嬉しいクリスマスのご報告

December
25
2008

 今日はクリスマス。そしてまもなく星野アイエヌジー㈱は中間決算をこの年末で迎えることになります。僕は、現在は同社の社員でもなく、また経営にもタッチしていませんが、「WiNDy」という僕が作ったブランドを社員の皆さんが継承してくれて、事業を引き受けてくれたことが今年の僕にとっての何よりのプレゼントでした。現在は、オブザーバー的な役割をさせていただいていますし、そして製品開発やデザインやその他諸々の技術的なアイディアを採用していただき、製品化していただけることに対して感謝の気持ちでいっぱいです。同社の発足以来、そして事業の一部を引き受けていただいて以来、気がかりだったことは、果たして上手く事業が起動に乗るのかと言うことでした。少なくとも経営のノウハウや経験がある僕と違って、同社はまさに一からのスタートをきったわけで、会社経営に関する知識や経験もこれから一つ一つ蓄積しなければなりません。まして、資本や経営実態等まったくの別会社であるにもかかわらず、行政や金融機関からは「ソルダムと同一である」とみなされることも多く、また世間的な風当たりも決して弱くはありませんでした。僕が資金提供できるはずも無く、まして旧ソルダムにはまったく資産は残っていませんから、社長や幹部の皆さんの苦労はいかばかりであったかと思います。そこに追い討ちをかけるようなサブプライムショックが重なり、10月以降はまさに日本経済は危機的な状況へと突入しました。会社立ち上げのプロセスの、ましてや初期段階で消費が急速に冷え込んでしまうという苦難が待ち受けていました。そして現在も回復の兆しを見せるどころか、ますますネガティブな方向へと進んでいるようにも見えます。さらには九十九電機の民事再生申請や為替の大幅変動もあり、まさに自作PC業界にとってはハリケーンの只中へと突入したかのような状況です。僕もそして同社も「これほどまでに神様は試練を与えるのか」と苦虫を噛み潰す思いでした。

 

 僕はオブザーバーとして、同社の社員に対し苦言を呈する機会も多々あります。まずは、人を、幹部を、そして経営者を育てることを第一の目標と考えての行動であり、それが僕の役割であると思います。同社の監査役に無理を言って就任をお願いした松本弁護士とも、「まず人材を育成することこそがすべてではないか」という意見で一致しています。当然のことながら、今の僕には僅かな資金もありませんし、甘んじてその状況を享受しているつもりですから、他に出来ることなどないのです。自分が経営者の立場であっても、今の同社の状況は非常に苦しいだろうし、それは日本中の企業、いや世界中の企業が直面している厳しさなのだろうと思います。政府の緊急経済対策によって中小企業は公的に融資が受けられたりもしますが、この状況では融資は受けないほうがいいような、それほどに状況は切迫していると思います。まして星野アイエヌジー㈱は銀行融資など受けられませんし、受けるつもりもないと。そのような状況で事業の立ち上げが可能なのか、そして運営が可能なのかという大きな課題もありました。

 

 同社の立ち上げ当初から、事業計画の策定に関して渡辺社長や幹部の面々とミーティングを重ね、指導してきました。そうやって作った計画は、サブプライムであっけなく頓挫です。嵐のような状況の中で、計画は頓挫したけれど、最低の目標を決めてそれに向かって頑張ろうと励ましあいました。その目標が「前月対比売上増死守」と言うものでした。本当に僅かな売上でスタートした7月でしたが、困難のなかで事業を再構築しながら売上を伸ばすというのはまさに至難の業です。ましてこの秋口からは経済環境の極度の悪化のなかで売上を伸ばさなくてはなりません。内心は非常に不安であったし、僕も無理なんじゃないかという気持ちもありました。しかし、「納期を厳守すること」、「品質を高めること」を一心不乱に追求すれば、必ずできるはずだという強い気持がありました。それは数年来、何度も挫折を繰り返したWiNDyのテーマでもあったわけです。

 

 事業立ち上げの条件整備と関係者の理解を求めるのに必死で動いた8月、運転資金が不足しバリエーションがそろえられなかった9月、サブプライムショックでウエブアクセスが半減した10月、消費者心理が徹底的に冷え込んでしまった11月、そして年末商戦やクリスマス商戦まで深刻な打撃を受けた12月と、事業立ち上げ環境としてこれ以上最悪な事態はありません。しかしながら、同社は申し合わせた売上目標をことごとく達成したのでした。そして、当月、本日(クリスマス)において、12月の目標をクリアできることが確実になりました。立ち上げ初月から平均して約23%の前月対比売上増となるという嬉しい報告をいただきました。これは、現在の経済状況を考えれば奇跡的といっても過言ではないと思いますし、何よりもWiNDyクラブ会員の皆様のご支援や、WiNDyに対しご理解いただきましたお客様、生産にご協力いただいたお取引先様、そして一致団結して頑張ってくれた同社社員の努力の結果だと思います。僕の立場で非常に僭越ですが、このブログをお読みいただいた皆様に、報告させていただきたいと思います。

 

 そして当月は品質強化月間といたしまして、あらゆる見直しを指示し報告が上がってきています。同時に非常にタイトな年末年始ではありますが、表示納期の厳守を同社にアドバイスするとともに、中期(3ヵ年)事業計画を策定いたしました。また製品開発では新規ALCADIAの進捗状況を確認し、2009年当初からのアドバイスもいたしました。思えばすべてはWiNDyを事業化した初年度に不思議なほど条件が合致しています。売上推移もまたまったく同じといっても過言ではありません。しかしながら、今後の見通しにつきましては決して楽観視しているわけではなく、さらなる状況の変化にも十分に対応してゆける体制を日々研究していますので、できれば初年度の12ヶ月間は「前月比プラス」を維持することを最大の課題としたいと思います。

 

 僕は現在の財産と言えば、知識と経験と、そして製品やデザインの創作意欲がすべてです。いつも原点に戻って「良い製品、面白い製品、画期的な製品」を追求することが非常に大切であることを身に沁みて感じました。ややもすれば、日々の生活にも支障があるほどで、目先の利益にとらわれがちですが、それは結局結実しない徒労となることが多いと思います。次期ALCADIAに関しては、特に画期的な構造を採用しようと思っていますが、それも製品開発に本格的に注力できる環境があってこそです。おかげさまでVIOZONEも徐々に浸透し始めました。キーボードやマウスの殺菌の必要性は、そしてVIOZONEの効果は目に見えないものだけに、製品としての難しさは認識しています。しかし、実態を検証してしまった以上、妥協は許されないと思っています。明らかにキーボード、マウスは細菌やウイルスの感染経路であることを、社会に広めなくてはならないと思っています。

 

 そういうことが、少しずつ実を結ぶのが事業と言うものです。金融バブルで一夜にして大成功などという夢物語はあっけなく破綻してしまいました。そして現在の厳しい経済環境でも諦めず努力すれば必ず活路は開けると思います。いま、自分は、幸か不幸かありとあらゆる経験をこの20年間に積み上げることが出来ました。成功体験もあればもちろん失敗体験もあります。普通では経験し得ないことが数多くあります。星野アイエヌジー㈱にたいする役割と同様に、厳しい局面に立っていらっしゃる中小企業の経営者の方へアドバイスできるような機会を模索しています。たとえどれほど規模が小さくても経営者は孤独なものですし、いざと言うときには全責任を背負わねばならない存在です。営利目的ではなく、心情的な領域や経営技術等あらゆる問題に関して、アドバイスしあえる機会というものは、実際には非常に少ないも。現在、SNS的な方向も含め、構想も含め準備をしています。

 

 私事はさておき、今後も星野アイエヌジー㈱およびWiNDyに対し、皆様のご支援、ご声援を賜ることが出来れば幸いです。そして逆風吹き荒れる世界経済の環境下で、再び確固とした日本のブランドとしての地位を築くことを願って止みません。

 

 

 

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Posted by 有海啓介 | この記事のURL |