江戸時代の山番付
江戸時代,庶民はさまざまなものをランキングして楽しんでいました。
相撲では力士の序列を「番付表(banzuke-hyoh)」というリストにしていますが,
庶民はこの「番付表」になぞらえた,さまざまなランキングリストを作っています。
▲ 1791年の相撲番付 日本相撲協会所蔵
今回は江戸時代の日本の有名な山をランキングした
「大日本 名山高峯 見立相撲」をもとに,江戸時代の名山を見てみましょう。
▲ 「大日本 名山高峯 見立相撲(Dai Nihon meizan takane mitate sumoh)」
日本は国土面積の70%が山林という,山国です。
おまけに造山地帯で火山も多く,変化にとんだ山が多い。
昔から登山も盛んでした。
たたし,信仰に基づく登山だったので,
この番付も霊山を中心にランキングされています。
※ 山の名前は現在の表記に直してあります。例)阿蘇嶽→阿蘇山
■ 高野山(Kohya san) 標高: 985m(弁天岳) 場所: 和歌山県
和歌山県にある標高約1,000m前後の山々の総称。
平安時代の西暦819年頃より弘法大師空海が修行の場として開いた
高野山真言宗の聖地であり,総本山金剛峯寺がある。
ユネスコ世界遺産。
▲ 壇上伽藍 「一遍上人絵伝」 1299年
▲ 現在の壇上伽藍
真言宗の総本山・金剛峯寺がある。
■ 箱根山(Hakone yama) 標高: 1438m(神山) 場所: 神奈川県・静岡県
火山。内輪山と外輪山で構成され,内側にはカルデラ湖の芦ノ湖がある。
現在でも大涌谷で火山活動が見られるほか,温泉が豊かな地域でもある。
江戸時代は東海道最大の難所とされていた。
▲ 歌川広重 「東海道五十三次/箱根(湖水図)」
▲ 現在の箱根山と富士山 (上の絵に近い視点)
■ 白山(Haku san) 場所: 石川県・福井県・岐阜県 標高: 2702 m
日本三名山の1つ。
白山は最高峰の御前峰・剣ヶ峰・大汝峰の「白山三峰」を中心とする,周辺の山峰の総称。
白山は日本有数の高山植物山として知られる。
古くから霊峰として信仰され,山頂付近には加賀国の一宮である白山比咩神社の奥宮がある。
▲ 「白山曼荼羅図」
▲ 現在の白山
■ 三国無双 富士山(Fuji san) 場所: 静岡県・山梨県 標高: 3776m
日本三名山の1つ。説明不要の山。
▲ 重要文化財 「富士曼荼羅図」 16世紀
▲ 葛飾北斎 「富岳三十六景/相州七里浜」
▲ 現在の富士山
手前の海は駿河湾。
■ 天保山(Tempoh zan) 場所: 大阪府 標高4.53m
大阪市港区の安治川河口にある人工の小山。
幕府の事業で1831年に灯台として築かれた。
山として認められているものの中で最も低い山。
今でも天保山には出動回数ゼロの「山岳救助隊」や山小屋があるらしいw
▲ 五岳 「大阪安治川天保山風景」
(左) 現在の天保山 公園になってます。(右) 天保山山岳会会長 腕には山岳救助隊の腕章がw
差添人(副主催者)が天保山っていうのが笑ってしまいますwww
1 鳥海山(Chohkai-san) 【東の大関】 標高: 2236m 場所: 山形県・秋田県
成層火山。関東地方との境にある燧ヶ岳を除けば,北海道,東北地方の最高峰。
▲ 象潟の古絵図 奥の白い山が鳥海山。
▲ 現在の鳥海山
2 浅間山(Asama-yama) 【東の関脇】 標高: 2560m 場所: 長野県・群馬県
安山岩質の複合火山。世界でも有数の活火山として知られる。
「asama」は火山を示す古語とされる。
富士山の神を祀る神社が浅間神社と呼ばれるのも同様の理由による。
1783年には大噴火を起こし,天明の飢饉の原因の1つともいわれる。
「浅間山夜分大焼之図」 1783年?
▲ 現在の浅間山(2004年9月)
3 立山(Tate-yama) 【東の小結】 標高: 3015m 場所: 富山県
日本三名山の1つ。
立山は,最高峰の大汝山,主峰の雄山,富士ノ折立の3つの山からなる。
雄山の山頂には,雄山神社本宮がある。立山を含む山稜を「立山連峰」という。
古くから立山修験と呼ばれる山岳信仰の対象であった。
▲ 「立山曼陀羅」 江戸時代後期
▲ 現在の立山連峰
手前の海は富山湾。
4 金峰山(Kimpu-san) 【東の前頭筆頭】 標高: 2598m 場所: 山梨県・長野県
古くから山岳信仰の名所として知られ,
山頂には「五丈岩」という20mほどの高さのトア(tor)がある。
▲ 五丈岩
▲ 現在の金峰山
5 月山(Gassan) 【東の前頭2枚目】 標高: 1984m 場所: 山形県
西に湯殿山(1504m),北に羽黒山(414m)を従えた出羽三山の主峰。
頂上には山名の起こりと言われる月読命が祀られた月山神社があり,
山岳信仰の山として知られる。修験道の聖地。
松尾芭蕉が,「雲の峯 いくつ崩れて 月の山」と詠った。
▲ 歌川広重 「諸国六十余州名所図会/出羽 最上川 月山遠望」
▲ 現在の月山と最上川
6 磐梯山(Bandai-san) 【東の前頭3枚目】 標高: 1819m 場所: 福島県
会津富士,会津磐梯山とも呼ばれている。猪苗代湖の北にそびえる活火山。
806年に噴火し,それまで3000mほどあった富士山型の山から,現在の3峰になった。
1888年7月15日に山体崩壊をおこし,発生した泥流により北麓の村が埋没するなどの被害を出す。
南が表磐梯,北が裏磐梯と呼ばれ,表磐梯から見ると普通の山であるが,
裏磐梯から見ると,一変して山体崩壊の跡の荒々しい姿を見せる。
▲ 「磐梯山噴火之顛末」 1888年7月20日
1888年7月15日の磐梯山噴火の直後に出た瓦版。
▲ 現在の磐梯山と猪苗代湖
7 男体山(Shin Oh'hashi) 【東の前頭4枚目】 標高: 2486m 場所: 栃木県
番付には「黒髪山」と表記。中禅寺湖の北岸に位置する。
古くから山岳信仰の対象として知られ,山頂には日光二荒山神社の奥宮がある。
中禅寺湖は男体山の噴火により川が堰き止められてできた湖で,
流出口に当たる華厳滝は日本三大瀑布として知られている。
▲ 『日光山諸所案内手引草』 1840年 より
▲ 現在の男体山と中禅寺湖
8 妙高山(Myohkoh-san) 【東の前頭5枚目】 標高: 2454m 場所: 新潟県
弥彦山と並んで新潟県を代表する山。活火山。
越後富士の異名をもつ。
ちなみに,旧海軍の重巡洋艦にこの山から名前をとった「妙高」,
同じく海上自衛隊のイージス艦に「みょうこう」がある。
▲ 現在の妙高山
9 七面山(Shicihmen-zan) 【東の前頭6枚目】 標高: 1982m 場所: 山梨県
日蓮宗の守護神として信仰されている七面明神が祀られている。
春秋の彼岸の中日には富士山頂から昇る御来光を拝むことが出来る。
▲ 甲州身延 七面山より富士を望む 大正時代
▲ 現在の七面山から見た富士山
10 恐山(Osore-zan) 【東の前頭7枚目】 標高: 879m 場所: 青森県
日本三大霊場(他の2つは滋賀県の比叡山と和歌山県の高野山)の一つに数えられる。
死者の御霊を呼び,口寄せ(口うつし)を行なうイタコがいる霊場として有名。
862年に慈覚大師円仁によって一宇を建てて地蔵尊を建立したのが始まりとされる。
▲ 現在の恐山
1 阿蘇山(Aso-san) 【西の大関】 標高: 1592m 場所: 熊本県
カルデラ火山としては世界最大級の大きさ。
一般に阿蘇山と呼ぶ場合,中央火口丘群の根子岳,高岳,中岳,烏帽子岳,杵島岳の5つの山の総称。
カルデラ内で村や町が発展し,「カルデラの中に人が住んでいる」活火山。
阿蘇市一の宮町にある阿蘇神社は肥後国一宮としての格式を持ち,
その宮司の阿蘇氏は古代の国造(kuni no miyatsuko)の子孫で現在まで世襲されている。
現在の宮司さんで91代目(!)
▲ 谷文晁(1763ー 1840)による阿蘇山の絵
▲ 現在の阿蘇山
2 開聞岳(Kaimon-dake) 【西の関脇】 標高: 924m 場所: 鹿児島県
鹿児島県の薩摩半島の南端に位置する火山。
その見事な円錐形から別名薩摩富士とも言う。
874年と885年に大噴火した。2000年には噴気が観測されている。
山頂には枚聞神社 奥宮御岳神社があり,山自体が御神体とされる。
▲ 現在の開聞岳
3 碁盤ヶ岳(Goban ga take) 【西の小結】 標高: 551m 場所: 山口県
なんで小結なのかよくわからない山w
▲ 現在の碁盤ヶ岳
4 雲仙岳(Unzen-dake) 【西の前頭筆頭】 標高: 1486m 場所: 長崎県
主峰は普賢岳の1359mだが,現在では,
1990年から1995年にかけての火山活動で形成された
平成新山の方が高く1486mとなっている。
雲仙では霊山として山岳信仰(修験道)が栄えた。温泉神社がある。
▲ 「二階櫓眺望之図」 19世紀前半
八代城本丸の二階櫓から見える西側の眺望を描いたもの。
右の山が雲仙岳。
▲ 現在の雲仙岳
5 大峯山(Ohmine-san) 【西の前頭2枚目】 標高: 1719m 場所: 奈良県
紀伊山地の中央を南北にのびる全長50Kmほどの山脈全体を指す。
一般に言われている大峯山は山上ヶ岳(1719m)。
全国に数多く存在する大峰山の由来の山といってよい。
古くから修験道の山として山伏の修行の場であった。
その中でも山上ヶ岳(旧名:金峯山)の頂上近くには
修験道の根本道場である大峯山寺・蔵王堂があり,
山全体を聖域として現在でも女人禁制の伝統を守っている。
「大峯山寺」と「大峯奥駈道」はユネスコの世界遺産。
▲ 「金峯山絵巻」
▲ 現在の大峯山
6 霧島岳(Tem'ma-bashi) 【西の前頭3枚目】 標高: 1700m 場所: 宮崎県
約30万年前に大噴火を起こした
「加久藤(kakutoh)カルデラ」の南縁付近に誕生した後カルデラ火山。
ミヤマキリシマの群生地。
高千穂峰の山頂には,アマテラスの孫ニニギが降臨(天孫降臨)に際して
逆さに突きたてたという天の逆鉾が立てられている。
▲ 現在の霧島山
7 大山(Dai-sen) 【西の前頭4枚目】 標高: 1729m 場所: 鳥取県
中国地方の最高峰であり,石川県の白山から島根県の三瓶山,
大分県の由布岳・九重山に連なる大山火山帯の中心火山。
現存する最も古い記述は『出雲風土記』の国引き神話。
西のからみた山容が富士山に似ていることから伯耆富士や出雲富士の名も持つ一方,
北・南壁を見ると日本一の規模の溶岩ドームによって形成された
荒々しいアルペン的景観でまるで違う山に見える。
▲ 歌川広重 「六十余州名所図会/伯耆 大野大山遠望」 1853-57年
▲ 現在の伯耆大山
8 有明山(Ariake-yama) 【西の前頭5枚目】 標高: 558m 場所: 長崎県対馬
厳原の港から見た有明山(左奥),右のピークは成相山
対馬にある山。
古くは「対馬の峯」と呼ばれ,万葉集にも詠まれた名山。
「対馬の峰は 下雲あらなう 上の峰に たなびく雲を 見つつ偲はも」
(万葉集巻14-3516)
▲ 現在の有明山
9 五台山(Godai-san) 【西の前頭6枚目】 標高: 139m 場所: 高知県
頂上付近には四国第三十一番札所・竹林寺や
高知県立牧野植物園・牧野富太郎記念館,展望台,つばき園などがある。
展望台からは鏡川が雄大に流れる高知市街地,
浦戸湾,桂浜までが一望の下に見渡せる。
▲ 現在の五台山からの眺め
10 金剛山(Kongoh-san) 【西の前頭7枚目】 標高: 1125m 場所: 大阪府・奈良県
大阪府の最高地点(1,056m)がこの山の中腹にある。(大阪府最高峰)
日本有数の登山者数を誇り,その登山者数は富士山と争う程。
金剛山は修験道の開祖,役行者(En no gyohja)が修行した山として知られている。
山頂付近には役行者が開いたとされる転法輪寺がある。
また,金剛山周辺には太平記の英雄・楠木正成の城であった千早城,
上赤阪城,下赤阪城の城跡や誕生地など,正成ゆかりの史跡が点在している。
▲ 芳藤 「楠木正成金剛山千破窟の城を築く図」
▲ 現在の金剛山
江戸時代は旅行もそれほど制限されていませんでした。
箱根の関所以外の関所なら檀家になっている寺が発行する
「往来手形」(身分証明書兼パスポートのような書類)を
一通持っていればどこでも通れたし,そもそも関所はそれほど多くなかった。
江戸時代後期には女性の旅行者も増えて,
女性だけのグループで旅に出る機会も増えてたらしい。
その頃,朝鮮の山はというと・・・
バカ民族のせいで,
禿山だらけでしたwww
(=´ω`=)y─┛~~