山梨県韮崎市立韮崎東中2年、河西正悟君(14)が、考古学への情熱のあまり、自宅庭に独力で古代の竪穴式住居を造った。「あれはいったい何?」と来客を驚嘆させるなど、近所ではちょっとした「観光名所」となっている。
着工は07年夏。本で調べたり、県立考古博物館職員らの助言を得て裏山で切り出した竹で骨組みを造り、近所で譲り受けた稲わらを載せた。一度は崩れたが、農家のおばあさんの助言でふき替えて改良。試行錯誤しながら休日に作業を続け、08年春に高さ約2.5メートル、直径約4メートルの住居が完成した。
昨年10月には念願の一泊。自前の火おこし器で炭火をおこし、シイタケでだしを取る縄文時代のスープも作った。わらの上に寝転がり、火を見つめて古代へ思いをはせる。「気持ちが和みました」
考古学熱に火がついたのは小学4年のとき。テレビで近所に遺跡があることを知った。本で調べるだけでは飽きたらず、考古博物館の体験講座で火おこし器や土器など、古代道具の作り方を身につけた。
「勉強するほど新しい疑問がわく。将来は考古学者になりたい」。バスケットボール部に所属する普通の中学生だが、語り口は熱い。住居造りの経緯をまとめたリポートは今年1月、考古博物館のコンテストで最優秀賞に輝いた。
次の目標は古代人の服を作って数週間、この住居で暮らすこと。「衣食住すべてで古代人の気分を味わってみたい」。公務員の父慶仁さん(46)は「興味をもったらとことん取り組む子です」と目を細めている。【小林悠太】
【ことば】竪穴式住居 縄文時代から奈良時代にかけての日本人の一般的住居。地面を数十センチ掘り下げ、その上に屋根をかけた半地下式の家。円形、方形などがあり、直径または一辺5~6メートルが平均的。
毎日新聞 2009年2月2日 19時00分(最終更新 2月3日 8時18分)