた不祥事である。あきれると同時に、残念としか言いようがない。
若麒麟容疑者は師匠を通し、相撲協会に引退届を提出していた。しかし、これを受理してしまうと協会独自の処分ができないため引退届を保留し、理事会でロシア出身力士三人と同様の解雇処分にした。
これで一件落着といかないのは言うまでもない。角界の大麻汚染問題で日本人力士が逮捕されたのは初めてである。外国人力士の場合、言葉や文化の違いなどで指導の難しさが指摘される。だが、若麒麟容疑者は日本人力士として約十年も修業を積んできたベテランだ。
今回の事件で、日本人力士にも大麻汚染が広がっている疑いが浮上した。角界は事態をより重く受け止める必要がある。
再生に向けては、これまでの取り組みを抜本的に見直し、一から出直すぐらいの気構えが求められる。具体的には、力士死亡問題を受け相撲協会に設けられた再発防止検討委員会の対応が十分なのか検証することから始めてもらいたい。
とにかく力士教育の徹底が重要だが、規律の緩みはモラルに訴えるだけでは限界があろう。薬物検査の厳格化なども検討すべきである。
(2009年2月3日掲載)