大阪府の橋下徹知事が府庁移転をめざす55階建ての「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC)が、00年改正の建築基準法の耐震基準を満たしていなかったことが府の調査でわかった。東南海・南海地震を想定した長周期地震動でも、建物損傷の恐れがあるとしており、今後の府庁移転の議論に影響を与える可能性がある。
府によると、WTCの強度を解析したところ、90年の設計時は耐震基準は満たしていた。だが、阪神大震災を踏まえた00年の法改正によって、強い地震波を入力すると7〜13階に変形が生じる恐れがあることが判明した。
また、法律上の規制はないが、ゆっくりした揺れが長く続く長周期地震動について、国の指定性能評価機関の基準を当てはめると、7〜16階で変形が生じ、エレベーターシャフト内の機器が損傷する恐れがあるという。
商業ビルとして使う場合、「既存不適格物件」として法的問題はない。ただ、府庁舎は災害時に重要な機能を果たすことから、府の基準で通常の1.5倍の強度が必要とされる。このため、府庁が移転する場合は18億5千万円をかけて耐震補強するという。府は「倒壊の恐れはなく、直接的には建物内部の人間の安全性を損なわない」としている。(春日芳晃、吉浜織恵)