02年2月から始まった景気拡大は07年10月にピークを打ったことが確定した。景気拡大期間は69カ月となり、いざなぎ景気の57カ月を1年上回った。翌月からの景気後退は今年1月で1年3カ月になる。
政府は昨年夏以降、月例経済報告で景気停滞から景気悪化へ徐々に基調判断を下方修正してきた。1月は「景気は、急速に悪化している」と、従来にない表現を使った。
これまでの経過をみると、07年10月を景気の山と判断した内閣府の景気動向指数研究会が指摘しているように、生産や輸出、企業業績は07年末から08年初めにかけて、悪化したり弱含んでいた。また、米国のサブプライム住宅ローン問題も深刻化していた。しかし、政府は景気は踊り場という程度で逃げた。判断が甘かったということだ。
景気の山や谷の日付は生産や消費などの経済指標の動向を月々の不規則な変動をならした上で確定するため、やや時間がかかる。ただ、適切な経済政策を講じていくためには、それに先立って、政府がその時々の経済動向を迅速に判断していかなければならない。
政府の09年度経済見通しによると実質成長率は0%である。しかし、日本銀行の政策委員の見通しの中央値はマイナス2%、28日に国際通貨基金が修正した09暦年の予測はマイナス2・6%である。
30日に発表された昨年12月の鉱工業生産指数は前月比9・6%の低下で、1年前との比較では20%の落ち込みとなった。家計調査の消費支出も前年同月比4・6%減となった。こうした動向からみても、企業部門、家計部門ともにしばらくは不振が続くことは間違いなさそうだ。景気の底は見えてこないのである。
なかでも、気掛かりなのは、これまで景気が大きく崩れることを阻止してきた個人消費も、国内総生産(GDP)を押し下げる方向に働きそうなことだ。もともと、個人消費の伸びは年率2%程度と盛り上がりに欠けていた。景気拡大局面で、政府も企業も家計部門を重視しなかったからだ。
具体的には輸出型大企業中心に勤労者の賃金よりも配当や内部留保に力点を置き、過去最高の業績を謳歌(おうか)してきた。そして、景気が後退に入ると、企業の生き残りのためといい、雇用削減に動く。個人消費が景気の波を受けやすい構造になっているということだ。
民間シンクタンクの多くは、2月半ばに発表される昨年10~12月期のGDP統計速報で実質成長率のマイナス幅は前期比・年率で10%程度まで悪化すると予測している。今年1~3月期も鉱工業生産の予測指数などから判断する限り、マイナス成長の公算が大きい。
景気の落ち込みを最小限にとどめるためにも、景気変調に際しては、早期に判断を下すことである。
毎日新聞 2009年2月2日 東京朝刊