週刊新潮vs朝日新聞…「赤報隊事件」報道
「ピンとこない」「妄想」関係者は懐疑的
朝日新聞阪神支局などを襲撃した「赤報隊事件」の実行犯と名乗る男の実名手記を今週号で掲載した「週刊新潮」に対し、被害者である朝日新聞が真っ向から否定している。公訴時効が成立した今も事件を追い続けている同紙だが、1月29日付夕刊の紙面では、新潮の記事を「客観的事実と明らかに異なる点が多数ある」と切って捨てた。新潮の“次の一手”が注目される。
1月29日発売の週刊新潮によると、男は都内の元右翼構成員。誰もが知る“公的組織に属する人物”から「朝日を狙ってくれ」と金で依頼されたといい、当初言われていた恨みや思想的背景はゼロ。阪神支局や殺害された小尻知博記者を狙ったものでもなく、記者1−2人を殺害することだけが目的だったとされる。
一連の襲撃事件と同じ「警察庁指定116号事件」に指定された「リクルート会長江副浩正宅銃撃事件」や、参考事件の「中曽根康弘元首相襲撃事件」には関与しておらず、「赤報隊」の犯行声明は後日、別人に書かせたとも“告白”している。
阪神支局襲撃は関西系暴力団の案内役兼運転手、男の手下で見張り役の数人で実行。事件から10年後の1997年、見張り役の男が自殺したことから、真相告白を決意。2004年、別件で刑務所収監時に朝日新聞東京本社や阪神支局に手紙を出し、記者2人との特別面会が実現した。しかし、刑務所の面会室で記者の1人が高圧的に問いただしたことから面談は決裂。新潮での実名手記につながったという。
これに対し、朝日新聞は29日の夕刊に記事を掲載。この男性から手紙を受け取り取材したことや、週刊新潮編集部から男の証言に関する事実確認が入ったことを認めたうえで、《面会内容や取材結果から『本事件の客観的事実と明らかに異なる点が多数ある』と回答している》《『(記者が)喧嘩腰で怒鳴る』などと書いているが、そうした事実はない》と新潮の記事内容を否定した。
突然現れた“実行犯”が真犯人だとすれば、警察のメンツは丸つぶれ。ただ、警察関係者は一様に懐疑的だ。
「男が捜査線に浮上した事実はなく、東京の右翼関係資料にも名前は見あたらない。覚醒剤使用歴や東京の広域暴力団破門歴の情報はあるが、襲撃犯としてはピンとこない」(警察庁幹部)
「朝日が書いた通り、基本的な事実関係に間違いがある。2月5日発売の次号の続報次第だが、男は現実と妄想が区別できない精神状態なのではないか」(捜査関係者)
これに対し、週刊新潮編集部は回答を保留。一方、朝日新聞広報部は、現在報道各社の取材が殺到しているが、反論記事の内容以上は一切コメントしないとしている。
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