【静岡】肺へのがん転移防ぐ手法確認 浜医大・杉原准教授ら2009年2月1日 肺にがんが転移する際、健康な細胞内の特定の分子が受け皿となることを、浜松医科大(浜松市)産婦人科の杉原一広准教授と米バーナム研究所の福田道子教授らのグループが発見した。すべての細胞にある「Sfrs」だが、肺転移時に特異的に働くという。Sfrsを抑制する薬剤を開発できれば、がんで多発する肺転移を防ぎ、生存率向上につながる可能性がある。近く米科学アカデミー紀要に掲載される。 がんは肺、肝臓、脳へ転移することが多く、治療の妨げとなる。いずれも毛細血管が発達しており、血流に入り込んだがん細胞が、血管内の表皮細胞に付着しやすいためだ。 研究チームは、がん化した細胞の表面の糖鎖構造が変化していると、患者の生存率が低くなる点に着目。肺血管上の何らかの物質が、がん細胞側の糖鎖の受け皿になっていると仮定した。 複雑な構造を持つ糖鎖の代わりに、同様の性質を持つペプチドを使い、受け皿として働くタンパク質を突き止め、アミノ酸配列を解析した結果、Sfrsと判明した。 Sfrsはすべての細胞の核にあり、DNA(デオキシリボ核酸)の遺伝情報伝達や生命維持に必須のタンパク質合成にかかわる分子。肺細胞の表面に発現すると受け皿の働きを示す。 研究チームは、肺血管表面からSfrsを発現する細胞を除去したマウスを使って実証実験し、がんを発症しても肺への転移がまったく起きなかったことを確認している。 杉原准教授は「今後はSfrsを発現する細胞を標的とした治療薬の開発に取り組みたい」としている。 藤田保健衛生大産婦人科の宇田川康博教授の話 ほかの分子の介在や、ヒトでも同様のメカニズムで肺への転移が起きるかどうか確認する必要があるが、肺転移は患者の予後を大きく左右するだけに、予防につながる新薬開発の糸口になることを期待したい。
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