昨年10~12月期の米経済の成長率が27年ぶりの落ち込みとなった。悪化の底はまだ見えない。オバマ政権が直面する危機の深さが改めて浮き彫りになった。
米商務省の速報値によると、同期の米国内総生産(GDP)は年率換算で前期比3・8%の減少だった。大方の予想より悪化幅は小さかったものの、これは商品在庫の積み上がりによってかさ上げされた結果のようだ。在庫増の要因を除くと、GDPの下げ幅は5%を超えるとされる。
売れ残りによる在庫の積み上がりは、減産による調整が待っていることを示している。企業による人員削減も今年に入り加速しており、現在約7%の失業率は年後半に向けさらに悪化が予想されている。この先、景気は改善ではなく一段と冷え込む可能性が高いことをうかがわせている。
米国市場への一極集中はとうに終わったとはいえ、世界最大の経済が大幅なマイナス成長を続けていては、日本も含め多くの国に悪影響が及ぶ。オバマ政権と新議会には、効果的な景気対策を迅速に導入してもらいたい。
注目の大型景気対策法案は与党民主党が多数を占める下院で可決され、審議は上院に移った。下院の採決では、オバマ大統領自ら議会に赴き協力を求めたが、共和党議員全員が反対に回り、大統領の目指す超党派の結束が容易ではないことを印象付けた。
与野党の勢力差が狭まる上院では難航も予想される。財政支出をより重視する民主党に対し、共和党は恒久減税を通じた景気活性化を主張する傾向にある。所属政党や選挙区などによって優先項目が異なるのは当然かもしれないが、狭い利害や教条にとらわれない建設的議論を期待したい。
2月に景気対策法が成立したとしても、公共事業費など雇用創出につながる資金が実際に動き出すのは早くて今年後半、多くは来年以降と見られている。それでも議会と政権が一致して懸案を処理していくことができれば、先行きへの安心や期待につながり、企業経営者や一般市民だけでなく株式市場にも心理的にプラス効果をもたらすはずだ。
もちろん、大型景気対策には懸念すべき点もある。米国製品の購入を義務付ける「バイ・アメリカン」条項はその一つだ。こうした「自国さえよければ」的な景気対策は、他国の追随を促し、保護主義のまん延につながる危険性がある。議会には、排他的政策に走ることのないよう、注意を求めたい。
オバマ大統領は景気刺激策が「椅子の脚の1本に過ぎない」と述べ、金融システムの強化や住宅市場の支援にも同時に取り組む意向を強調している。ここでも党利党略を超えた迅速な行動が求められる。
政治的利益のための駆け引きに費やす時間はない。
毎日新聞 2009年2月1日 東京朝刊