石破茂農相は食料・農業・農村政策審議会に、新たな農政の基本計画の策定を諮問した。五年ごとに改定されており、約一年間議論して農相に答申する。政府は二〇一〇年三月をめどに閣議決定する予定だ。
これに合わせ政府は農政改革を検討する関係六閣僚による農政改革関係閣僚会合も設置した。春をめどに方向性をまとめ、〇九年の「骨太の方針」に反映させるという。
新計画の焦点となるのは、コメの生産調整(減反)見直しだ。石破農相が一月初めの記者会見で、廃止も視野に「すべての角度から抜本的に検討していかなければならない」と表明したのがきっかけである。
減反は、食の洋風化などで慢性的なコメ過剰が続くために価格維持を目的に始まった。四十年近くたち、ひずみが目立つ。
コメ作りが自由にできないようでは農家の生産意欲は失われるばかりだ。減反する農家と非協力の農家の間では不公平感が強まっている。
昨年の世界的な食料危機では、コメ不足の国があるにもかかわらず、日本国内では生産調整を続けることへ大きな違和感も指摘された。
このほか、食料自給率の向上や食の安全・安心の確保も大きな課題となろう。日本の自給率はカロリーベースで40%と先進国の中でも最低水準にある。食料安全保障の観点からも是正が必要になっている。
世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)では、日本は強く市場開放を求められており、農業の構造改革が急がれる。しかし、農村は高齢化が進み、耕作放棄地や休耕田が増えるなど担い手不足が深刻だ。コメづくりの中核を担う農家を育成し、競争力を高めるには農地の流動化へ向けた規制緩和などについても、思い切った論議が望まれる。
減反をやめた場合、コメの生産が増えて価格が大幅に下落する恐れがある。消費者にとってはメリットがあるが、農家には減収となる。欧州連合(EU)が導入している生産者への所得補償など、多角的な対策を検討することが必要である。
政府は〇七年に、経営規模拡大を目指し農政改革を行ったが、中小農家切り捨てとの批判があり、参院選で与党が大敗し軌道修正された。新たな基本計画では、意欲ある農家を守り育てるという明確な姿勢を打ち出すことが欠かせない。将来へ希望が持て、活力ある農業への処方せんを提示してほしい。
北朝鮮が、対韓国政策を統括する「祖国平和統一委員会」の声明として、韓国との政治的、軍事的な対決状態の解消に向けたすべての合意事項を無効化すると発表した。
朝鮮人民軍総参謀部は一月中旬、報道官声明で韓国と「全面対決態勢に入る」と表明している。軍と政策機関が強硬姿勢で足並みをそろえた。南北軍事境界線付近や黄海での緊張の高まりを懸念する声もある。
韓国の李明博大統領は就任以来北朝鮮に以前より厳しい態度を取り、経済交流などに核問題や人権問題を絡める政策「非核・開放3000」を掲げた。北朝鮮には対決姿勢を強めることで政策転換を迫る狙いがあるのだろう。北朝鮮は、韓国の以前の政権下での二〇〇〇年の南北共同宣言や〇七年の南北首脳宣言履行を求めてきた。
だが、緊張をあおって事を有利に運ぼうとする北朝鮮の手法は韓国を含め各国が熟知している。無理やりは通らない。北朝鮮は孤立が一層深まるような策を取るべきではない。
韓国側の対応はおおむね冷静なようで李大統領は対話再開を呼びかけてもいる。ただ、東アジアの有力国となった韓国には潜在的に北朝鮮と事を構えたくないという雰囲気があり、特に世界的な景気後退で韓国経済も変調を来している今は面倒を抱え込みたくないはずだ。そうした状況を利用する意図も北朝鮮にあるかもしれない。路線対立などがないよう望まれる。
米国が韓国の北朝鮮政策に同調しないようけん制したり、米国と直接対立せずにオバマ政権に米朝対話への関心を高めさせる狙いも、北朝鮮側にあるといわれる。近く六カ国協議の作業部会も開かれる。日米を含む関係国の結束が引き続き重要なことはいうまでもない。
(2009年2月1日掲載)