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患者が望む “死”は認められるか。

2009年2月3日 11:30

体の筋肉が動かなくなる神経の病気「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を患う68歳の男性が、自然な“死”を求める要望書をかかりつけの病院に提出した。病院では1年間にわたって「生と死」をめぐる議論が行われ、倫理委員会は「患者さんの意志を尊重すべき」という“画期的”な判断を示した。


2日のNHK 『クローズアップ現代』で紹介された、千葉県で暮らす照川貞喜さん(68)。彼が患う「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という難病は、10万人に2人程度が発症するといわれ、運動ニューロンと呼ばれる「神経細胞」が侵される為に筋肉への信号が伝わらなくなる病気。
手や足の筋肉が麻痺して動きにくくなり、やがて筋肉がやせ細ってくる。日常生活には介護を要し、病気が進行すると呼吸障害など生命の危険にさらされてしまう。
現在、原因もはっきり解明されておらず、有効な治療法もない。

元警察官であった照川さんは、49歳で発症し、長年人工呼吸器を装着している。発病後も前向きな生活を送り、「ALSの認知」の為に各地で公演活動も行なった。病気の症状についての著書もある。

近年、両手両足も含め麻痺が全身に進行した照川さんは、“片頬”の筋肉だけを動かし“自然な死”を望む「要望書」を作成した。
「私の病状が重篤になったら、人工呼吸器を外してください。」

やがて、麻痺で顔の筋肉も全て動かなくなったら、まぶたで目が覆われて「見ること」もできなくなる。“意識”のある状態で、「真っ暗」な海の底に沈んでしまうような恐怖と戦わなければならない。
照川さんは“意志疎通”ができなくなった時点が自分の死と考える。
「要望書」にはご家族5人のサインもある。

今回の判断で病院側は、照川さんの気持ちを受け取った形になった。
しかし、現行法では呼吸器を外すと医師が自殺幇助(ほうじょ)罪等に問われる可能性があり、波紋が広がっている。
今すぐ人工呼吸器を外すのでは無い。
あくまでも“その日”(“意志疎通”ができなくなった時点)が訪れるまでは「精一杯生きたい。」それが照川さんのモットーだ。

自ら“自命を縮める”という選択をどう受け止めるのか。
もし照川さんが、自分や家族だったら、海の底のような「生」を受け入れるだろうか。

患者が望む「命の選択」を社会が受け止めなければいけない時代になった。照川さんの、かすかに動く強い目が、そう訴えている。「生と死」をめぐる議論はつづく。

(編集部:クリスタルたまき)

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【参照】
 NHK『クローズアップ現代』

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