《若手記者・スタンフォード留学記 23》アメリカで分かった中国人とのつきあい方(3) - 09/01/28 | 22:47 |
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スタンフォード生活においても、今まで、照れ屋な中国人には会ったことがありません。授業でも、質問を積極的にしますし、ガツガツ本音で議論する傾向にあります。
こうした、日本人にはない大胆さをもった異分子を日本に多く取り込んでいけば、大きな化学反応が起きるはずです。ソフトブレーン会長の宋文洲さんが好例ではないでしょうか。私は、宋さんが、日本人が避けがちなテーマを取り上げ、日本人とは違う角度から意見を述べてくれたことによって、多くの日本人の思考が活性化されたと思います。言論界にもビジネス界にもあと100人くらい宋文洲さんがいてもいいと感じています。
第3に、戦略的思考に長けていて、全般的に思考のスケールがでかい。
中国はそもそも「世界の中心の国」という意味ですから、自国を中心に世界を俯瞰するDNAがあるのかもしれません。アメリカに通じるところがあります。
一方、日本は、いまのところ、国際政治学や国際関係学はもっとも現代の日本人に適正のない学問だなと常々感じます(明治期の日本人は鋭い国際感覚をもっていたので、この弱点は日本の宿命ではないはずです)。
政治でも、ビジネスでも、全体像を頭に叩き込んだ上で、合理的に利害を計算し、明確な戦略の下に動く――こうした日本人が苦手な特性を中国人は備えています。きっと、経営者や金融業は、全般的に、中国人の方が日本人より向いている気がします。
とはいえ、「日本に優秀な中国人は来ないのではないか。一番優秀な学生はアメリカに行くのではないか」という声も強いかと思います。
でも、私の知る範囲では、「日本で働きたい、日本で勉強したい」という友人は思いの外多くいます。たとえば、スタンフォードの都市工学の博士課程にいる友人の一人は、「本当は日本の方が好きだけど、奨学金の関係でスタンフォードを選んだ」と言っていました。
この例に限らず、条件さえよければ、スタンフォードよりも日本の大学を選ぶ中国人もたくさんいるはずです。中国人にとって、日本語は英語より簡単ですし、故郷から近いですし、食事・文化面でも共通点は多くあります。
たとえば、日本の大学の学生を1割ぐらい中国人にして、授業は半分英語にして、日本人と競争させてみてはどうでしょう。英語も日本語もできて、その上、成績も日本人よりいい――そんな中国人学生が回りにたくさんいたら、きっと日本人学生のお尻にも火がつくはずです。そして、日本企業はそうした優秀な中国人留学生を積極的に雇って、中国市場攻略のキーマンに育て上げればいい。
いかに優秀かつ、良い意味で空気の読めない中国人に日本社会で活躍してもらうか――それが、今後の日本繁栄の大きなカギになるのではないでしょうか。
佐々木 紀彦(ささき・のりひこ)
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2007年9月より休職し、現在、スタンフォード大学大学院修士課程で国際政治経済の勉強に日夜奮闘中。
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