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改革の具体像 公立病院苦心

2009年02月01日

総務省が全国の公立病院に3月末までの策定を求めている「改革プラン」への対応に自治体や病院が追われている。プランには、黒字化への数値目標や経営形態の見直しといった、公立病院にとって頭の痛い課題の解決策を盛り込まなければならない。「全国一律に黒字化の目標を強引に押しつけるのはおかしい」と国の姿勢に疑問を投げかける病院もある。(吉村治彦)

 県内には計10の公立病院があるが、県市町村課によると、今月半ばごろまでにプランを策定した自治体はまだないといい、好生館を経営する県も作業を急いでいる。市民病院の民間移譲を決めている武雄市は事務作業をほぼ終えており、伊万里市は15日からプランの案をホームページで公表し、市民から意見を募っている。

 自治体や病院の事務担当者が苦労しているのが、収支改善への見通しとその方策だ。プランには、黒字を達成するための数値目標のほか、経営形態見直しの実施計画を明記する必要がある。

 多久市立病院は、07年度決算で累積赤字が約13億円に上り、県内の市・町立病院で最悪。原田貞美院長は日々の手術をこなしながら、プラン策定にも携わっている。救急など不採算部門の医療を公立病院が切り捨てるわけにもいかず、収益改善策に頭を痛める毎日だ。

 プランには、薬品や機器類などをほかの病院と共同購入してコストを下げる収益改善策を盛り込むことを検討しているが、原田院長は「医師の去就や診療報酬の改定次第で収益は大きく違ってくるので簡単にはいかない。病院の規模や地域性を考えず、一律に黒字目標を立てろというのは少々無理があるのではないか」と訴える。

 内科医不足から午後の診療を一時休止していた小城市民病院は、07年度の経常損益が約1億5千万円の赤字で、病床利用率も県内最低の60・2%だった。プランには、来年度から給食部門を外部委託することを盛り込む予定で、A4判用紙で30〜40ページくらいになる見込みだ。

 昨年4月に就任した尾形徹院長は、病院経営について書かれた本を5冊購入し、診療の合間に勉強している。尾形院長は「職員の雇用にもかかわることなので、外部委託は思い切った決断だった。プラン策定はたいへんだが、病院経営について考えるいい機会になった」と話す。

 外部の経営コンサルタント会社を活用する病院もある。唐津市の市民病院きたはたは、昨年に約100万円を支払って大阪府の業者に経営診断を頼んだ。プランには、リハビリ部門の拡充や非正規スタッフの増率を盛り込む予定という。病院の事務担当者は「自前のプランでは甘くなるので外部の視点を活用した」。

 一方、経営形態の見直しについては、プランに盛り込まない自治体が多くなりそうだ。07年度に約1億3千万円の赤字だった富士大和温泉病院を経営する佐賀市は、昨年6月に副市長や保健福祉部長、院長らでつくる検討委員会を設置してプランを練っているが、経営形態は明記しない方針という。

 同病院の百崎哲也事務長は「『今年度中に見直しを』と言われても、地域病院の再編問題にもかかわってくるテーマなので簡単には決められない。住民や議会への説明も必要で、理解が得られないと明記は無理」と説明している。

 ◇  ◇

【公立病院改革プラン】

 自治体の財政健全化を進めるため、総務省が07年12月にまとめた公立病院改革ガイドラインでプラン策定が明記された。同省は経営改善を促すため、経常収支比率や収益に対する職員給与の比率、病床利用率といった経営指標の数値目標をプランに盛り込むよう求めている。経常収支比率100%以上を前提に、各指標を設定するのが条件になっている。経営形態の見直しについては、今年度中に具体的な計画を記すことが困難な場合、後日に追加することを容認している。

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