自動車などの製造現場で大規模な人員削減が相次ぐ中で、外食チェーン各社が採用活動を強化している。長時間勤務などが敬遠され人手不足が続いていたが、各社は「不況はいい人材を採るチャンス」と、積極的に募集している。ただ、応募者数が予想に達しない企業もあり、人材確保には一層の工夫が必要のようだ。【森禎行】
定食屋チェーン大戸屋(東京都新宿区)は「外食業界は好景気時には人材が集まりにくい」(広報担当者)として、解雇された派遣社員などを対象に店長候補の正社員を最大100人採用する。居酒屋「甘太郎」を展開するコロワイド(横浜市)も、面接を週末も実施するなど採用機会を広げ、失職者や内定を取り消された学生の獲得を目指す。
居酒屋チェーン「白木屋」を展開するモンテローザ(東京都武蔵野市)では、単身者向け寮も用意し、正社員最大500人の大量採用を掲げた。既に1000人以上の応募があり、これまでに300人を採用した。
ラーメンチェーンの幸楽苑(福島県郡山市)は、例年の3倍にあたる正社員約150人を3月末までに中途採用するが、1月中旬現在で面接を受けた人は約30人にとどまり、「応募者は予想をかなり下回った。全国転勤がある条件が難点かもしれない」と分析する。
外食業界は長時間勤務などの課題のほか「接客が立ちっぱなしであったり、客の注文にこまめに対応しなくてはならず、自分のペースで仕事ができない」(大手チェーン)ことがネックになり、敬遠されがちだ。採用中の会社からは「応募者の中には、会社が求める接客水準に達していない人も多い」(同)との声も。
第一生命経済研究所の鈴木将之副主任エコノミストは「仕事内容や雇用環境について、雇う側と雇われる側との要望のずれによる『需給ミスマッチ』は依然としてある」と指摘する。
毎日新聞 2009年2月2日 東京夕刊