2009年2月2日(月曜日)
第177回 資本主義の行方(3)
しばらくぶりなので、資本主義の行方はどこまでお話しましたっけ。
ああ、そうそう、デトロイトスリーの話でしたナ。
ビッグスリーがデトロイトスリーになったという。
なぜビッグスリーにこだわるかといいますと、資本主義そのものなのですナ。
今年中に倒産するか、合併するか、いずれにせよ、近代工業の終焉=資本主義の終焉というわけです。
資本主義そのものが消滅するわけではありませんゾ。 農本主義が資本主義になっても、農業がなくなったわけではありません。 同じように資本主義が他の形態に変わっても、工業がなくなるわけではありません。 経済全体にしめる比率が小さくなるだけの話です。 農業に従事する人はかつて8割を占めていたわけです。 今では1割にも満たない。 工業に従事する人も、いずれ1割か2割程度になるわけです。 海外移転に伴う製造工場の空洞化という問題ではありません。 ロボットが発達して、人間が製造現場で働く機会が少なくなるというだけのことです。
正社員、派遣社員、アルバイト、パート、こうした雇用形態も変わらざるを得ない。
そうした問題を探求していこうと言うのが、“資本主義の行方”なのです。
さてデトロイト3の話に戻りましょう。
ちょうど100年ほど前の、1908年、舞台はニューヨーク。
その年、のちのクライスラー、GM、フォードの創業者ともいえる3人が一堂に会する場面がありました。
それは、J・P・モルガンによる自動車産業の大同合併の会議です。 その音頭取りをしたのが、アメリカ自動車産業草創期の立役者ベン=ブリスコでした。 ブリスコは技術の将来性を見抜く、着眼力を持っていました。 しかしあれこれ手を出すため、常に資金不足で、モルガン商会に資金面の後ろ盾になってもらうことにしました。
金融、鉄道に絶大な力を持っていたモルガンは、中小企業の連立していた自動車業界をたばねて、成長産業として育ちつつあった自動車の価格支配権をとることを狙っていたのです。
当時、フォードは特許紛争を抱えていて、会社を一旦売却し、新規に出直してもよいと考えていましたので、300万ドルのキャッシュで譲渡する旨を提案しましたが、モルガン側は株式交換による1000万ドルの案を譲らなかったのでした。 先々の1000万ドルより、どうしても現金の欲しかったフォードはこの合併案を蹴り、デュラントもウォール街で株式の高値売りぬけを画策したため、モルガンとの関係は気まずくなりました。
結局、大同合併案は破棄されましたが、その後の3社の生き方は資本主義を象徴するものとなります。
ビリー=デュラントはビュイックモーターを中核として、企業買収による拡大に向かった。 ビュイック、オールズモビル、キャデラックのほか、ミシガン州に点在していた自動車部品関連企業22社を買収していった。 当初インターナショナル・モーターズと称していたが、ゼネラル・モーターズのほうが語呂がよいということで、GMにおちついた。 この拡大戦略は、成長期はよいが、市場が成熟して、不景気になると巨体ゆえに脆弱さをさらけだす。 経営不振に陥ったデュラントは、ピエール=デュポンの資本参加を受けて、たちなおるが、デュラント自身は経営支配権を失ってGMを去ることになった。
ヘンリー=フォードは生産革命をめざし、ユーザーにいかに安く製品を供給するかという課題に挑んだ。
シカゴの食肉工場の製造ラインにヒントを得た、“ベルトコンベア式”生産システムを採用して、自動車の価格を驚異的に下げていった。 1909年に950ドルだったT型フォードは、1916年には360ドルに値下がりした。 この単一車種による部品の標準化、ベルトラインによる作業の分業化は製造工場のモデルとして他業種にも影響をあたえた。 また1914年、当時1日2ドルの賃金をいきなり5ドルに引き上げて産業界に衝撃を与えたのであった。
フォードは自伝(藁のハンドル、竹村健一訳)の中にこう書いている。
「賃金の増加は事業の増大によってもたらされ、また事業の増大は大衆に対して価格を下げることなしには不可能だ、ということになる。
労働者は、売り手である以上に買い手である。 車輪の回転に弾みをつけるのは買い手側である。 商品は一般の人々に買いやすいようにすることである。 それが仕事を作り、賃金を生む。 それが事業拡大と、より大きなサービスのための余剰を生むのだ。」
ベン=ブリスコは高性能の車作りを目指した。 天才技術者マックスウェルのエンジンを買い取り、マックスウェル・ブリスコモーターズを設立したあと、モルガンの資本をバックに販売のGM、大衆車のフォードとは違った路線を進んだ。 のちにGMを飛び出したウォルター=クライスラーがくわわり、ブリスコ退陣のあとクライスラー社となった。
消費者の声を聞いて、大衆のための足となろうとしたフォード、利益追求と拡大路線のGM、技術志向のクライスラーと資本主義型工業の3種類の典型が創業の精神の中に凝縮されている。
(つづく)
2月2日の売買の基準となる価格は次のとおり。
(価格は先物ラージ)
日経先物大引値 7940円
TOPIX引値 790円
①N/T=10.05
日経225中源値 8130円
TOPIX中源値 807円
②N/T=10.07
シカゴ終値 7895円
高安標準偏差 7870円~
7750円
同じテーマの最新記事
- 運 01月30日
- 将棋 01月29日
- 歯痛 01月28日