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医学部教育見直しの議論開始―文科省

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 医学生の臨床研修を含めた教育カリキュラムの内容を見直すことを目的に設置された文部科学省の「医学教育カリキュラム検討会」の初会合が2月2日、同省内で開かれた。現在、同省と厚生労働省が合同で開いている「臨床研修制度のあり方に関する検討会」で、医学教育カリキュラムや国家試験の内容、医学生の医行為の取り扱いなどの見直しが提案されたことを受け、詳細を詰めるために開催されたもので、座長には荒川正昭氏(新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター長)を選んだ。医学教育カリキュラム検討会は今回見直すカリキュラムを2010年度から開始するとしており、年度内に報告書をまとめる。この日は、今後の議論の方向性などについて委員が自由に議論した。

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 臨床研修をはじめとする医師養成の在り方をめぐっては、医学部の定員削減の閣議決定の見直しが決まり、医師の養成数を将来的に1.5倍にまで増やすことなどを求める報告書が厚労省でまとまったことを受け、医師養成の在り方の抜本的な見直しを求める声が高まった。これを受け、現在両省による合同開催の「臨床研修制度のあり方に関する検討会」が開かれ、これまでに5回の議論を重ねている。この日も、医学教育カリキュラム検討会が開かれる直前まで臨床研修検討会が同じ省内で開かれており、この中で示された「まとめの骨子(たたき台)概要」に、▽大学での教養試験の合格水準の標準化▽医学教育のカリキュラムの見直し▽医学生の医行為の取り扱いや国家試験の内容の見直し▽大学病院の医師派遣機能の再構築―が盛り込まれていた。
 医学教育カリキュラム検討会は、その詳細について議論するために開催された。検討事項としては、▽臨床研修の見直しを踏まえた医学教育の改善・充実方策▽医師として必要な臨床能力の確実な習得を確保する方策▽地域や診療科に必要な医師を養成・確保するための方策―を挙げている。
 臨床研修検討会での検討内容が10年度から始まることに歩調を合わせ、医学教育カリキュラムも同時に開始することを目標にしているが、約2か月でどこまで踏み込んだ議論ができるかは不透明だ。加えて、厚労省内の関係者によると、この会議の開催については、文科省側から臨床研修検討会を主導している舛添要一厚労相には知らされていないなど、「勇み足」の開催になっていることを指摘する声もある。

 医学教育カリキュラム検討会の委員には、臨床研修検討会に参加している委員のほか、06年度に文科省が開催した「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」の委員もいる。

 委員からは、医学教育モデル・コア・カリキュラムや、臨床実習前に実施している教養試験の在り方に対する疑問など、さまざまな意見が出た。

 飯沼雅朗委員(日本医師会常任理事)は、医学生の医行為に対する患者の抵抗感をなくしていくことが重要と主張し、「社会の理解が大事」と強調した。辻本好子委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、患者からの相談を受けていると、研修医に担当されることに不安を感じている声があるとして、「研修医には指導医がいるということをきちんと伝えれば、小さな安心は得られている。研修病院すら患者に理解できるよう情報を伝えていない」と述べ、患者が安心できるような情報伝達を求めた。

 北村聖委員(東大医学教育国際協力研究センター教授)は、「日本国内ですべて同じ医学教育である必要はなく、80ある大学や医科大にそれぞれの特色があってよいと思う。地域に根差した大学や、世界と伍して戦っていくような大学があっていい」と、各大学が基本的な医学教育を充実させた上で、特色を打ち出していく必要性を強調した。

 名川弘一委員(東大医学系研究科教授)は、「医療は社会と密接にかかわっている」と主張し、偏差値以外の要素も考慮できる入学制度を考えていくべきとした。辻本委員も「モチベーションが高い人をどう選ぶかを真剣に考えてほしい」と後押しした。

 田中雄二郎委員(東京医科歯科大附属病院総合診療部長)は、10年度から新しいカリキュラムが始まるとされていることを指摘した上で、「コア・カリキュラムは1年生からが対象。どこを対象にこの議論をしていくのか」と述べた。

 伴信太郎委員(日本医学教育学会会長)は、「学生の人数を増やしながらクオリティーを保つには、人的資源の確保が大事だが、ただ人数が増えるだけではいけない」と述べ、教官の質を確保すべきと主張した。

 「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」のメンバーだった水田祥代委員(九大副学長)は、「06年度にこれ以上ないというほど議論した内容がまた上がってきているということは、全然進んでいないということで、『えっ』という気がしないでもない」と苦言を呈した。その上で、医師の教育内容については、各論ではさまざまな意見が出るものとして、「医師たるものがどうあるべきかという教養を、6年の教育の中で入れてほしい」と主張した。医師国家試験については内容が難し過ぎるとして、最低限の必要な知識だけを盛り込むべきとした。

 
 検討会を傍聴していた東大医学部3年の竹内麻里子さんは会合終了後、「聞きながら、なぜこの人たちがわたしたちの教育を勝手に決めているのだろうと思った。いい医師を育てるということを共通の目標として、妥協案を探りながら議論していくのが筋ではないかと思うのだが、いろいろ意見が出ていて、誰のための教育なのか、議論の共通目標が見えなかった。それぞれの立場からの意見なのだろうし、省庁の会議だから仕方ないとは思うが」と話していた。


更新:2009/02/02 23:11   キャリアブレイン

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