何でも、韓国閣僚が日本の先制攻撃論に強い不満を表明したらしい。北朝鮮のミサイルにさえ「特定の国を対象にしたものではない」「日本のように夜明け前から馬鹿騒ぎすることはない」と「冷静」な姿勢を保っていた韓国が、何とも敏感なものである。
北朝鮮による拉致問題にミサイル発射と、日本による竹島関連の動きや今回の先制攻撃論とに対する反応の違いは、韓国人の思考を端的に表しているように思う。
竹島や先制攻撃論は、韓国にとってある意味扱いやすい問題である。彼らにとって、日本は侵略国であり、常に朝鮮を食い物にする加害国であり、韓国は常に被害を被っており、従ってこれに力強く対抗しなければならないというのが普遍的常識である。竹島問題や先制攻撃論はこの構図に全く変更を求めるものではなく、むしろ彼らの確信を強固にするものである。従って、韓国人はいつも通りの論理で、いつも通り抗議すれば済むのである。
一方、北朝鮮問題は全く逆である。北朝鮮関係の問題では日本は逆に被害者の側となっており、しかも日本は韓国に代わってこの問題のイニシアティブをとっている。さらに、拉致問題にせよミサイル問題にせよ、単に北朝鮮と日本だけの問題ではなく、周辺六カ国、あるいはさらに広く国際社会の問題となっている。換言すれば、韓国は公の面前で、同胞である北朝鮮の味方なのか敵なのか、そして日本の味方なのか敵なのかを問われているのである。しかし、韓国にとって、これはどちらとも答えられない問題である。公然と北朝鮮の味方としてかの側に回るのは、アメリカを軸とした同盟関係を根本的に覆すことになるので出来るはずがない。しかし、かといって日本と一緒になって拉致問題で北朝鮮を加害者として追求し、ミサイル問題も含めて経済制裁に乗り出すことも不可能である。北朝鮮は南北の関係でいえば加害者であるが、日本という存在を前にすれば、北も南も同じ朝鮮である。日本と朝鮮という構図では、日本は加害者、あるいは何らかの形で道徳的劣位の立場になければならず、またそうであるはずなのである。北朝鮮問題は韓国人の世界観に合致しないが故に、非常に厄介な問題といえる。
こうした韓国の葛藤を端的に示しているのが、韓国人の不思議なほどの沈黙である。拉致問題では韓国は日本以上に被害者を出しながら、韓国政府のみならず、マスコミも、Naver韓国人も不思議なほどこれを話題にしない。むしろ、日本は騒ぎすぎると言わんばかりの姿勢である。
今回のミサイル問題に関しては、大統領自ら日本の反応を「馬鹿騒ぎ」とまで言い切った。これについては韓国三大紙はこぞって疑問を投げかけているが、おそらく韓国人の心境をある程度表しているのではないかと思う。韓国人にとって、この問題は厄介なだけに、考えたくも無く、従って日本の大騒ぎは迷惑なのであろう。ノムヒョンのあまりにも暢気な姿勢を批判する声自体は少なくは無いが、かといって国際協調のもと北朝鮮に強攻策に出よという話にはならないであろう。なぜならば、自体の主導権は既に日本が握ってしまっている。日本の尻舞に乗って同胞の北朝鮮を攻撃するなど、ノムヒョン政権でなくても、韓国人に出来るはずがないのである。
韓国が一連の北朝鮮の事態に対処できる唯一の方法は、ウリナラフィルターと日本の騒ぎすぎを批判することによる、問題の速やかなる矮小化だけであろう。