一言で感想を言えば、「まあ、よくもたかが小説一冊でここまで騒げるものだ」である。
この本は作者の体験をベースにしているとはい
え、あくまでも児童小説である。英語版での分類もジュブナイルフィクションであり、もとより客観性を問われるものではない。例えば、本書では作者の兄
Hideyoの逃避行も、作者の逃避行と同時並行的に描かれている。しかし作者は当時、兄の存否すらわからない状態であり、当然ながらこうした場面は後年
に得た情報を元にしているはずである。従って、「当時11歳だったYokoにわかるはずがない」「父親の友人の名前を小学生がいちいち覚えているのは不自
然」などという批判は、全く的外れだろう。この本は作者の当時の日記でもなく目撃証言でもなく、50年以上を経た後に体験談を小説化したものである。後付
けの情報もあれば脚色もあるのが当たり前である。
さて、物語の流れは、概ね次の通りである
- 主人公(11)は母、姉(16)、兄(18)とともに満洲との国境にほど近いNanamに住む(父は満洲務めの政府高官)
- 東京大空襲の直後頃、Yokoは陸軍病院に傷痍軍人を慰問。Corporal Matsumuraと知己を得る。(慰問に際してYokoはキモいから嫌だと駄々をこね、母と姉に無言の圧力で強制慰問させられる)
- 兄はお国のためにと予科練に応募。反対する母と大喧嘩になるも、筆記で落ちて工場勤務。
- 毎晩のように空襲警報が続き、Yokoはいつもサイレンで夜中に起こされる。(爆撃の記述はない)
- あ
る晩、Corporal
Matsumuraがソ連軍の上陸を伝え、すぐに逃げるように指示。満洲の父、工場勤務の兄を残し、Yokoと姉のKo、母は防空壕に備えてあった非常食
や着物を持ってすぐに駅に向かう(兄とは京城駅で落ち合う予定)。途中、演習中の朝鮮共産軍(Korean Communist
Army)とすれ違うも、辛くもやり過ごす。
- Corporal Matsumuraの紹介状により、Yoko一行は病人用車両に乗り込む。途中、病人数名が死に、遺体は窓から投げ捨てられる。
- WonsanでKawashima一家を探しに来た朝鮮共産軍(制服着用)が乗り込んで調べに来るが、医師と看護婦の計らいによりやり過ごす。
- Wonsanを出て間もなく列車のエンジンが故障。三人は京城から45マイル手前で降り徒歩で京城駅に向かう。
- 三人は捕まることを恐れ、昼は藪の中で寝、夜に線路を頼りに南に向かう
- 八日ほど歩いたところで、近くで爆撃が始まる。時を同じくして一行は三人の朝鮮共産軍に見つかる。彼らは姉を見て「今夜楽しむにはぴったりニダ」と迫るも、運良く近くに爆弾が落ち、朝鮮共産軍は死亡。Yokoは重症を追うも姉と母は無事。
- 三人は以後、髪を剃り落として朝鮮共産軍から奪った軍服を着て行動。Yokoは髪を剃る理由がわからずふてくされる。
- 京城駅の手前で日本の警察の検問を受け、日本の敗戦を知る。Yokoは警察の計らいで病院でしばらく治療を受け(その時の医師Kazuo Takedaは父の大学の同級生)、その後、兄と落ち合うために三人は京城駅に住む。食料調達は主にゴミ箱漁り。
- 駅で日本の老人が「これはわしのじゃ」と言ってYokoから荷物を奪おうとするも、母が叫んで事なきを得る。
- 姉のKoが朝鮮〜人が女の子を拉致して木陰に連れ込んだり、実際に強姦している場面を目撃(被害女性は日本語で泣き叫ぶ)。三人は再び髪を剃り、姉はさらしで胸を固めて男装する。翌日、釜山駅で待つという兄への書き置きを駅に残し、三人は貨物列車に乗り込んで釜山へ。
- 一行は釜山駅に到着するも、独立祝賀パーティで盛り上がる駅を締め出され、近くの元海軍の倉庫で寝泊りする。倉庫のトイレで女性が四人の男に拉致されて連れられて行くのを目撃。以後、Yokoと姉は男のふりをするため立って用を足す。
- 祝賀パーティーで酔った朝鮮〜人達が姉のKoに言い寄る。男は「男か女か確かめさせるニダ」と胸を触って来たが、さらしで固めていたので事なきを得る。(彼らはいつも女を漁ってまわり、見つけるたびに外に引き摺り出しては事に及んだ云々)
- 食料調達のためにYokoがゴミ箱を漁っている途中、朝鮮〜人の強姦を目撃。一行はひとまず日本に帰ることを決意する。
- 引き上げ船に乗って博多に上陸。11月まで港の避難所で兄を待つが、滞在期限が過ぎ、撤収を命じられる。
- 母は青森の実家と連絡を取ろうとするも音信不通。ひとまず青森に赴くことにしたが、途中、母は娘二人を京都で学ばせることを思いつき、途中下車。YokoとKoの転入手続き(Yoko:嵯峨野女学院?、Ko:西安女子学院)を終えると母は単身青森へ。
- Yokoと姉は復学。しかし家も稼ぎもなく、相変わらず駅に寝泊りし、ゴミ箱を漁ったり空き缶拾いで小銭を稼いだりして食いつなぐ。
- しばらくして母が青森から帰還。青森の実家は夫方も含めて七月の空襲で全滅。疲れ果てて姉と再会する前に息を引き取る。
- Yoko
と姉は、母の葬式の時に知り合ったMrs.
Masudaのはからいで工場の空き部屋に住み始める。以後は姉が裁縫した服や着物を売ったり、空き缶拾いなどをして生活を維持。(母の母の風呂敷の隠し
ポケットから多額のへそくりを発見するも、非常用に使わずに取っておく)
- 引き上げが博多から舞鶴に変わったため、二人は毎週末兄への伝言を貼りに行く。
- Yokoが作文コンクールに入賞したことがきっかけで、朝鮮から引き上げて実家を継いでいたCorporal Matsumuraと再開。
- 1946年4月、兄帰還。
朝
鮮〜人による日本人の強姦、及び強姦未遂が描かれているのは10.、14.、15.、16.、17.の五場面である。その舞台のほとんどは京城と釜山、今
の韓国の地域であり、韓国人がこの話に慌てるのも一応理解できる。しかし、そのほとんどは体験談ではなく目撃例であり、政府高官のKawashimaの一
族としてYoko達が追求されたのは7.の一例に過ぎない。つまり、Yokoの父が731部隊関係者かどうかなど、この本に描かれた朝鮮〜人の悪業とは全
く以って関係ないのである。ここまで全く無関係である「Yokoの父の正体」に韓国人が熱心に思いを馳せるのは、この本を読んでいないか、あるいは父親の
業績が娘の著作の信頼性を決定すると考えるほどとてつもなく頭が悪いか、そのどちらか、あるいは両方であろう(私は後者を押すが)。
ついでに、Yoko達の行動と併行して描かれている兄Hideyoの逃避行を大雑把にまとめると次の通りである。
- 予科練に落ちて工場に勤務している時に朝鮮共産軍が押し入り、友人一人が殺される。
- 急
いで家に戻ると、家族はすでに避難。無事だった友人数名とともに南に逃げることを決意。変装用に朝鮮服を借りようと、Kawashima家と家族ぐるみの
付き合いがあったLee氏の家を訪れるが、Lee一家は既に朝鮮共産軍により惨殺。怒りに震えるも、とりあえず仲間とともにLee氏の家の服を借りて線路
沿いに南に向かう。
- 朝鮮語を話して朝鮮〜人を装いながら旅を続ける。途中、ソ連兵に行き会い、朝鮮〜人の振りをして情報を得る。
- Tanchonの朝鮮共産軍本部で朝鮮〜人の振りをして仕事を得、晩秋まで過ごす。
- 一行は再び旅立つ。近くの家族を訪ねる友人達と間も無く分かれ、Hideyoは一人で京城を目指す。
- 途中、日本人の一群を見かけて近寄ろうとした矢先、朝鮮共産軍が一軍に発砲し、日本人は全滅、Hideyoは崖の上に待避。
- 朝鮮共産軍もHideyoの隠れる崖に上がって来るも、日本人からの掠奪品の分配で仲間割れし、一人が射殺される。Hideyoは死んだ朝鮮共軍産の服を着て再び旅を続ける。
- 寒さと飢餓で倒れる寸前、民家を見つけて必死で倒れ込む。主のKim氏と婦人はHideyoを介抱し、甥としてかくまう。
- Hideyoは春先までKim一家を手伝いつつ過ごすが、家族のことを思い出し、再び京城を目指して旅立つ。
- イムジン河を泳いで38度線を突破。京城、釜山を経て舞鶴に上陸。舞鶴でYokoとKoの伝言を発見。
- 1946年4月、Yoko達と再会。
強姦の危険が最大の恐怖であったYoko一行に対し、Hideyoにとっては朝鮮共産軍による日本人狩りこそが恐怖であり、逆に38度線を突破してからはほとんど話という話もない。兄の逃避行の章は、どちらかと言うと温かい日韓の交流に重きを置いている。
当
たり前であるが、全体の流れとしては終戦前後に作者が体験した苦労を描いたものであり、日本人と朝鮮〜人とどちらが被害者かということは話の主題として全
く問題にはならない。ただ、朝鮮で作者に直接脅威をもたらしたものの一つに朝鮮〜人があったというだけである。これに類する話は朝鮮だけでなく満洲でもい
くらでもあり、当時の話を多少なりとも読んだことがある日本人にとっては、この本の内容はあまり真新しくないのではなかろうか。
この本が何故韓国人を発狂させるのかは、下のdouble_goreのスレッドを見れば一目瞭然だろう。
日本人が泣きわめきながらお勧めした <蛍火の畝>
http://bbs.enjoykorea.jp/tbbs/read.php?board_id=phistory&nid=76015
つまり、加害者である日本人が被害者ヅラすること自体重大な歪曲であり、しかも真の被害者である朝鮮〜人を加害者として描くなどもっての他、ということであろう。彼らの思考回路は、常に単純素朴である。