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近況:『手』(文芸春秋)を刊行した、山崎ナオコーラさん(作家)

 ◇日本の「ロリコン文化」を批評

 「日本のロリコン文化を批評する新しいファザコン小説が誕生」

 自らの新作にキャッチコピーをつけてみせた。『手』は、ちょうど1年前に続いて3度目の芥川賞候補作。惜しくも選に漏れたが、作品は社会批評に挑んだ意欲作になった。

 『手』は、25歳の女性の視点から、付き合いを重ねているおじさんの姿をこっけいに描き出す。主人公が漏らす辛らつな本音やおじさんを愛(め)でる態度。過度に若い女性や少女を特別扱いする日本社会の「ロリコン文化」への批評でもある。

 「ジェンダーに対する敏感さが私の得意分野。日本のロリコンさは異常だと思う」

 04年「人のセックスを笑うな」で文芸賞を受賞した。約1年後に会社を辞め、作家業に専念している。原稿はまず手で書いてから、パソコンですべて打ち直す。「魅力のない一文が絶対にない文章を書きたい」。影響を受けた作家として真っ先に谷崎潤一郎を挙げた。

 ライフワークは、書くことも含めた本作り。自著が書店に並ぶまでの一連の作業に生きる喜びを感じるという。「生きにくいと思っていた10代、本のおかげで生き抜くことができた」。自身にとっての本の存在の大きさを強調しながら、「書きたいことがいっぱいあって、全然追いついていない感じがします」と語った。【棚部秀行】

毎日新聞 2009年2月2日 東京夕刊

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