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波:大相撲・大麻問題 若麒麟容疑者解雇 「師匠は絶対」上下関係に緩み

 尾車親方は、今回の人事異動で新設された「危機管理担当」の委員となる予定だった。協会内でも温厚な人柄と切れ者で通り、武蔵川理事長の補佐役を期待されていた一人だ。

 相次ぐ不祥事への対策を任された尾車親方が、弟子の不始末で足をすくわれるという皮肉な結果に、現在の角界が置かれている状況の難しさが表れている。

 大麻問題で解雇された4力士のうち、3力士には共通点がある。元露鵬は、大鵬親方の定年で娘婿の大嶽部屋へ、元白露山は二十山親方(元大関・北天佑)の死去に伴って兄弟子の北の湖部屋へ移った。そして、若麒麟は押尾川親方(元大関・大麒麟)の定年で尾車部屋に移った一人だ。

 3人はいずれも他部屋からの移籍力士で、それぞれの師匠が自ら勧誘し、育て上げた弟子ではなかった。それも関取になってからの移籍だ。角界では関取になれば一人前。親方から若い衆の育成も任せられ、部屋の中でも師匠からは独立した存在になる。朝青龍と高砂親方の関係が、その象徴だろう。そこに親方自身が育て上げた弟子ではないという要素が加わると、ますます師匠の目は届きにくくなる。「師匠は絶対」という角界がこだわってきた強い上下関係に緩みが出て起きた不祥事ともいえる。

 武蔵川理事長は、こうした風潮にあって、愚直なまでに厳しく弟子を育てることで名高く、それゆえに困難な時期に理事長職を託された。しかし、この日、若麒麟に下した処分は、除名ではなく、「前例」を踏襲したように見える解雇。また、同じ理事会で、昨年の大麻事件で降格処分を受けた間垣、大嶽の両親方を再昇格させた。武蔵川理事長の裁きと人事にしては、切れ味鈍く見える。【上鵜瀬浄】

毎日新聞 2009年2月3日 東京朝刊

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