番組完成

きょうテロップ(字幕)を入れて番組が完成した。
1時間49分という、いままで経験したことのない長尺の番組だけに感慨もひとしおである。
自分としては(自身には点が甘いので)いい番組になったと思っている。

ここ数年、というか五十の声を聞く頃から、ぼくはだんだんワガママになった。
「自分の納得」を最優先に番組を作るようになったのである。
プロデューサー(組織的には「上司」)もデスクもみんな遥かに後輩で、
彼らにはぼくに対する遠慮があるのだろう、頭ごなしに修正を迫られることはない。
それをいいことに…というのではなく、
ぼくは彼らの言葉に謙虚に耳を傾けているつもりだが、
それでもどこか基本的に「自分の納得」を貫いている部分がある。
一言で云えば、できるだけ「説明を排する番組を作りたい」ということである。
最近のテレビ番組は(こういう云い方がそもそも爺臭いのだが…)説明的に過ぎてうんざりする。
視聴者が、そして作り手も、「わかりやすさ」を安易に追い求め過ぎているのではないか。
世の中で起きていることは、矛盾に充ちていて、そんなに「わかりやすい」はずがない(とぼくは思う)。
だから、曖昧なものは曖昧なままに、矛盾は矛盾のままに、まるごと描ければ…と思っている。
ぼくは自分で「問題意識を胸に秘めて世の中を見つめるジャーナリスト」のつもりだったが、
最近では「問題意識」なんぞはしょせん浅薄なものだと思えるようになった。
いまの時代を生きている人間像を…その喜怒哀楽を…記録できればそれでいいのではないか。

ただし、こんなことを言っていると、番組の(世間的な)「評価」は高くはならない。
(TV批評の世界ではメッセージ性のくっきりしたものが高く評価される傾向にあるのは間違いない。)
もとより視聴率で勝負できる番組を作っているわけではないので、
数字も稼げないし、評価もイマイチとあっては…
制作者としてだんだん隘路、というか袋小路に入りつつあることを自分で感じている。
だが、もう五十を過ぎて、意に染まぬ妥協をすることもないではないか、
自分がいいと信じることをやればそれでいいのではないかと…覚悟というか開き直りの心境である。

今回の番組は、前半は多少は説明的にせざるを得なかった。
「わからなくたっていいじゃないか」と開き直ってみたりするものの、やっぱり、そうはいかない。
つまり、作り手としてやむを得ざる妥協、である。
だから、自分で見て、そういうところはあまり面白くない。
しかし、夕張に暮らすお年寄りの「生」や「死」を見つめた後半は文句なく面白い、と自分では思う。
要するに、最低限のルールは踏まえながらも、やりたいことをやれたということだ。
1時間49分という広大なキャンバスに思いのままに絵を描けたのである。
ぼくはぼくの30年のキャリアのなかで「最高傑作」を作ることができたと思っている。
世の中の人は誰も認めてはくれないかもしれないが…(笑)。
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2009年の目標

渋谷の、会社の近くにベトナム料理店がある。
ちょうどパルコの裏側で、狭い階段を下りた地下にある小さな店だ。
「ホアン グン」という。
以前はエジプト料理店だったのだが、いつのまにかベトナム料理店に変わっていた。
ぼくはフォー(米から作ったベトナムの麺)が好きなので、開店当初から通っている。
といっても昼食ばかりで、夜に行ったことは一度もないのだが…。

働いている人(たぶん全員ベトナム人)はどんどん変わるし、
店の名前も変わったので、あるいは経営者が替わったのかもしれない。
しかし、昼のメニュー(680円のランチセット)は、開業以来変わっていないはずだ。
数年前はいつも閑古鳥が鳴いていて、
これで営業が成り立つのか心配になるような店だったが、
最近はランチが680円という価格設定もあってか、いつ行っても満席にちかい盛況だ。
御同慶の至りである。

さて、この店のランチ・メニューは11種類あって、いずれも680円。
しかし、気がついてみれば、フォーが入った4種類のランチしか食べたことがない。
そこで、今年は、11種類のランチ・メニューすべてを制覇しようという壮大ならざる目標を立てた。
今日はさっそく「揚げ春巻きのサラダビーフン」なるものを食べたが、
目を剥くほど旨いとは言わないまでも、悪くはなかった。
これで5種類のランチを“制覇”したことになるので、残るはあと6種類。
人生大志を抱けば大変だろうが、この程度の「寸志」であれば気楽なものだ(笑)。
春までには悠々目標をクリアできるのではないか…。
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