|
☆★☆★2009年02月01日付 |
|
世界的不況と円高に苦しむ国内自動車メーカー各社が、軒並み予想だにしなかった赤字転落に陥っている中で、ホンダが今期黒字を確保した(日経)という。その屋台骨を支えたのが「孝行息子」と知って、まるでイソップ物語を読むような思いがした▼孝行息子とは、同社創業の立役者である二輪車で、主力の四輪車が売れず円高も加わって売り上げを何度も下方修正を余儀なくされている中で、こちらは逆に売り上げを伸ばし、特にアジアでの健闘が四輪車の不振を補った▼ホンダといえば二輪車でスタートし、特に庶民の足として爆発的に売れたスーパーカブがその後の同社を自動車総合メーカーに仕立てる文字通りの「原動力」となった。そのカブ発売から半世紀。同社が現在に至るまでの足跡を実際に眺めてきたから、原点というものはおろそかにしてはならないものだと実感した▼二輪車だけに飽き足りず、手始めに軽四輪を発売、これが売れに売れて同社が本格的に普通自動車へシフトするきっかけとなる。同社が一時軽四輪から撤退し、しかし間もなく復帰したのは、自然の原点回帰だったのだろう▼四輪車には手が届かないが、生活の足はほしいという需要はアジアに高まっており、同社の販売実績も14%の増というから、優秀な兄貴の陰に隠れてあまり目立たなかった弟が本領を発揮したといえるだろうか。「大艦巨砲主義」の弱点が露わになった現在、数で稼ぐ商売が見直されるかもしれない。 |
|
☆★☆★2009年01月31日付 |
|
先進国といっても、実際は「後進国」?いや、アフリカ・ソマリア沖に出没する海賊ににらみを効かせるため、政府がやっと海上自衛隊の艦艇二隻を派遣することを正式に決めたことだ。すでに十五カ国が艦艇を派遣済みだから、遅参は否めない▼ソマリア沖は、スエズ運河からインド洋を往来する年間約二万隻の商船にとっていま最大の「関所」となっている。世界最貧国の一つとされる同国は九〇年初期に始まった内戦によって無政府状態が続き、治安などなきに等しい。食うに困ったあげくの小遣い稼ぎが、やがて海賊ビジネス≠ノ発展した▼商船を襲って船ごと積み荷を奪い、あるいは乗組員を人質にとって身代金を要求するというボロイ商売だから、横行せぬ方が不思議。事実三年前から被害は年を追って増え、昨年だけでも三十一件の被害を見ている。日本の船舶だけでも六件が襲撃を受けており、うち二件は身代金を払って解放されたが、一件が未解決のまま▼計画では護衛艦二隻を派遣、日本関係船の護衛を主とした海上警備にあたるが、「艦艇がいるだけで安心」という船舶会社の期待にやっと応えることができたものの、例によって武器の使用は正当防衛と緊急避難時のみと制約があり、関係新法の制定が急がれている▼遅まきながら派遣を決めたことはよしとしたいが、海賊対策はインドネシア周辺海域で海賊行為が続発していた数年前からしきりに要請されていたのである。もさもさしているうちに、海賊たちに「急ぎ働き」して姿を消す余裕を与えてしまったのではないか。 |
|
☆★☆★2009年01月30日付 |
|
仲間の集まりの中で「一箱買うと絶対減らないものは何?」というクイズを出した。「さて?」と一同が首をひねる。使っても使っても減らないというのは、物理的にまずあり得ない。そこでファイナルアンサー。「輪ゴムだよ」▼「そうだな」と大笑いになったが、それは誰も心当たりがあるからだ。なぜ減らないのか?使う以上に「補給」があるからである。日常色々なものが輪ゴムのお世話になっている。それを捨てずに取っておくと、どんどん貯まって元の量より増えている▼それもこれも「もったいない」で育った世代のさがというものか。実際手元にある輪ゴムの箱はおそらく十数年前に買ったものである。メーカーは色々あるのだろうが、なじんだメーカーのあの茶色の箱と黄色い文字は、デザインも変わらずそれが大変なロングセラーであることを物語っている▼これほど便利で重宝し、しかしその割にはありがたさを実感されないでいる存在はまさに空気と一緒だろう。同じ箱には赤、青、緑と彩色されたものもまじっているが、買った当時のまさにゴム色のそれは下の方でさっぱり出番がなくくすぶっているはずである。空気にふれないと劣化もせず、下積みのままで一生を終わるかもしれない▼かつてはティッシュでテーブルを拭くなどもったいなくてできなかったものが、現在では比較的惜しみなく使うようになったが、一枚を消しては使い、消しては使った結果、未使用のままお蔵入りとなっているフロッピーディスクの束を眺めると何か人生の哀歓を見る思いがする。 |
|
☆★☆★2009年01月29日付 |
|
吹き荒れる金融危機の震源地・米国が負った傷は深く、実体経済でも自動車産業のみならず、大手製造業にもリストラの嵐が吹き始めた。マイクロソフトすら人員削減など、得意のIT分野も例外でない ▼その点、バブル崩壊でやけどをした教訓が生かされて、怒濤のように荒れ狂った先進国の投機・金融バブルにそれほど踊らされなかった日本は、傷口も比較的浅く、このため景気回復は先進国、新興国中でも一番早いだろうと 見るのが妥当だろう。確かに円高が実体経済を直撃している一面はあるにせよだ ▼しかし、底知れぬエネルギーを秘めている米国経済がいつまでも泥沼をはいずり回っているわけがないと、ひょんなことからそんな思いにかられた。それは映画「インディー・ジョーンズ」の第四作「クリスタル・スカルの王 国」を楽しんでから、ふとよぎった感想である ▼映画そのものは見ず、DVDでごまかしたのだが、二枚組のもう一枚に撮影の裏話が収録されている。これが米国の底力を知らしめてくれたとでもいおうか。三作で打ち切りの予定が、あまりの人気で復活しただけあって、力が入っているのはむろんだが、驚いたのは製作スタッフの多さだった ▼そしてセットや仕掛けのために、スタッフがどんなに苦労し、知恵を絞っているかを知らされた。超巨費を投じてこれだけの映画を作れる実力は、他の分野にも潜在しているはずで、彼我の基礎体力の差がこれからどう表れるかが見ものだろう。 |
|
☆★☆★2009年01月28日付 |
|
東芝が北上市と三重に建設を計画していた半導体工場が、世界同時不況の影響を受けて建設を一年以上延期することになったことは、北上市のみならず本県経済界にも大きな痛手となった▼北上といえば、本県でも最も元気のある地区で、他の自治体からも羨まれる存在だった。過疎化をたどる他の自治体を尻目に人口は増え、生産は増え、夜の街には若者が集まって、ここが県内かと思うほどだった。そんな存在がここに来て一変した▼広い工業用地と新幹線や高速道のアクセスにも恵まれて県内一の工業立地が実現、これが大量の雇用を創出して同市を若者の多い活気のある場所にした。当地がまだ〇・六前後という低い有効求人倍率にあえいでいた頃、同市は一倍以上の高率を誇っていたのである▼しかしそれはほんの一年前あたりまでのこと。その一年間で国際経済情勢は超激変してしまったのである。半導体工場建設が報じられたころ、一体誰がこのような事態を予想していただろうか。新工場の投資額が一兆円以上。その半分が北上市に落ちるわけではないにしても波及効果は大きい。そんな期待にいきなり冷水が浴びせられた▼同市の一部に「企業誘致に頼る町づくりが果たして真のプラスになるのか」という疑問の声があったことを以前紹介したが、確かに企業誘致は諸刃の剣である。その片刃は評価するとして、たとえ柄は小さくても地場産業がスクラムを組んで自立できるような町づくりを考えることも大事だと反省される思いがする。 |
|
☆★☆★2009年01月27日付 |
|
うがいと手洗いの励行―というのが風邪、インフルエンザを予防する近道だというが、幼少の頃からそういう習慣を持たない物ぐさに天罰があたって、風邪と昵懇の間柄となってしまった▼今年のインフルエンザは香港型とロシア型があって、ロシア型には例の「タミフル」が効かないというから、せっかく予防接種した人には気の毒だ。通常の風邪(という言い方がふさわしいかどうか)にも、色々種類があるようで、年末に引いたそれは悪質だったが、以後連続二度も引いた風邪は一般型▼「風邪には強いが女には」と標榜してきた割には情けない連チャンだが、それだけ世の中には細菌がうようよしているという証左であろう。仲間は「体力が落ちているのではないか」と不安を助長するような言い方をするが、これは不断の予防意識が問われたまでだろう▼風邪を退散させるには昔から色々と伝承があり、引き始めには卵酒がいいといわれるが、引いてしまってからは、熱燗で治すという方法をこれまで墨守してきた。しかし今回はこれが「薬石効なく」、その後風邪薬を飲んでもこれは逆効果だった。こうなると唸っているだけなのか▼そこで閃いたのが「レモネード」療法。以前これが風邪に効くと聞いていたような気がしたからである。幸いレモンは料理に使った残りがあり、蜂蜜を加えてお湯を入れる。一口飲んでたちどころに気分が良くなった。自己暗示にかかりやすいのか、本当に薬効があるのか、いずれレモネード畏るべし。 |
|
☆★☆★2009年1月25日付 |
|
朝のテレビニュースに挿入される各地の映像を見るのがこの時期の楽しみである。つまり冬将軍がどう動いているのかという関心からだ。雪国東北が銀世界に覆われているのは当然としても、当地が晴れなのに九州では雪がちらついていたりする▼まさか南と北と気象が逆転したわけではあるまいが、このような意外な場面に出逢うと、やはり地球は変調をきたしているのではないかと思わずにいられない。大船渡で最高気温一三・七度を記録した二十三日などはポカポカとして一足先に春がきたようだった。ところが、この日の九州は各県とも一〇度以下▼隣の四国も徳島を除き同様で、関東でも横浜は〇・一度下回っていて、全国の主な観測地点百二十九カ所のうち当地を上回っていたのは三十五カ所のみ。この日だけに限って言えばこれは「南国」の証しとなるまいか。「岩手の湘南」というたとえは当たらずとも遠からずだ▼しかし小欄の体感温度からすればこの日は一五、六度はあった。なにせ野外に掛けてある温度計は午前中で一四度を示していたのである。観測地点である大船渡測候所の場所は、以前から五葉おろしが吹き下ろす山の手にあり、平均値より低めになるという指摘は案外正鵠を射ているのではないか▼実際予報も記録も北の宮古より低いことがしばしばあり、これは同じ土俵にあがってもらう必要があるという声は無視できまい。本県で最も温暖な土地という謳い文句を立証するためにも、これは再考してもらいたいものである。 |
|
☆★☆★2009年1月24日付 |
|
日常の計算は「加減乗除」だけでほぼこと足りるが、最近はいささか趣きを異にする。算式の中から「加」が消えてしまったのである。つまりプラスがなくなりマイナス全盛となったというわけ▼実際、経済記事が大半を占める日経を開くと、ほとんどの企業が、売り上げ減、利益減、生産減と、まさに「枕を並べて討ち死に」状態である。ここまで苦境に追い込まれた原因はむろん円高にあるだろう。原料を輸入し付加価値を高めて輸出することで立国してきた、これは宿命だ▼四半世紀前、貿易赤字拡大を恐れた米国の主導によるいわゆるプラザ合意によって、急激な円高が進行、国内の輸出企業は塗炭の苦しみを味わった。しかしそれが長期化しなかったところに救いがあった。ドルの威信低下による反動が起こったからである▼この時の教訓が活かされれば、輸出企業は戦略として、外需、内需のバランスを保つ大事さを肝に銘じていたはずである。だが、バブルの崩壊で一気に進んだ内需の減退で活路を海外に求めるようになるのは自然だろう▼とはいえ、トヨタ、ソニーといった優良企業までが赤字転落など一体誰が予想しただろうか。それは経営者の世代交代によって「いつか来た道」の教訓が遠くへかすんでしまったからか。しかしそれは酷というものであろう。人情として拡大発展の余地がある海外へ市場をシフトするのは当然で、結果は災難となったが、いずれ起死回生の努力が「加」を取り戻すはずだ。 |
|
☆★☆★2009年1月23日付 |
|
小欄の座右の銘は「巧言令色鮮し仁」をもじった「暴飲暴食鮮し仁」だが、これはあくまで目標であって実際はまったく守られていない。しかし三年ほど前からメタボ対策に一日二食としたら、胃袋が縮んだせいか、食べ過ぎ、飲み過ぎると胃がもたれるようになった▼朝食を抜いたことで「それは健康のために良くない」と読者からお叱りを受けたが、伸び盛りの若い人はともかく、運動不足でカロリー過多になる年代にとっては、むしろ戦国時代頃までの伝統である一日二食でいいのではないかと勝手に解釈しているのである▼これには賛否両論があって、要は自己責任で判断するしかない。三食時代は完全にメタボで、体重が85キロにも達していたが、この「ダイエット」によって最少68キロまで落ち、現在は70キロ前後で推移しているが、15キロの重しをぶら下げているのと否とでは脚に対する負担も大違い▼こうしてスリム化すると、体がまるで軽くなる。食事はこれまた問題ありとされる夜食中心型だから、その分昼も軽くすることに努め、酒の「シバテ(肴)」を第一義とする本分を守り続けているのである。つまり夜依存型だからその分朝には食欲が湧かなかったことが二食移行を容易にしたのだろう▼昔の日本人はなべてやせていた。それは十分な栄養をとれなかったせいだが、しかし粗食で育った世代が長生きしているのはなぜだろう。ダイエットに金をかける前に、まず食欲と戦ってみることだ。 |
|
☆★☆★2009年1月22日付 |
|
この世界同時不況からどの国が一番先に抜け出すかということになると、米国がまずは一歩リードか。大統領就任式を祝うイベントやパレード、その他に消費された相当の金額は、ちょっぴり景気を刺激したはずだからだ▼というのはうがちすぎとしても、祝賀ムード一色に包まれたこの光景は、政局の混迷にうち沈んだわが国にとって羨ましいような明るさに満ちていた。オバマ人気にあずかるところが大としても、一国を統べるリーダーの誕生を理屈抜きに祝うという経験を持たないわが国としては、すべてが物珍しく、昨日のテレビなどこれ一色▼ケネディの再来を思わせるオバマ新大統領に多くの米国民が期待するのは当然だろう。まして一大国難時ではなおさらだ。いくら印象が清新で、演説がたくみでも真価が問われるのは政治家としての力量と識見で、実務に入るこれからが本番だが、あれだけエールを送られればいやでも必死になろう▼ひるがえってわが国を見ると、こちらは景気の足を引っ張るようなことのオンパレードで、その最たるものが政治だが、現況はいわば「まさかの時」なのである。だからこそ与野党が一致協力してこの状況から脱する努力が問われるのだ▼長い歴史がそうさせたのか、総じて日本国民は悲観的である。世界にまれなる貯蓄率がその証明だろう。しかしこういう時だからこそ楽観的にならないと幸福の女神もそっぽをむく。で、今夜あたりパーッと行こうぜ。 |
|