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- 岩田
- では、ここから『うごくメモ帳』の話に入りましょう。
教科書のはじっこに描くパラパラマンガのようなものと、
小田部さんがこれまでにされてきたようなことは、
ある意味で対極にあるとも言えるし、
ある意味で原点は同じとも言えるんですけど、
小田部さんに『うごメモ』を見せようと思ったときに
小泉さんはどう思ったんですか?
永年の師匠と弟子の関係からすると、
元気よく見せにいけたのか、
それとも恐る恐るですか?
- 小泉
- 小田部さんだったら
きっとおもしろがってくれるだろうと思っていました。
最初に説明するときに
絵を動かしたいんですと言えば、
小田部さんはわかってくださると思っていたので、
けっこう胸を張っていきました。
- 小田部
- 僕も話を聞いたときは、
「おもしろいねえ、こんなこともできるの」みたいな感じで。
- 小泉
- 内心はドキドキでしたけど(笑)。
- 岩田
- 小田部さん、
永年つきあってきた任天堂という会社が、
ある意味、アニメーションの原点
とも言えるようなものを突然つくって、
ニンテンドーDSiというゲーム機を買った人に、
無料で提供することに対してどう感じましたか?
- 小田部
- え?
これタダなんですか?
それは僕、知らなかったなあ。
ああ、そうなんだ、それはすごいことだなあ。
僕らの時代はね、
スクリーンで動きが見られるようになるまで、
ものすごく時間がかかったんです。
- 岩田
- はい。
- 小田部
- かつては絵を1枚1枚描いて、
パラパラやるだいたいの速度を覚えて、
手で動きを確認していたんです。
でも、手でやるから、当然ズレがあるんですね。
もちろんいまはコンピュータが導入されて、
ちゃんと実写のタイミングで見られるんですけど、
『うごメモ』のようにこんなに手軽に、
しかも何十フレームとか、コマの設定もできて・・・。
アニメーションを知っている小泉さんだからこそ、
こういうものがつくれたんだなあって。
- 小泉
- それは、小田部さんにしごかれたからですよ(笑)。
小田部さんが原画を描かれて、わたしが清刷して、
それを小田部さんがチェックされていたんですけど、
その線がめちゃくちゃキレイなんです。
もう、線だけで成り立つようなものを描かれるので、
線と動きを見せるものだけで
作品が完成するんじゃないかとその頃から思っていました。
- 岩田
- なるほど。
- 小泉
- それと日本のアニメーションって、
キレイな絵にくわえて動きのすごさというのがあって、
小田部さんはじめ、当時の東映動画の黎明期に関わられた
方々が発明された動き、デフォルメーションが
すごく魅力的でしたから、
あらためて今、掘り出したいという気持ちもあります。
- 小田部
- ただ、自由にものを描いていて
これがあったらよかったのになあと
思ったことがありました。
たまにきずではないけれど。
- 小泉
- え、例えばどんなものですか?
- 小田部
- 下書きツールがあればなあと。
女の子がスキップする絵を描きたいなぁと思って、
顔をきれいに仕上げるために、
下書きしたかったんだけど
そのためのツールがなくって。
グレーで、すっと下書きをすれば、
そのあと正確に描けるでしょう。
- 岩田
- 大丈夫です。
それは『うごくメモ帳』バージョン2で
実現することになっていますから。
- 小泉
- バージョン2では、レイヤー機能を用意しますので、
まずレイヤーでラフを描いていただいて、
その上の次のレイヤーを使って
仕上げていただければいいんです。
- 小田部
- おお、できるのか。それはうれしいなあ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 小田部
- そこまでちゃんと考えている。すごいなあ。
- 小泉
- 最初は必要なものだけをお見せして、
後からこんな機能がほしいなというタイミングで
バージョン2を出したいと思っているんです。
いっぺんにいろんな機能が使えるようにして、
お客さんにお渡ししてしまうと、
すごく混乱してしまうので。
それに、最低限必要な機能は
文字で書いて説明しているんですけど、
それ以外のものはすべてアイコンだけにしています。
そのアイコンを気になった人が
「これ何だ?」みたいにつついていただいて、
いろんな人に教え合うようなことが
起こるといいなと思っています。
- 岩田
- 小泉さんが小田部さんに見せたとき、
いちばん強調したかったことは何でした?
- 小泉
- やっぱり、手軽に描けるところですね。
描いたその場で動かすということが、
2ステップでできると。
タッチペンで描けるということも、
絶対に他にはないなと思います。
- 岩田
- 小田部さん、描いたらどんどん動いて、
しかもそれをすぐに確認できるようなことは、
すごいことなんですか?
- 小田部
- そりゃあすごいですよ。
だってふつう、プロのアニメーターというと、
アイデアの断片とか思いつきとかが出てきても、
それをすぐに確認できるわけじゃないですよね。
それなりの設備が必要になるし。
でも『うごメモ』だと、あんな手軽に描けるでしょ。
- 宮本
- しかも、どこでも描けるというのがいいですよね。
そもそも、教科書のはじっこにラクガキをしていたのは、
授業中にたっぷり時間があったからだと思うんです。
- 岩田
- だから、宮本さん、
いまでも会議中に
似顔絵ばかり描いているんですね。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- メモをとるフリをして、
お客さんの似顔絵とか、よく描いてるでしょう。
まあ、それは記録の意味もあるんでしょうけど。
- 宮本
- 会った人を忘れたら失礼なので。
でも、最近は描いてないなあ。
- 小泉
- これからは『うごメモ』で描いてください。
- 宮本
- そうやね。
- 一同
- (笑)
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