米国が深刻な不況に陥っていることがはっきりしてきた。昨年10―12月期の国内総生産(GDP)は前期に比べて年率換算で3.8%も減少した。オバマ新政権は8000億ドル規模の景気対策で経済悪化に歯止めをかけようとしているが、経済再建への道は険しいものになりそうだ。
米国経済は住宅バブルの崩壊、金融危機という段階を経て、消費バブル崩壊の様相を見せつつある。個人消費はこれまで米国経済のけん引役になってきたが、7―9月期から2期連続で年率3%以上の落ち込みとなった。
消費の失速や海外景気の悪化を受けて、企業も投資を一斉に控えている。真っ先に悪化していた住宅投資の下落にも歯止めがかからない。
エコノミストの間では、今年1―3月期も大幅のマイナス成長は避けられないとの見方が多い。需要の落ち込みに生産調整が追いついていないほか、膨らんでいた消費の調整に時間がかかるとみているためだ。
自律的な回復が当分見込めない中で、国民の目はオバマ新政権の下での経済政策の行方に集まっている。
まずはオバマ大統領が示した景気対策を盛り込んだ法案が早期に成立するかがカギを握る。景気対策は中低所得者への減税、道路や橋などのインフラ投資、再生可能エネルギーの活用を促す投資支援策が柱だ。
野党の共和党は「財政支出中心で減税部分が少ない」と新政権の景気対策を批判している。無駄な投資に回らないようなチェックは欠かせないが、景気対策の実現が遅れないようにすることも重要だ。
金融安定化へ向けてどんな対策が打ち出されるかも注目点だ。主要な金融機関の経営が健全化し、金融機能が回復しない限り、経済が本格的に立ち直るのは難しい。市場に安心感をもたらすような包括的な対策を示す必要がある。
効果的な経済対策により米国経済の失速に歯止めが掛かることは日本や世界にとっても重要だ。同時に、自国本位の政策に陥らないようにすることも求めたい。下院が先週採決した景気対策の法案には米国製の鉄鋼の購入を義務付ける条項が盛り込まれている。新政権はこうした保護主義的な措置は排除すべきである。