ホーム > きょうの社説


2009年2月1日

◎県の子育て エンゼル券定着に広報が大事

 石川発の子育て施策となる「子育て応援エンゼルネット事業」が石川県の新年度予算に 盛り込まれ、四月から県内三カ所でモデル事業がスタートする。核家族化や都市化が急速に進むなか、子育て世帯が孤立しないよう社会全体で育児を支え合う仕組みがぜひとも必要だ。

 この事業の成否は、育児を支援するボランティアに対価として支払う疑似貨幣「エンゼ ル券」が一種の地域通貨として定着するかどうかにかかっている。特に広報に知恵を絞り、石川県が全国に先駆けて導入したプレミアム・パスポートに続く地方発の事業として成功させたい。

 エンゼルネット事業は、子育て世帯やボランティアの潜在的ニーズを掘り起こし、社会 全体で育児を支える仕組みの構築を目指している。新事業は、子育て世帯や放課後児童クラブ、保育所が子どもの送迎や一時保育、絵本の読み聞かせなど、希望する支援を県に登録してもらう。その一方で、ボランティアから提供可能なサービスの届け出を受け、いしかわ子育て支援財団が両者を仲介する。ボランティアには対価としてエンゼル券が支払われ、さまざまな日用品と交換できるようにしたところが注目点である。

 ボランティアとはいえ、報酬を伴う以上、一定の責任を伴う。依頼する側も仕事を頼み やすいという利点もある。ただし、疑似貨幣は十分価値のあるものでないとソッポを向かれてしまいかねない。エンゼル券の使い勝手の良しあしが成否を占うポイントになるだろう。

 子育て世帯が地域社会から孤立化すると、児童虐待や育児放棄につながることがある。 エンゼルネット事業は「密室育児」を避けるためにも有効だ。エンゼル券が一種の地域通貨として活発に取り引きされるようになれば、子どもを産みやすく、育てやすい地域づくりに大いに役立つだろう。

 二〇〇七年の石川県の合計特殊出生率は一・四〇で、前年の一・三六から上昇したが、 長期的な少子化傾向に歯止めが掛かったわけではない。安心して出産・子育てができる社会環境の整備へ一層の努力が必要だ。

◎再生可能エネルギー 成長の新たな原動力だ

 米英の金融政策の失敗で、世界経済が戦後最悪の大混乱に陥ったといわれるが、太陽光 発電や風力発電など地球環境に優しい再生可能エネルギー(新エネルギー)を利用する技術の開発や普及が経済を引っ張る新しい「成長のエンジン」として期待されるようになったのだから悪いことばかりであるまい。

 新エネルギーへの転換をひっくるめて「新産業」とも呼びたい。が、その経済発展への 貢献力はまだ小さい。大きく育つまでを端境期とすれば、端境期が苦しいのは歴史の証明するところでもある。

 オバマ米大統領の「グリーン・ニューディール」にしても、要するに新産業を興隆させ 、成長のエンジンにするというものだ。「ただ金を落とすだけでなく、役立つことへの投資だ」として三百万人から四百万人の雇用創出を目指す大型の景気対策の柱に再生可能エネルギーへの大転換など新産業の育成を据えたのは同大統領の先見性だ。

 しかも景気後退の中で、あえて排ガス規制の強化を打ち出し、景気対策と地球温暖化対 策の二兎を追う不退転の決意を見せている。

 日本の政府・与党や野党もグリーン・ニューディールの日本版とも言える政策立案に取 り組んでいるが、もともと日本は新エネルギー開発の技術先進国だったのである。ただ未来をひらく成長のエンジンにする積極性が乏しく、米国にお株を奪われたような格好になったのが情けない。

 ドイツは十年ほど前から新エネルギーへの転換に取り組んでおり、普及率では日本を超 えてしまった。それにはしっかりした仕掛けがあって、家庭が太陽光発電や風力発電に取り組んだ場合、余った電力を電力会社が市場価格よりも高く買い取ることを義務付けたのである。十年で元手が取れることにしたことが普及の力になったといわれる。

 新エネルギーを得る施設や設備は高くつくため、呼び水となる仕掛けの良しあしが成否 を分ける。日本にも助成制度はあるが、ドイツのような思い切った仕組みを編み出すことが必要である。


ホームへ