ドバイの中心部に近い地区で、一部屋に20人の非正規、不法滞在労働者が住むアパート=川上写す
ペルシャ湾岸の商業都市として急速に発展し、開発ブームに沸いたドバイが金融危機の影響で「バブル崩壊」に陥っている。ビル建設の工事中断や規模縮小で、外国人労働者の解雇が続く。新しい高層ビルが立ち並ぶ街の中心部のすぐ近くの地区では、非正規・不法滞在の外国人労働者が集まりスラム化していた。
朝6時、まだ薄暗いサトワ通りに労働者たちが姿を見せる。あちこちのレストランの前などに20人、30人と固まっている。工事現場に行く手配師の車を待っている。インド、パキスタン、バングラデシュ、フィリピンなど国籍は様々だ。
「毎日、ここで待つ。昨日も、一昨日もだめだった。1カ月で仕事があったのは数日だ」と、インド人の塗装工モハンさん(33)は語る。「朝、仕事がなければアパートに戻って寝る。夕方、深夜の工事を探しに出てくる」
サトワ通りに沿って1キロ南方に、高さが800メートルを超し、ドバイの発展を象徴する世界一の高層ビル、ブルジュ・ドバイやドバイ・ワールドトレードセンターが見える。この6、7年、次々と新たなビル建設が始まったが、昨秋に深刻化した国際的な金融危機が11月ごろからドバイにも波及し、銀行融資も投資も不動産開発から引き始めた。
午後9時ごろ、労働者たちは肩を落として通りから姿を消す。彼らの一団についていく。狭い路地を入っていくと古い低層のアパート群がある。一つのドアの前でバングラデシュ人のカマルディンさん(25)が「ここで仲間たちと暮らしている」という。
ドアを開けると、鉄製ベッドが視野をふさいだ。15平方メートルほどの広さの部屋の4面の壁にぐるりと3段ベッドが並ぶ。計18床。さらに中央の床に2人が寝て、計20人が寝泊まりする。市内各地にある大型ショッピングモールの華やかさからは想像もつかない光景だ。