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“緊急”より“恒久”的対策を
新年度がスタートした。しかし、気持ちは晴れない。我が国は、景気後退色が強まり、戦後初の「デフレ」認定をせざるを得ない状況にまで落ち込んでしまっている。
本年度の予算は成立したものの、これで経済が活性化するとは誰も思っていない。従来と変わらない予算配分、景気刺激効果の低下した従来型の公共事業、機密費のずさんな実態など、予算案審議の過程で多くの問題が明らかになったにもかかわらず、政府・与党は、予算修正に全く応じようとはしなかった。
それどころか、与党では、表で「景気回復のために一日も早い予算成立を」と言っておきながら、予算案の審議の真っ最中に、十分な論議を重ねた形跡もない「緊急経済対策」を唐突に発表した。それを受けて政府でも策定作業が進んでいる。政府・与党は、スタートしたばかりの新年度予算と政策を自ら欠陥品であると認めているのである。
その粗雑な「緊急経済対策」の柱の一つに「不良債権処理」がある。倒産をできる限り避けて「企業の再生」をしつつ、銀行の「債権放棄」で不良債権を処理し、不良債権と過剰債務を一体的に解決するという。しかし、「企業の再生」は、ゼネコンや不動産業などを中心に、莫大な債務を抱え立ち行かなくなっている問題企業までも延命させ、再び、問題の先送りに終わる危険性をはらんでいる。
バブル崩壊後の1993年3月末以降、8年間で68兆円もの不良債権が処理されたといわれているが、毎年、相当規模の不良債権が新規発生しており、なかなか最終処理に至らない。穴のあいたボートのようなもので、かき出してもかき出しても、水がはいってくる。このような状況になったのは、問題の先送りをしてきた政府・与党の責任である。
今取るべき施策は、不退転の決意で不良債権の最終処理を断行することだ。
つまり、再建見込みのない企業は思い切って法的整理等により整理するとともに、金融機関に対しては、厳格な資産査定と引き当てをさせ、真の損失を明らかにすることだ。
同時に、倒産やリストラの痛みとして生じる失業に対しては万全のセーフティーネットを用意する。例えば、現行の雇用保険による支給とは別に、雇用保険の失業手当給付期間が過ぎても職が見つからない人への手当支給や教育訓練費助成を、2年程度の期限付きで国費で行うなどの施策が考えられる。その対象には、廃業を余儀なくされた自営業者や中小企業経営者も加えてもいい。
このように両面からの対策を打つことで、一時的には厳しい状況となっても、出口は確実に見えてくる。不安が多少なりとも解消されれば個人消費の拡大による実体経済の浮揚効果も期待できる。これこそが日本経済をよみがえらせる一番の早道だと思う。
今、政治に求められているのは、明確な戦略を掲げ、必要な政策を機敏に遂行する決断力と実行力だ。2年くらいは辛抱して経済構造改革に本気で取り組むことを国民に説明し、納得させることが重要だ。
国家や国民生活をないがしろにして、党利党略、派利派略の後継総裁選びなどをしている余裕はない。
日刊自動車新聞「直さんの永田町Wクリック」
(4月7日掲載)
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