月面上に1年を通して太陽光が当たる地域が存在しないことが国立天文台の研究で初めて明らかになった。月探査衛星「かぐや」のデータを分析した。自転軸の傾きが小さく高い山がある月の表面には、常に日が当たる永久日照地域があると考えられ、そこは太陽光発電を備えた月面基地の有力候補地になると期待されていた。成果は米地球物理学会誌に発表した。
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研究チームは、月の北緯85度以北と南緯85度以南の地域の地形を、かぐやの高度計データを元に再現。2000年1月1日から毎日午前0時の日照を、2000日分にわたって分析した。
その結果、最も日当たりのよい地点の日照率は北極で89%、南極で86%となり、どの地点も影になる時期が存在することが分かった。地球の1年に当てはめると、北極では324日、南極では314日が日に当たる計算になる。1年のうち80%以上、日に当たる場所はクレーターの周縁部に多かった。
一方、常に影になる地域は従来の予測通り、今回の分析でも南北両極ともに存在が確認された。
今回の分析で、永久日照地域の存在は否定されたが、極地は氷が存在する可能性が高いだけに引き続き月面基地の候補になる。野田寛大・国立天文台助教(惑星科学)は「こうした環境要因が分かれば、発電装置や実験施設などの設計に役立つだろう」と話す。【永山悦子】
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